1. HOME
  2. 高性能住宅ガイドライン
  3. 太陽に素直な設計 冬の日射取得と夏の日射遮蔽

GUIDE LINE

高性能住宅ガイドライン

太陽に素直な設計 冬の日射取得と夏の日射遮蔽

ここでηAc値やηAh値のような直感的に使えない設計基準ではない、誰もが分かりやすい窓の設計基準をまとめておきます。

  • 南窓は耐力壁が許す限り極力大きくする。その代わり窓の高さ10に対して出幅3の庇をつける。もしくは外付日射遮蔽措置を必ずセットにする。この比率が年間トータルの冷暖房費が最も安くなる。これよりも長くなれば夏向きであり、これよりも短くなれば冬向きとなる。
  • 北の方位が20度以上振っている場合、南面でも庇による日射遮蔽は実質的に非常に難しい。そのような場合は南と言えど外付けの日射遮蔽措置が必要
  • 東西北面の窓はできるかぎり小さくする。しかしながら、通風を無視していると施主様に受け取られるリスクまで取る必要はない。各部屋二方向通風は確保すべきである。その場合、南面以外の各部屋の窓は0.5㎡以内のものを一箇所というのを目安にする(筆者はW400,H1170という縦すべり窓1箇所というのを標準にしている。窓が小さい代わりに開口率が100%なので通風を損なっていると言われることもない)
  • ・天窓は夏の日射遮蔽が困難なので最終手段と考える。どうしても必要な場合は北面の中央部に一箇所と考える
  • 南面は断熱Low-E、東西北面は遮熱Low-Eを基本とする。北面を遮熱Low-Eとするのは夏の3時以降7時くらいまで西日が当たり続けるからである。
  • ・東西北面に大きな窓をつけざるを得ない場合もある。そういう場合は外付けの日射遮蔽措置を必ずセットにしておく
  • ・上記のように東西面に大きな窓をつけて外付けの日射遮蔽措置も付ける場合に関してはガラスを断熱Low-Eにするほうが、冬も最適化することができる。
  • ・気密性の観点から南面の大窓以外で「引き戸系」の窓を使う必要性はない。できるだけ「開き系」の窓を使うべき
  • ・上記の観点から言うとガラスルーバー窓は最も使ってはいけない窓である。もうひとつ盲点になりやすいのが通風勝手口ドアである。人気商品であるが、気密測定をすると極めて気密性が弱い。

 

まずは北以外の隣家の等時間日影図を書くことがスタート

数百名以上の実務者に設計セミナーをしていて気がついたことがあります。それは「与えられた敷地条件においてどこが一番陽当りが良い場所だと思いますか?」という一見単純に見える質問に正しく答えられる設計者は1割もいないという現実です。次に等時間日影図を見せても次はその読み方が分からないため、分からないという方も3割くらいいらっしゃいます。

太陽に素直な設計

例えばですが「上記の2つの場合、どちらの方が陽当りが良いでしょう?」という質問を1000名以上にしてきました。その結果はほぼ全ての会場で間違った答えの方に多くの手があがりました。要するに、隣家が当該敷地に及ぼす冬の日射量は極めて重要なエネルギー源であるにも関わらず、プロの建築士といえど素人同様正しく理解出来ていない方が大半であるということです。

「窓はこたつである」という言葉を数年前に講演で発した後、あちこちでこのフレーズが使われるようになりました。これは「一間幅で高さ2mの掃き出し窓一箇所につき晴れた日なら600Wの日射熱が入ってくる」ことを印象づけるために作った言葉でした。これは「無料で取れるエネルギー」なのでできるだけたくさん取るに越したことはありません。

しかし、これを実現するためには隣家の影の影響が最も少なくなる位置への配置、最も陽当りが良いところに、滞在時間が長い部屋を配置し、大きな窓を配置する必要があります。それを実現するための道具が等時間日影図です。

