基礎断熱と床断熱はどちらが正解?シロアリ・結露・気密で比較
この記事のポイント
- 床断熱が結露に強いのは1年目のみ。2年目以降は生涯にわたって基礎断熱の方が結露リスクが低い
- 床断熱で気密が出ないのは、柱・給排水管・床下点検口という3つの貫通部があるため
- 基礎外断熱は熱性能では3工法中もっとも有利だが、防蟻の研究者は一瞬でダメと判断する
- 松尾設計室は基礎内断熱で200棟以上を施工。10年点検で見つかった不具合は漏水1件のみ
- 基礎断熱の初年度はコンクリートから1トンの水分が出るため、その年だけ加湿が要らない
基礎断熱と床断熱は何が違うのか?
床下の断熱工法とは、断熱材を「床の位置」に入れるか「基礎の位置」に入れるかの違いのことです。前者を床断熱、後者を基礎断熱と呼び、基礎断熱はさらに断熱材を基礎の内側に貼る基礎内断熱と、外側に貼る基礎外断熱に分かれます。
床下空間が断熱ラインの内か外かで決まる
床断熱は1階の床のすぐ下に断熱材を充填する工法です。床下空間は断熱ラインの外側になるため、外気が床下を通り抜けます。基礎断熱は基礎の立ち上がり部分に断熱材を貼るため、床下空間が断熱ラインの内側に入り、床下は室内と同じ環境になります。この一点の違いが、結露・気密・床下エアコンのすべてに影響します。
| 工法 | 断熱材を入れる位置 | 床下空間の扱い | 世の中での多さ |
|---|---|---|---|
| 床断熱 | 1階の床の直下 | 断熱ラインの外側 | 圧倒的に多い |
| 基礎内断熱 | 基礎立ち上がりの内側 | 断熱ラインの内側 | 2番目に多い |
| 基礎外断熱 | 基礎立ち上がりの外側 | 断熱ラインの内側 | もっとも少ない |
工法の根拠は「計算・実験・論文」の3段階で決まる
住まい手が「基礎断熱の方がいいらしい」と聞く一方で、「基礎断熱は結露が怖いのでやりません」と断られることもあります。同じテーマで正反対の説明がされるのは、判断の根拠が示されないためです。
工法を決めるときの順序は3段階です。①計算できることは計算で確かめる、②実験できるなら実験で確かめる、③実験できないなら公的機関や大学の実験論文を参照する。結露計算も熱損失計算も市販のソフトで確認できます。実験には設備が要りますが、500棟を超える会社でも研究部門がないのが業界の実態です。だからこそ第3段階に意味があります。ところが多くの工務店は、3段階のいずれもやっていません。
「基礎断熱はシロアリに弱い」は本当か?
基礎断熱の防蟻リスクとは、工法ごとに差が大きく一律には言えないもののことです。防蟻の専門家は、基礎内断熱は定期点検を前提に許容し、基礎外断熱は例外なく否定します。松尾は2013年から2018年までの約5年間、防蟻薬剤メーカーで実務者向けアドバイザーを務めました。
5年間、シロアリの実験室で建材が壊れる様子を見てきた
松尾はシロアリの研究者ではありませんが、防蟻薬剤メーカーに二週間に一度のペースで通い続けた経験があります。そこには15畳ほどの、1年中熱帯のような環境に保たれたシロアリの実験室があります。シロアリが大量に生息する部屋に各種の建材を漬け置きし、どの材料がどれだけ壊れるかを確認してきました。
大手住宅メーカーは、防蟻処理をひとつ決めるためだけに、薬剤メーカーとの共同研究で種子島や屋久島のような南の島に実験施設を建てています。本州より暖かくシロアリの量が格段に多い場所です。その結果、一般的な工務店と大手住宅メーカーではシロアリの発生率が50倍から100倍違います。工法の差ではなく、検証にかけた手間の差です。
基礎内断熱は許容され、基礎外断熱は一律に否定される
基礎内断熱について、薬剤メーカーの担当者は「きちんと定期的に点検しているのであればやったらいい」と述べています。彼らが懸念しているのは工法そのものではなく、10年・15年・20年が経過したあとに来る訪問販売です。床下に人体へ有害な薬剤を散布された場合、基礎断熱では床下が室内側にあるため薬剤が室内に出てくるおそれがあります。
基礎外断熱については判断が明確です。薬剤メーカーの化学者、農学部出身でシロアリ研究をしてきた技術者、大学の研究者を含めて、全員が一瞬で「ダメ」と判断します。10年保証が付いた断熱材もありますが、実験室では見事に食われていました。住宅は10年で終わりません。11年目以降に発生した場合の答えを、誰も持っていないのが実情です。
床断熱の方が結露しにくいのは本当か?
