1週間ほど前に
日本の建築はいつから「空間良ければ全て良し」になってしまったのか?
http://matsuosekkei.blog85.fc2.com/blog-entry-1911.html
を書いたところ非常に大きな反響をいただきました。
その中でこうなってしまった理由は間違いなく
燃費や性能を示す基準がなかったこと、
そしてあったとしてもそれを表示する義務がなければ
意味がないことも重要です。
そして・・・、
建築に興味を持ち始めたころから、学生がまず手に取る
雑誌、住宅特集や新建築のような専門誌も写真の美しさだけを競う感が
拭えないと思います。
私は子どものころから車のカタログや雑誌を見るのが大好きでした。
そんな子どもの私でも写真は当たり前ですが、スペックは気にして
見ていました。スペックが載っていないカタログなどは幼児向けの絵本のような
ものなので子どもながらに面白さを感じることができずにいました。
ということで、専門誌という業界に大きな影響力を持つメディアができる役割を
考えると、掲載する作品に耐震等級や一次エネルギー使用量、冷暖房負荷を
掲載することを望んでいます。これができれば屋根を緑化しただけや、自然素材を
大量に使っただけ、通風を考えただけ、もしくはそれらが複合的に重なっただけ
で実質的に性能が出ていない「エコっぽい」建築は排除される原理が働きます。
そして、次にコンペや賞についてです。意匠系の建築家にとって、これらは
上に上がるための登竜門であります。
しかし、現状では環境、もしくは省エネ系のコンペといえど、「エコっぽい」
建築が選ばれるものがたくさんあります。純粋な意匠系のコンペならいざしらず、
曲がりなりにも環境、省エネを謳うコンペがこういう状況であることはちょっと
我慢がならないところです。
こうなる大きな原因が審査員の選び方にあると思います。性能コンテストではないので
審査委員が熱環境の先生だけであるわけにはいきません。しかし、逆に純粋な意匠だけを
競うコンペではないにも関わらず、審査員に熱環境系の人が一人もいないというのが
往々にして見られます。その結果は自明で、実質的な性能よりも意匠や「エコっぽさ」
が勝ってしまいます。
本当に省エネな建築技術というのはえてして専門外の方から見ると「エコっぽい」
建築よりエコじゃなく見えてしまいがちです。最低でも数値による性能表示、それが
無理なら熱環境の専門家が委員の半数は入るようにしなければ、世界的に見れば
恥をかくお遊びとなってしまいます。
意匠系の建築家は馬鹿ではありません。共通の基準ができ、性能が数字で示される
ようになれば、それを守りながらできるデザインというのが育っていくとおもいます。
現にEUではそれが実現しています。
我々の仲間内でもこういう実質的に意味のあるコンペの実現に向けて話が出てきています。
実現できるよう協力していきたいと思っています。