今世界一の建築家「ヘルツォーク」が「日本の建築家は卑怯だ」という理由
今世界一の建築家「ヘルツォーク」が「日本の建築家は卑怯だ」という理由
今日は2組の新しいお客様との打ち合わせでした。一組目は以前建てられた
お客様の紹介のお客様。二組目は高校のOB会にて講演したときに聞いてくださっていた
先輩の方でした。どちらも非常にありがたいお話です。
さて、今日お話するのはもうかれこれ数カ月前のお話です。
以前にも紹介しましたが、ちょうどその頃日本一の設計事務所
「日建設計」さんで講演する機会がありました。
その際、講演後私のところに来た若い社員さんが
「今日松尾さんの話を聞いて今まで意味がわからなかったけど
腑に落ちたことがありました。以前「ヘルツォーク&ド・ムーロン」が来日した際
日本の有名建築を案内して回りました。そのとき、彼らは見るたびに
「日本の建築家は卑怯だ」みたいなことを言うのです。私には当時その意味が
全くわかりませんでしたが、今日のお話を聞いて非常によくわかりました」
とのことでした。
一般の方は「ヘルツォーク&ド・ムーロン」と聞いてもなんのことやらさっぱり
わからないと思いますが、その作品はほぼ全員が知っていると思います。
北京オリンピックの「鳥の巣」、
青山のプラダ本店
を設計した建築家です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%84%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF%26%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3
2001年には建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を、2007年には世界文化賞建築部門を
受賞しています。
一般的にこういう受賞関係は「全盛期」が終わって結構時間が経ってからもらう方も多いのですが
ヘルツォーク&ド・ムーロンに関しては、まだまだ世界の第一線にいるように思います。
そんな彼らがなぜそんなことを言うのか?
彼らはスイス出身です。スイスもドイツに負けず劣らず建築に関する省エネ基準が非常に厳しい国です。
そこで、設計するということはいかに彼らが世界のトップクラスの建築家であっても基準を破ることは
許されないということです。窓はトリプルガラスレベルを使いますし、壁は分厚い断熱材を使っています。
もちろん気密性も確保しなければならないわけです。
そんな彼らが日本のように構造さえよければ、断熱等の基準が極めて緩い日本の建築を見ると
「日本の建築家は卑怯だ」という発言につながるのです。
日本の建築家の建物は有名になればなるほど、窓はシングルガラス、壁は無断熱というのに近くなってきます。気密性に関してなんぞなにも考えていないというのが普通です。ヘルツォーク&ド・ムーロン
からしてみたら、「これだけ基準が緩い(ないに等しい)ようであれば、どんなデザインだって自由自在じゃないか」となるわけです。
実際、世界中の建築家にとって日本は構造の基準は厳しいけれどそこさえ満たせば施工レベルは極めて高いし、一種の「パラダイス」であるみたいに言われているようです。次の国立競技場でザハ・ハディドさんが
問題になっていますが、彼女みたいな「デザイン良ければ全て良し」という人が最も生き生きすることができる国といってもいいかと思います。
もちろん、そんな建物が建つと
・膨大な維持費がかかる
・超暑く、超寒い
・健康を害する
・膨大なエネルギーを消費する。
・膨大なCO2を排出する
という負担が建築物の所有者、もしくは公共建築物であれば国民にかかるわけです。
日本の建築基準法ってどうでもいいことに関しては異常に細かいのに、肝心なことに関しては
こんなもんなんです。いやはや残念でなりません。