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幸福度世界一の国デンマークの感想(9)

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幸福度世界一の国デンマークの感想(9)
前回風力発電のお話をしたのでそのついでに、風力発電、もしくは日本では誤って報道されたり誤解されている自然エネルギーに関する事実を紹介しておきたいと思います。
まずは、風力発電に関する誤解は以前まとめたのでそちらを見て下さい
http://matsuosekkei.blog85.fc2.com/blog-entry-2699.html
ここにも書きましたがこの中でも重要なところを再度説明します。
・風力発電(太陽光も同じ)の台数が増え、地域が分散するほど負荷変動が平準化される。
太陽光発電との相殺効果が非常に高いのも特徴です。一般論としてですが、太陽がよく照る日は風が少ない。逆もまたしかりということです。昼夜、夏冬にしても同様のことがいえます。日本では風力7:太陽光3くらいが費用対効果の点でベストバランスではないかと言われていますが、現状では圧倒的に太陽光だけが突出して普及してしまいました。

・風況予測との連携が進んでいる。
スペインでは全国28箇所に分散して配置された地域制御センターを通じて、スペイン全土の10MW以上のすべての風力発電所と通信回線で結ばれており、各風力発電所の出力がリアルタイムで把握できる。各風力発電所の風光、風速、温度などの情報に基づき、風力発電の出力予測を行う。それに応じて他の電源の5時間先の調整力を計算する。
原発事故前、日本ではまずは原発が「ベースロード電源」と言って、一番最初に利用される発電源でした。次が火力で一番安い石炭、そして次に安いガス、最後一番使うときには石油の登場という順が絶対でした。そこにほんの数%の自然エネルギーを載せようとするから「自然エネルギーは不安定」というレッテルが貼られ、そこから自動的に「蓄電池が必要」となっていました。しかし、ヨーロッパの国々では自然エネルギーこそがベースロード電源のように扱われるようになっています。
よく考えてみてください。確かに自然エネルギーはまだ、イニシャルコストは火力より少々高いです。(陸上風力に関しては石油に迫りつつありますが)とはいえ、一旦作ってしまえば、CO2は出さないし無料だし、これを使わないという論理はありえないわけです。だから、これを第一優先にして使います。そして、量と地域が増えたことによる平準化と最先端のネットワークと天候予測技術を駆使することで調整しやすい火力発電にて需給を調整するというしくみです。
このやりかたであれば、自然エネルギーの導入率が20%以下では蓄電池など経済的にありえないわけです。日本は真に合理的かどうかよりも蓄電池メーカーの売上や宣伝広告の方が優先される傾向が強いと言わざるを得ません。蓄電池が必要になってくるのは50%を超えてからというのがヨーロッパ諸国の考えです。デンマークの場合あと10年ほどで達成しそうな勢いです。スイスにおいても、自然エネルギーからの買い取り価格が市場の電気価格よりも低くなってきたため、自家消費したほうが得になっています。
その結果、自動的に電気自動車が売れるようになっています。これはさらに続く好循環につながるのですが、自然エネルギーの「不安定さ」を補完することにもなり、各家庭の災害時の非常用エネルギーにもなります。
このように、極めて合理的で美しい好循環の元に政策、企業活動が動いているといえます。先日もデンマークでいろんな方のプレゼンを聞きましたがどこに行っても「2050年にCO2排出量をゼロにしなければならない。そのためには・・・」というプレゼンからスタートする感じでした。これは近隣諸国でも似たような傾向にありますが、日本でこのような話を聞くことはめったにありません。(特に政府関係者からは・・・)
あともうひとつ・・・、ドイツで必ずやり玉に挙げられるのが「ヨーロッパは地続きだし、フランスの原発から電気買ってるから日本とは事情が違う」という論説です。かなりの方がこの説を信じているようですが、これもデータを関係者の都合の良いように取っただけに過ぎません。これに関しては下記のサイトに詳細に説明されています。
http://jref.or.jp/column_g/column_20150907.php
要するに商取引ベースではフランスはドイツから電力輸入量の方が多い反面、実際の電気の流れはフランスからドイツに流れる量の方が多くなっています。その理由は単純にドイツ経由でイタリアやスペインに流れている量がカウントされているからに過ぎません。その部分は説明されている大手メディアは未だないのではないかと思います。
いかがでしょう。ヨーロッパ諸国、ひいてはアメリカや中国までが自然エネルギーを真剣に増やそうとしている理由が多少はご理解いただけたでしょうか・・・

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