この一年で一番「折り目」をつけた本!!
この一年で一番「折り目」をつけた本!!
1ヶ月ほど前に読んでしまっていましたが、フィリピンを見てから書評を書こうと
思っていたので今まで書かずにいました。
今日紹介するのは先日ヨーロッパで大変お世話になったオーストリア在住の
日本人指揮者である杉山さんに教えてもらった本です。
著者はアメリカ人のアレックス・カーさんで題名は「犬と鬼」といいます。
2002年発行の古い本です。
http://www.amazon.co.jp/%E7%8A%AC%E3%81%A8%E9%AC%BC-%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%96%E3%82%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E8%82%96%E5%83%8F–%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC/dp/4062081016/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1398856619&sr=1-1&keywords=%E7%8A%AC%E3%81%A8%E9%AC%BC
現時点で新品は残り1冊、中古品は22冊ですが,幸いKindle版があるようです。
表題には
「数々の文化遺産、美しい国土、すぐれた教育制度、世界一の個人貯蓄、それがありながら
なぜ日本は道を踏み外すのか?」
と書かれています。
著者はアメリカ人ですが、少年時代に来日し、35年間を東京、四国、京都で過ごしています。
ですから、決して中途半端な日本評論ではありません。日本歴という意味では現在の私とそう変わらない
と思います。
私はいろんな人と話をするときに、「日本に鬱積する様々な問題がなぜ解決しないのか?」
的なことをよく話します。
其の大きな理由として、「多くの人が選挙に行って意思表示をしないから」
と考えています。
しかし、其の行かない大きな理由が
「選挙の重要性、自分で考えることの重要性が学校等で教わることがないから」
という原点にまで戻ります。
さらに突っ込むとそんな学校制度をつくっているのは官僚の中でも文部科学省です。
この制度を続けていれば、官僚から見れば、どれだけいい加減なことをやり続けても
全く反論することのない、彼らにとってはまさに理想的な国家を維持することができます。
これは歴史を振り返った時、その時、其の国の支配者が最も理想とした状況です。
しかしながら、その状態が長く続くと国全体の国力が弱まってしまい、結果として自分たちが
甘い汁を吸うための制度によって官僚本人まで不利益を被ってしまうという現実があります。
そのあたりのことは「私の頭の中を覗かれたのか?」と思うくらい同じ考え方が書かれていました。
そのあたりのことは、この著者でなくてもいろんなところで見かけるかと思います。
この著者が優れているのはその、日本の伝統的な美に対する圧倒的な感覚です。
「なぜヨーロッパの街並みは美しいのに日本の街並みは汚いのか?」
「なぜ日本には電柱と看板があちこちにあるのか」
「なぜ日本では数少ない景勝地である京都の街ですらグチャグチャにしてしまうのか」
「なぜ、日本では必要のない河川や海のコンクリート化をどんどん進めてしまうのか?」
「どうして、GDPは上位にいるのに幸福感が低いのか」
といったことが、合計17章にわたって分野ごとに詳細に書かれています。
中でも土木、建築に関する記述が多いのですが、建築士である私でも
「へえっ!!」と知らないことがたくさんありました。
例えばですが、
「1995年から2007年までの13年間に予定されている公共事業費は
同時期のアメリカ(面積25倍、人口2倍)の3倍から4倍になるだろう」
みたいな具体例が山のように書かれています。
読めば読むほど馬鹿さ加減に嫌気が差してきますが、今の日本の官僚制度では
いったん動き出した官僚の慣性を止める力はありません。(著者もそう書いてますし
私も全く同感)
特にこの本は
建築関係者、教育関係者、政治家、環境関連業者、土木関係者、官僚、それから
子を持つ親、大学生・・・・あげるときりがないですが、そういう人たちに一人でも
多く読んでいただきたいと思います。
日本に生まれ、日本の学校に行き、日本人だけとしか付き合わない生活をしていると
まさにそれは「ゆでがえる」状態であり、その切迫した状態に気づくことは難しいと
思います。
一人でも多くの方にこの本を読んでいただきたいと強く思った次第です。
でもって読まれた方はぜひお互いに議論してみたいと思います。読まれた方からどんどんご意見
お待ちしております!!