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ジェレミー・リフキン著 限界費用ゼロ社会 THE ZERO

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ジェレミー・リフキン著 限界費用ゼロ社会 THE ZERO
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要約は下記のサイトにまとめられていますが、ほんの面白さが全然伝わらない要約になっているので、要約だけ読んで本を読まなくなってしまう恐れがある方は読まないことをオススメします・・・
http://toyokeizai.net/articles/-/89717
著者はドイツのメルケル首相他世界各国の首相、高官のアドバイザーを務めるコンサルティング会社の代表です。また、いままでに世界的ベストセラーを数冊出している人気作家でもあります。
表紙の裏面にこんな解説がまとめられています。
「いま、経済パラダイムの大転換が進行しつつある。その原動力になっているのがIoT(モノのインターネット)だ。IoTはコミュニケーション、エネルギー、輸送の〈インテリジェント・インフラ〉を形成し、効率性や生産性を極限まで高める。それによりモノやサービスを1つ追加で生み出すコスト(限界費用)は限りなくゼロに近づき、将来モノやサービスは無料になり、企業の利益は消失して、資本主義は衰退を免れないという。
代わりに台頭してくるのが、共有型(シェアリング・)経済(エコノミー)だ。人々が協働でモノやサービスを生産し、共有し、管理する新しい社会が21世紀に実現する。世界的な文明評論家が、3Dプリンターや大規模オンライン講座MOOCなどの事例をもとにこの大変革のメカニズムを説き、確かな未来展望を描く。」
と、これだけ見るとよく見る内容かと思うのですが、そのひとつひとつの洞察がものすごく深いのが特徴です。「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫著)みたいな本が日本ではベストセラーになっていますが、結局彼らの本を読んでいると、資本主義が限界には近づいているがその次にどのような時代が来るかは分からない・・・というような論調で書かれています。しかし、今日紹介するこの本。及び以前から何度も紹介しているエイモリー・ロビンス著「新しい火の創造」、そして昨年のベスト1だった齋藤元章著「エクサスケールの衝撃」はそれぞれ全く別の方が書かれた本ですが、共通しているところがたくさんあります。
ものすごく、乱暴ですが、この3冊の名著に共通するところをまとめてみます。
・太陽光、風力はこれからもますます単価が下がり普及することで、エネルギーが貧しい人にも行き渡るようになっていく。特に今現在電気が使えない2割ほどの人たちにとっては、電気が使えるようになるということが、非常に重要である。なぜなら、電気が使えないと特に女性は、生きていくために起きている時間の全てを家事に取られてしまい、教育の機会すら得ることができない。またそういう地域では医療も普及しておらず、子どもは一定確率で確実に死んでしまう貴重な労力であるから保険装置として多産が避けられない。 電気が普及した地域は自ずと出世入りも落ち着き、教育の機会も増えていくことが世界各地の歴史が証明している。
・ネット上で超一流大学教授による授業と単位が無償化していることで、途上国でもやる気と能力があれば上がっていける状況ができつつある。
・極限まで自然エネルギーが普及し、ほとんどのものにマイクロチップが内蔵され、それがネットワーク化されるようになると、エネルギーの無駄が極限まで減る。そして人工知能、及び、今で言う京のようなスーパーコンピューターが一気に普及することによって科学技術の進歩に加速度がつく。今現在、京レベルのコンピューターは日本だと1台しかなく各企業、大学が時間分配してちょっとずつ使っている状態である。しかしながら、本当は各企業とも京を何週間も使ってこそできるようなシミュレーションをガンガン実施することで、画期的な発見を素早く行うことが出来ることがわかっている。しかし、現状ではそれができない。もし仮に導入できたとしても、今の京の消費電力は住宅3万世帯分の電力を消費するので、小さな企業には電気代の観点からも利用は難しいところがある。消費電力を抑えながら、今よりもずっと早いスパコンの開発が今後の鍵を握っているが、その分野は今日本の齋藤元章さんの会社が世界で1位から3位を独占している。
・人工知能が普及することによって従来の職業が奪われていく可能性は高い。しかしなが