床断熱が結露に強いのは1年目だけです。2年目以降は生涯にわたって基礎断熱の方が床下の結露リスクが低くなります。これは複数の査読論文と実験で示されている事実で、一般の住まい手だけでなく実務者も逆に思い込んでいることが多い点です。
1年目と2年目以降で評価が逆転する
基礎断熱は初年度にコンクリートから大量の水分が出るため、初年度に限れば床下の結露リスクは床断熱より高くなります。ここだけを見て「基礎断熱は結露する」という説明が広まりました。
ところが2年目以降はコンクリートの水分が抜け、床下が室内環境と同じになるため、結露リスクは床断熱を下回ります。しかもこの状態が生涯にわたって続きます。査読を通った論文の結論は、実務者が経験から抱くイメージよりはるかに信頼できます。
夏も冬も「湿った空気が冷たい面に当たる」経路ができる
原理は1点に集約されます。湿った空気が冷たい物の表面に当たると結露します。
夏は冷気が下に溜まるため床下が冷えます。そこに外気が入る床断熱では、湿気を大量に含んだ空気が冷えた床下の表面に触れて結露します。冬は逆に床下がきわめて低温になり、室内で暖房と加湿をしていると、湿った空気が冷え切った床下側の面に触れる経路ができます。
なお基礎内断熱でも、内側に貼った断熱材とコンクリートの間では基礎外断熱に比べて結露リスクがわずかに高くなります。ただし松尾が施工してきた範囲では、問題になるほどの結露は起きていません。
結露そのものを止める順序は、家のカビ対策8つの方法で扱っています。
なぜ床断熱では気密が出ないのか?
床断熱で気密性能が出ない理由とは、床面に柱・給排水管・床下点検口という3つの貫通部が構造上必ず存在することです。基礎断熱なら基礎の周囲4周を処理すれば済むため、気密は格段に取りやすくなります。C値が出ない原因は、天井ではなく床にあることが多いのです。
原因は天井ではなく床にある
「天井も必死で気密工事をしたのにC値が出ない、なぜですか」という質問を受けたとき、松尾が「床断熱ですか」と聞くと、ほぼ「はい」と返ってきます。
| 貫通部 | なぜ気密処理が難しいのか |
|---|---|
| 柱 | 1本1本すべてが床面を貫通しているため、本数分の処理が必要になる |
| 給排水管 | 配管が床面を貫通し、位置も本数も住宅ごとに異なる |
| 床下点検口 | 点検のために開閉する必要があり、構造的に開口部になる |
これを塞ぐには、土台の上の合板にテープを貼るか、合板の上に防湿シートを敷く工事が必要です。しかし、そこまでやっている会社はほとんどありません。
基礎断熱なら「4周」で済む
基礎断熱では、基礎の周囲4周を気密処理すれば完了します。作業量が根本的に違うため、C値の目標値を切ることが難しくありません。「なぜそんなに簡単にC値が出るのか」と住宅会社から聞かれますが、答えは技術の差ではなく工法の違いです。
基礎外断熱はなぜ熱性能で有利なのに選ばれないのか?
基礎外断熱とは、断熱材を基礎の外側に貼る工法のことです。断熱の連続性が確保でき、基礎の蓄熱量も使えるため、結露リスクと冷房負荷は3工法中もっとも小さくなります。それでも松尾が採用しないのは、防蟻上のリスクが3工法中もっとも大きいためです。
熱性能で有利でも、防蟻には代えられない
熱的な観点だけで評価すれば、基礎外断熱より優れた選択肢はありません。それでも松尾は、この工法を最初に外します。防蟻の研究者が例外なく否定する工法を、熱性能と引き換えに採用することはしないという判断です。工事費も3工法中もっとも高くなります。
| 評価項目 | 床断熱 | 基礎内断熱 | 基礎外断熱 |
|---|---|---|---|
| 防蟻上のリスク | 小(1年目のみ有利) | 中(定期点検が前提) | 最大(研究者は一律に否定) |
| 1年目の床下結露リスク | 低い | 高い | 高い |
| 2年目以降の結露リスク | 高い | 低い | もっとも低い |
| 気密性能の確保 | 難しい(3つの貫通部) | 容易 | 容易 |
| 床下エアコン | 採用できない | 採用できる | 採用できる |
| 工事費 | 並(性能を上げると高い) | 並〜床断熱より安い | もっとも高い |
| 冷房負荷 | 大きい | 小さい | もっとも小さい |
※唯一の正解はなく、何を優先するかで答えが変わる。
松尾はなぜ基礎内断熱を選んでいるのか?
