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費用対効果、投資回収年数の検討が必要

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先の全館冷房の方が安いことを書いたのには実は理由があります。
先日講演を聞きに来てくださった工務店の方が、とある省エネ勉強会に参加して次のように教育されたとのことでした。
「シミュレーションにおいて冷房なしの状況で35℃を超える状況を作らないことが最優先です」と・・・
一見正しいように見えます。わたしも大筋間違っていないように思います。
ただ、それを聞いてその方がとった行動に問題がありました。
その方が使うソフトにおいては「超高価な外付けブラインドをつけないとどうしても35℃を微妙に超えちゃうんですよね。だから殆どの窓につけました」と・・・
それをつけるかつけないかのシミュレーションによる差は0.5℃以内だったと思います。
その方は外付ブラインド代で100万円前後使われていました。これが、庇、アウターシェードであれば・・・もしくは必要十分な外付けブラインドであればこんな金額にはなりません。
その方に聞いてみました。「冷房負荷は計算しましたか?」
「仮に計算した場合、100万近い外付けブラインド代を改修できる年数は何年ですか?」と・・・
そもそも冷房負荷を計算もしていませんでしたし、私の質問の意味もよく理解できていませんでした。
おそらくですが、どう見積もってもこれを原価回収するには150年以上かかる感じでした。
そこそこ名のしれた省エネ勉強会でこのようなことが行われていることが非常に残念に思いました。
冬の高断熱化においてもそうなんですが、暖房負荷を計算しない・・・だからどこまでやっていいのかわからない人が大半です。
次に計算するとしても、数字をよくすることだけに固執してしまって、そこにかかる費用が何年で回収できるかという概念に欠ける人も結構います。投資の世界ではこのような考え方をIRRといいます。
ヨーロッパのように一つの建物が平気で100年以上使われる場合には投資回収年数をかなり長く見積もることができます。その結果、超高断熱が絶対的に有利となります。日本もこの方向で行くべきだと個人的には思いますが、今建てている戸建て住宅で今後100年以上使われることを本気で考えて設計されている住宅がいったいどれほどあるでしょうか?
仮に構造面、耐久性の観点で大丈夫だとしても人口減少社会において集落が崩壊してしまうエリアもたくさん出てくると思います。そういったことまでトータルで考えなければならない時代が来ていると感じています。
なお、西方先生のようにバルコニー(庇)代を浮かせ、さらに大型を少ない台数で設置する外付ブラインドの設計手法は上記の批判の対象では全くありません。これは費用対効果的にも理にかなっていると思うので勘違いされませぬよう・・・
2017年8月19日

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