ら、教育ではMITの授業が無償でネットで受けられ単位ももらえるようになってきている。グーグルのような超高性能検索も無料で利用できるようになった。これらは限界費用がゼロになったからこそ実現できる技術であるが、このように昔だったら非常に高額だったか、いくらお金を積んでも出来なかったことが無料、もしくは超低コストで実現できるようになってきている。
・例えばアメリカの運輸業界だと今現在トラックの積載率は平均6割でしかない。グローバルな輸送となると、推定積載率は1割に満たない。また、各社情報を共有していないことから倉庫に関しても恐ろしく大量のムダが生じている。こういった問題はIOT化によって激的に解消される。また、3Dプリンタが現状の家庭用インクジェットプリンタレベルの価格、性能まで普及すれば、ほとんどのものを配達するのではなく自宅もしくは近所で個別製作してもらうこともできるようになる。
・これらのことを総合的に考えると、どこかの時点で、人類史上初めて生活のために働かなくても生きていけるかもしれない時代が近づいているという可能性も考えられる。現にそれを実現している人が出始めている。そういったかたは、社会貢献、趣味等に没頭した人生をおくることができる。
・若い世代ほど個人所有からシェアの時代へ移行しようとしている。カーシェアリング、AirBnB、UBER、その他シェアではなくてもEBAYやヤフオクの発展によっていらないものが物置やゴミ置き場に行くのではなく、最後の最後まで渡り歩いて誰かの役に立ち続ける世の中になりつつある。そうすると余分なものを生産する必要が少なくなってくる。
・現時点で若い世代ほど物質的志向が弱いだけでなく、環境保全意識も高い。
・従来型の資本主義企業は衰退が予想され、代わりに協同組合形式が伸びていくと思われ
る。現時点でヨーロッパでは預金総額、国内貸付総額の約3割が協同組合のものであり、その比率はどんどん増えている。
また、先日日本で講演されたエイモリー・ロビンスさんのことも何度か紹介されています。
その中で次のように延べられています。
日本は先進工業国のうちで再生可能エネルギー源(太陽光、風、地熱)を最も豊富に有している。ロッキーマウンテン研究所の共同創立者でチーフ・サイエンティストのエイモリー・B・ロビンスが指摘しているように、日本はドイツの9倍の再生可能エネルギー資源を持っていながら、そうしたエネルギー源による発電量はドイツの9分の1しかない。たとえば、「日本はドイツと比べて、国土は5パーセント、人口は68パーセント、GDPは74パーセント多く、太陽光や風もはるかに豊富だが、2014年2月までに増やした太陽光発電量はドイツのおよそ5分の1にすぎず、風力の利用の増加はないに等しい」。
日本を引き留めているのは、やはり、一握りの垂直統合型の巨大な電力公益企業で、これらの企業は日本では途方もない影響力を振るっており、原子力発電を断念することを頑として望まない。福島の惨事のときに日本の首相の座にあった菅直人は、2015年8月、震災以来初めて川内原子力発電所が運転を再開したことを、「大きな誤り」と評した。菅はさらに、「原子力発電は20世紀のテクノロジーであり……長期的観点に立てば、エネルギー源としては劣っている」と述べた。
今回この本を読んで普段からドイツの情報をいろいろ得ているからこそ知っていることがそれなりにありました。しかし、普通に日本のメディアからしか情報収集していない方にとっては知らない事のほうが多いと思われます。ドイツの首相が10年以上前からこういう超がつくような賢人にアドバイスを請い、それにある程度沿いながら政権が運営されているというのは凄いことだと思います。
先進国の運営というのはこうあるべきものだという好例ではないかと思います。
最後に、個人的な意見です。ご存知のようにこれから否応なしに人工知能が激的に進化していきます。それと同時にあまり注目されていませんが、スーパーコンピューターも同様の進化を遂げることが確約されています。今から10年後には自動運転と実用レベルの言語間翻訳は実現出来ていると思います。これまでの科学の進化のスピードとはケタ違いの変化がこれから確実にやってきます。私の感覚からすると2次曲線の変曲点を超えたというところに乗ったばかりの状態が今だと思っています。数学、物理学、宇宙科学、医学、脳科学・・・特にこういった分野はまだまだ分からないことが多い分野です。しかしながら、急激にあらゆることがわかってきています。これほどエキサイティングな時代に生きていることは本当にラッキーだと最近つくづく思っています。

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