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「家全体を暖かくする」

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5月16日 •
10年くらい前までは「家全体を暖かくする」なんていうと
・もったいない
・たるんでいる。体が弱くなるだろう
みたいな意見の方が明らかに強くありました。
それをぶち壊してくださったのが岩前先生による2万人調査でした。あれは革命であったと言っても過言ではないと思います。
ところがこれとほぼ同様の状態がいまだ根強く残っているのが
「夏家全体を涼しくするなんてもったいないし、体に悪い」
みたいな風潮です。
これは不勉強な実務者、お施主様はもちろんのこと、高性能住宅を自認する団体でもよく見られる現象です。
高性能住宅を自認する諸団体においても「家全体を暖かくする」ということを認めるようになるまでには10年くらいかかってたどりついてきた経緯があります。
よって家全体を涼しくするという行為が共通認識になるには今から5年から10年かかるだろうというのが個人的な予測です。
全館冷房のほうが、光熱費とエネルギーの観点では全館暖房よりはるかに簡単です。(高断熱高気密で日射遮蔽が完璧に出来ている場合)※ただし、技術的には全館暖房よりはるかに難しいです!!
・そもそも全館冷房で使われる冷房費は暖房費の約1/3
・太陽光発電を設置している住宅においては暑い時間ほど相殺効果が大きい
・暖房に比べてエアコンの実効COP(効率)が圧倒的に大きい。暖房だと最高効率でも5以下になることが多いですが、冷房だと9を超える瞬間も存在する
・24時間つけっぱなしの方が安くなる(8月1ヶ月24時間つけっぱなしで冷房費4000円程度)
・つけっぱなしのほうがエアコン内部のカビも生えにくい
・たった1台のエアコンでほぼ全体を冷房することができる。よって春や秋のようになにも感じない空間となる。気流感や冷房病などとは無縁
ということなんですが、これもこれまでシミュレーションが難しかった分野です。
ホームズ君が出てからこういうことがシミュレーションできるようになりました。ダイキンの本社でもできないと言われていたので画期的な変化でした。
「快適」という言葉を岩前先生は非常に嫌われますが、これは快適の感覚が人によって異なることから「俺は快適やで!!」と言われたらどうしようもないということから来ています。
健康という観点で見た場合、カビ、ダニを発生させないことは非常に重要だと思います。
しかしながら6月10日に梅雨がはじまってから9月のどこかで残暑が終わるまでの間は日本の住宅は除湿しない限り、カビ・ダニにとって極めて快適な湿度になってしまいます。
当たり前ですが、除湿するためには窓を閉める必要があります。
冬の健康については、共通認識が出来上がりつつある今日このごろですが、夏の健康はなぜかまだまだ共通認識には至っていません。
これは「科学的に正しいこと」よりも「これまで行われてきた習慣」のほうが力が強い時期にあるだけのことです。
ここで注意すべきポイントがあります。
除湿することによって家全体はカビ、ダニとも減りますが、エアコン内部はカビが生えやすくなります。
ここをどう対処するかが一番トップを走る方々の次の課題であると思います。
もうひとつは、除湿COP(効率)という考え方。
いくら梅雨時期のドライ運転(再熱除湿)がエネルギーをたくさん使うからといっても家電量販店のいかなる除湿専用機よりも除湿効率は2倍以上高いという事実です。
個人的には「真夏に通風」なんて言う人が一人もいなくなってはじめてまともな時代が来たと言えるように思っています。
ちょっと前に某省エネ団体で講師を依頼された際も風を重視しながら太陽を無視した設計をする方があまりにも多く、かなりきつめのコメントをたくさん申し上げた次第です。
未だにプロも素人も風重視、太陽軽視の人が多いですが、風は重視しても効果が非常に弱くそもそも読みにくい。
太陽は効果が非常に強く、計算どおりになるということを肝に銘じておく必要があります。
高断熱高気密を謳う方でもこの領域の話をどちら側でするかによってレベル差が分かる判断基準といってもいいと思います。
もちろんまさに今を含む4月、5月10月の通風は最高に気持いいということはまったく否定するものではなく、推奨すべきものだということも付け加えておきます。

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