しかしこのような日影図ではその時間毎の影の位置しかわからないためトータルの日射習得量を判断することができません。そこで等時間日影図の登場となります。等時間日影図であれば、1日の中で影になる時間が2時間、3時間、4時間・・・のように1日に当たる日照時間の合計値をひと目で理解することができます。

先程の問題の答えを考えるためには下記のように等時間日影図に建物を配置してみればすぐに答えが分かります。東側に配置した方が陽当りは良くなります。なぜこれを間違う方が多いかというと、単純に等時間日影図を書いたことがないからです。あったとしても数回程度しかやったことがないから感覚が身についていないことがあげられます。

もう一つ言うと今回の課題が東側の隣家が非常に南北に細長く、南側隣家が西に寄っていることよりも東側隣家の方を過大評価する方が多かったことも要因です。

等時間日影図

等時間日影図

等時間日影図から建物、車庫、庭の配置を考える方法

等時間日影図が出来たら次は以下のような検討をはじめます。

  • ・最も陽当りが良いところに建物全体を配置できるように
  • ・南面の幅をできるだけ広く取り、南側隣家との離隔距離を極力大きく取れるように
  • ・リビングを最も陽当りが良い場所に配置できるように
  • ・リビングの前(できれば南側)に庭が確保できるように
  • ・リビングから視界の邪魔になりにくく、玄関へのアクセスがいい位置に車庫が配置できるように
  • ・できるだけ表面の凹凸が少ない形状となるように(南側の凹凸は自分の建物に影を作ります。北側の凹凸は元から寒い北側内部をさらに冷やすことになり、室内南北温度差が大きくなる)

以上の6項目を全て完璧に満たすことは難しい。しかし、建物内の間取りに入る前の時点で上記6項目をバランス良く満たせるような相互配置関係を最初の段階で考えることが非常に重要です。

南面は自分の建物が影にならないように

前項でも少しだけ説明しましたが、内部の間取りから考え始めると外形が必要以上にボコボコになってしまうことが多くなります。これは熱的にも表面積が増えて不利になるだけでなく、構造的にも弱くなる傾向にある。

さらにはデザインの観点からもシンプルな形状からは程遠くなり、屋根形状が複雑になることで雨仕舞まで悪くなる方向に働く。良いことなど一つもないと言っても過言ではありません。そんな中で国の基準等では決して測れないけれど、実際には大きな差がつく項目として自分の建物が及ぼす影の影響です。

日射取得の比較

上の2つの建物(両方共上部を北、赤が南窓とする)はUA値、C値、南窓の面積も全く同じです。しかし、実際に暖房負荷計算をやると片方はもう片方より7%も暖房負荷が小さくなります。この問題は正答者が多く、右の建物の方が暖房負荷が小さくなります。左側の建物は南側凸部が午前中北西部の南窓に影をかけてしまうからです。私がこの内容を話し出すまでこういったことは誰も言及することがありませんでした。これを知っているだけでもプランの作り方は大きく変わります。

では右側の住宅に欠点はないのでしょうか?それを検討するために2つの住宅をそれぞれ3つのエリアに分けて考えてみます。「どちらの住宅の方が温度ムラが少ないですか?」という質問に対し、殆どの方が答えられません。そこで「左側の建物で温度差が一番大きいのはどこですか?」という質問に変えると大半の方が「2と3」ですと答えられます。同様に右側の建物で温度差が一番大きいのはどこですか?」と聞くと「4と6」と答えられます。

ここで「では2と3の温度差と、4と6の温度差ではどちらが大きいですか?」と聞くと「4と6の温度差です」と正答を言われる方が多くなります。外壁に凹凸が多いとどうしても外壁からの距離が近い部分が多くなります。ビルの世界では外壁に近いエリアを居住環境が良くないゾーンという意味でペリメーターゾーンといいますが、そういうエリアが増えてしまう。4は「北側かつ3面も近くで外気に面しているのに南窓がない。」だから非常に寒くなります。逆に6は「南側かつ2面しか外気に面しておらず、かつ南側に窓があるから極めて暖かい」だから4と6の温度差が最も大きくなるという理屈です。

