こう思ったのはつい最近の住まい手から次の話を聞いたからです。
非常に複雑なんですが、私は友人の家の新築設計を数年前に、
そして、そのご両親の家のリフォームをつい先日終わらせました。
友人宅で私が担当したのはプランニングまででした。というのも建築条件付きの
土地を購入したんですが、偶然私の知り合いの工務店さんで兵庫県では
有数の高断熱住宅を作る会社だったので三者で意気投合してプランは私が
行いました。Q値は2くらいで南面からの日射取得もバッチリの家を作りましたが
床はその会社の標準ということで、表面はウレタン塗装のような複合フローリングを
使わざるを得ませんでした。ですが、当然ながら非常にその家は暖かく、友人も
大変満足していました。
そこから数年たってつい先日、ご両親の家も私が設計し、リフォームを完了しました。
かなり予算も限られていたので断熱に回せる費用も多くはありませんでした。計算は
していませんが、想像するにQ値は5くらいにはなったかと思っています。
南向きではありますが、南面の開口も友人宅よりはずっと小さいです。
ところが・・・。正月に、リフォーム後初めて実家に帰省した友人が言うのです。
「床が無垢やったらあんなに暖かいねんな。床だけとったらうちより暖かく感じる」
と・・・。これは私にとってはかなり衝撃の一言でした。
こんな比較をできる例はあまりないと思うのですが、数値的に見れば絶対に
比較にならない2つの家が、フローリングが無垢かどうかだけでそこまで印象が
変わるということに驚かされました。もちろん、無垢の床のほうが熱伝導率が
低いので暖かく感じることくらいは知っていました。ただ、今回の差を劇的に小さく
感じさせる程とは思いもしませんでした。
温度計で温度を測れば、同条件であればどちらのフローリングも当然温度は同じです。
ではなぜ暖かさが違って感じるのか?それは熱が移動するスピードに違いがあるからです。
もっと極端な例をあげると、熱伝導率が高いお湯であれば90℃のお湯には当然入れませんが。
熱伝導率が低い空気であれば90℃のサウナには入れるのも同じ理屈です。
実際にどのくらい熱伝導率が違うのか調べてみると、杉や檜なら熱伝導率は
0.12程度、ウレタン塗装はなかなかデータがないのですが、様々なデータから
推測すると0.2~0.3くらいと推測できます。ざっと2~3倍違うわけです。
体感温度の公式は(6面の平均温度+室温)/2で表されますが、この公式はもともと
土足生活がベースの西洋で考えられたものだそうです。福岡大学の須貝教授にも指摘
されましたが、日本の場合は床の温度だけはもっと過大評価しなければ実感と合わない
ようです。
やはりフローリングは無垢以外は考えられませんね。