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高断熱化するとオーバーヒートするという嘘(2)

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よく考えると、昨日は「計算で考える」と言っておきながら数式を伴った
説明が一切ありませんでした。
例えば100㎡、住宅内部27℃絶対湿度13g、外気温33℃絶対湿度20gという状態
があるとします。内部発熱は4.6W/㎡×100㎡=460W、日射取得熱は
日射遮蔽が完璧にできているという仮定でゼロとします。
ここで一方の住宅はQ値2.5、C値1(次世代省エネ住宅)
もう一方はQ値4、C値4(建売等でよくある住宅)
で考えてみます。

本当は屋根、外壁、窓等の外部表面温度はそれぞれ異なる上、
直射日光の影響で外気温よりもかなり高いのが現状です。
しかし、ここでは面倒なのでとりあえず外気温をベースに
計算してみたいと思います。(この計算結果は実際より
かなり少なめだということ)
お互いの住宅に外部から入ってくる熱量はそれぞれ
次世代省エネ住宅の場合
2.5W/㎡K×100㎡×(33℃-27℃)=1500W
建売住宅の場合
4.0W/㎡K×100㎡×(33℃-27℃)=2400W
となります。これに内部発熱460Wを加算すると
それぞれ1960W、2960Wとなります。
これらは温度成分です。仮に温度を下げるだけで
涼しさが成立するのであれば、それぞれの住宅では
6畳用のエアコン(冷房定格能力2200W)12畳用のエアコン(同3200W)
で事足りることになります。
この時点で、高断熱住宅のほうが冷房エネルギーがはるかに少ないことが
わかると思います。
しかし、実際にはこれに加えて水分がどんどん室内に入ってきます。
この計算は非常に難しいので省略しますが、基準法で定める0.5回の24時間換気と
日常生活から発生する水分だけでもかなりの水分量となります。8畳用のエアコンを
定格運転した場合の絶対湿度の変化を換気システムの種類ごとにグラフ化してみました。
高断熱化するとオーバーヒートするという嘘(2)
さきほどの計算から温度を取り除くのは比較的小さなエアコンでも問題なさそうに見えます。
しかしながら、8畳用のエアコンでは水分量を下げるという意味では全くもって不足することが
グラフから読み取れるかと思います。また、こういう使い方をする場合、潜熱の交換率が
高い全熱交換器は大きな効果を発揮することが分かります。
このグラフを作成した際、C値が悪いことによる外気からの水分流入は全く考慮に入れていません。
だいたいですが、今回の条件の場合、漏気による換気量はそれぞれ0.07回と0.28回くらいに
相当します。次世代相当の場合、水分の流入量は1割増くらいですみますが、建売住宅の
場合1.5倍以上の水分流入量となります。
実際の冷房能力を計算する際は最初の計算結果に、水分除去に必要な除湿負荷も足して計算
しなければなりません。
そもそも家庭用エアコンは冷房能力が100あるとしたら、温度を下げる能力が70%くらい
水分を下げる能力が30%くらいと言われています。
にも関わらず、実際の夏の住宅では温度成分よりも水分のほうがはるかにひどい状況にある・・・。
(本当は温度成分を30%。湿度成分を70%くらいの割合で下げると快適)
これが、夏エアコンが寒く感じる上、不快であるという大きな原因です。
もう少しわかりやすく説明すると、本当は湿度を下げたいが、エアコンの特性上下げる
ことができないので、不快さがなくならない・・・。その結果、少しでも快適にしようと
するため温度を下げる・・・。その結果温度は低いが湿度が高い状態となる・・・。
→寒くて不快
断熱性を上げることも夏の涼しさには重要ですが、気密性をあげてあげないと、元から
水分除去が苦手なエアコンがさらに効かない状態となることを知っておく必要があります。

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