日射取得の比較

これも知っているといないでは出来上がってくるプランが大きく異なります。平面形状だけではなく、1階と2階の乗り具合としても同様です。総2階に近い方が、特に屋根の影響が少なくなるので冬の寒さはもちろんですが、夏の暑さ感覚の方が顕著に違いを感じられます。

あと、さまざまな工務店の図面を見て気づくのが二階南バルコニーの両サイドにある袖壁の存在と2Pといった極めて奥行きの深い屋根がついたバルコニーです。こういった設計ではせっかくの南窓もかなり日射が少なくなってしまい、効果が弱くなってしまうことに注意が必要です。

北面の凹凸は室内の南北温度差をより大きくする

ビル空調の世界では外皮から3~5mの範囲は「外部からの影響を受けやすい=暑くて寒い」範囲ということで「ペリメーターゾーン」という名称までつけられています。外皮の断熱性能があがり、夏の日射遮蔽があがるほどペリメーターゾーンの悪影響は感じにくくなります。しかし、形状としてペリメーターゾーンが多くなってしまうプランが多いということにほとんどの住宅設計者は気づいていません。例えば下記の2つの平面図を比べてみます。

日射取得の比較図①

日射取得の比較図②

仮に一つの正方形を3mとするとどちらも面積は108㎡となります。ここで青色にて示しているところが外周部から3mのペリメーターゾーンとなります。逆に中央部の赤いところは外部の影響を受けにくいインテリアゾーンになります。

こうやって見た場合、図1には一応中央部に18㎡のインテリアゾーンがあります。しかし、図2には一応赤く塗りはしましたが、実際には線であり、インテリアゾーンは存在しません。Q値でみた場合、図2は数字でも悪化することがすぐに分かります。しかし、UA値で見ると何ら違いが見えてこないので要注意です。

次に図2には凸角が2箇所あります。西への出っ張り箇所と、北への出っ張り箇所です。両方共3方を外皮に囲われているので非常に条件が悪い。なかでも北側は自分の建物の影になり、かつ外気温もより低い側になります。図2の形状は南面にこそ影は作りませんが、南東の角が比較的暖かい部屋になるだけに北側の出っ張り箇所との温度差はそれなりに大きなものとなります。

ここでいつもよく講演時に計算してもらっている例を見てみたい。

日射取得の比較

どれも同じ延床面積「8」の建物であるが、表面積はこんなにも違う。3の建物は1の建物の約1.5倍の表面積です。これは単純に熱損失が1.5倍もあります。さらに断熱材と外壁材の費用も1.5倍かかります。この形状の坪単価が高くなることはプロなら誰でも知っていますが、冷暖房費まで高くなることを理解してこの形状を実行している実務者はほとんどいません。

仮に冷暖房費を同程度にしようとすると、UA値を1.5倍にしてようやくイーブンであることを肝に銘じておかなければなりません。それどころか正確に言うと自分の建物が影になる時間が長いことから1.5倍にしてもイーブンにすらならないのです。

では1のような形状が最も熱的に素晴らしいのか?確かに熱損失だけを考えればそのとおりです。しかし、実際の暖かさは熱損失と、太陽からの日射取得のバランスで決まります。1のような形状だと南面にとれる窓面積比率がそれほど大きくは取りにくい。

日射取得の比較

そう考えると上手の3つのような住宅がある場合、下の「若干東西に細長く、耐力壁が許す限り南窓が多い」という住宅がもっとも熱収支のバランスが良いということが言えます。

もちろん断熱性能、気密性能を上げればあげるほど、こういった形状の差も現れにくくなります。また、上手な空調計画にて温度差を解消するという方法もあります。しかしながら、可能であるなら最初のプランニングの時点で「素性の良い」形状設計をしておくことが最も素直な考え方であり、安上がりでもあり、効果も大きく、失敗もほとんどない方法になります。

GUIDE LINE

高性能住宅ガイドライン