先日、現場に行っている時に監督さんから次のような話を聞きました。なお、この工務店さんは当社以外にも建築家の物件を中心にたくさんやられている工務店さんです。
「松尾さんのところの住宅は職人が「冬暖かいし、夏もそれほど暑くならないから作業がほんとに楽!自分が建てるんやったらこんな住宅やな。他の建築家の住宅は格好だけはええけど、ほんまにそれだけやから金はろうてまで買おうとは思わん。しかし、なんでこんなに暖かさと涼しさが違うんやろう??分からん」とよう言うてますわ・・・」
とのことでした。この手の話は今までにも何度も聞いたことがあります。この話からわかるポイントをまとめておきたいと思います。
・大工さんは建物のはしからはしまで見ている。現場にいる時間は誰よりも長い。初めて高断熱高気密をやる大工さんはめんどくさがっていやがる傾向にあるが、当社の物件を何度か経験した大工さんたちは「あれだけちがう結果が出るならやる価値があるな」というふうになります。それにプラスして職人同士で気密競争みたいなことをして競い合う関係も出てきます。
・断熱嫌いの大工さんの中には「わしらプロなんやから、そのプロが断熱や気密なんかいらん言うたらいらんのや」みたいな方が一昔前まで一定数おられました。確かに彼らは、切ったり、削ったり、組んだりといったことに関するプロです。私にはそれを上手にすることはできません。しかし、変な意地を持っておらず、かつ私が設計した住宅を施工したことがある大工さんは「なんでこんなにちがうんやろ?わからん?」と素直におっしゃいます。これが現実です。答えはいつも言っているように高断熱、高気密、そして冬の日射取得、夏の日射遮蔽・・・この4つが複合的に絡み合った結果です。
・全員とは言いませんが、斬新なデザインをやる建築家の住宅ほど夏暑く、冬寒く、そして雨漏りが多く、後日メンテナンスにかり出される事が多い・・・。ひどい場合には裁判にもなっている。職人さんたちはみなさんこの事実を実感として知っています。
・上記のようなことが事実としてあっても、工務店は設計事務所からもらった図面はそのとおりに仕上げないといけない。さらに厳密に言うと、10年保証が義務化される構造と雨漏り対策だけは設計者を説得して自腹を切ってでも最低レベルに持っていく必要があります。その辺りの余裕率を見ておく必要もあるのでそういう設計事務所への見積もり価格は多少高めにならざるを得ない
かなり業界内の暴露話に近いですが、これが現実です。