松尾が基礎内断熱を採用する理由とは、防蟻で基礎外断熱を外し、床下エアコンの快適性で床断熱を外した結果としての選択のことです。基礎内断熱で200棟以上を施工し、10年点検で見つかった不具合は床置き型エアコンによる漏水1件のみでした。
UA値0.01の差は体感できないが、床下エアコンの差は子供でも分かる
床下エアコンは、床が暖かくなることで快適性が上がり、廊下・洗面脱衣室・トイレまでダクト工事なしで温められます。
UA値が0.3を切るような超高断熱の住宅でも、LDKで暖房をつけた状態で洗面脱衣室や廊下のドアが閉まっていれば、その部屋まで暖かさを届けるのは難しい。そしてUA値が0.01違っても体感では差が分かりません。ところが床下エアコンが入っているかどうかの差は、子供でも分かるほど明確に出ます。
200棟の10年点検で見つかった不具合は1件
松尾設計室は温熱に20年以上取り組み、基礎内断熱で200棟以上を施工してきました。10年点検で床下を確認しても、床の吹き出しスリットの直下以外で埃が積もっているのを見たことはありません。
不具合として確認されたのは1件、床置き型エアコンのドレン配管が詰まって水が溜まっていた事例です。冷房で使わなければこの事故は起きないため、現在は壁掛けエアコンで床下エアコン暖房をする方式に移行しています。
初年度は加湿が要らない——ただし2年目以降は必要
基礎断熱では、初年度にコンクリートから1年で1トン程度の水分が出ます。この水分が室内に供給されるため、初年度は加湿が要りません。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 2年目以降の加湿目安(3種換気) | 1日10リットル |
| 対象期間(12月・1月・2月) | 90日 → ざっと100日 |
| 期間中の合計加湿量 | 10kg × 100日 = 1,000kg(1トン) |
※1種換気の住宅では、加湿なしで室温20度・相対湿度50%を保てる例も多い。
住宅会社が住まい手と連絡を取るのは1年目が中心のため、「基礎断熱の家は加湿が要らない」という説明が定着することがあります。2年目以降は加湿が必要です。
床断熱でも「浴室の下」は基礎内断熱になっている
床断熱でも、ユニットバスの下だけは基礎内断熱にせざるを得ません。浴室の床には断熱材を入れられないためです。点検できるよう取り外し可能な断熱材入りの蓋を設けるのが正しい施工ですが、この処理を忘れる事例が少なくありません。もっとも寒さを感じやすい洗い場に、床下から外気が入り込みます。
どちらにしても浴室の下は基礎内断熱になる。ならば最初から全体を基礎内断熱にする方が整合が取れる、というのが松尾の判断です。
床下エアコン暖房の仕組みは、よくある質問の床下エアコン暖房とは何ですか?で説明しています。
まとめ:基礎断熱と床断熱は「何を優先するか」で決まる
床下の断熱工法に唯一の正解はありません。判断は次の順序で進めると迷いません。
- 防蟻を最優先するなら基礎外断熱を外す —— 専門家が例外なく否定する
- 床下エアコンを採用したいなら床断熱を外す —— 床下が断熱ラインの外側では成立しない
- 気密性能を求めるなら基礎断熱を選ぶ —— 床断熱には3つの貫通部がある
- 結露で判断するなら2年目以降を見る —— 床断熱が有利なのは1年目だけ
- 基礎断熱を選んだら2年目からの加湿を計画する —— 初年度の1トンの水分がなくなる
住宅会社に工法を尋ねるときは、結論ではなく根拠を聞いてください。結露計算をしているか、C値を測定しているか。この2つで、主観で決めているのか検証して決めているのかが判別できます。
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よくある質問
- 基礎断熱と床断熱の違いは何ですか?
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床断熱とは、1階の床の直下に断熱材を入れる工法のことです。床下空間は断熱ラインの外側になり外気が通ります。基礎断熱は基礎の立ち上がりに断熱材を貼るため、床下空間が室内側に入ります。基礎断熱はさらに基礎内断熱と基礎外断熱に分かれます。
- 基礎断熱はシロアリに弱いのですか?
-
工法によって差が大きく、一律には言えません。基礎内断熱は、防蟻薬剤メーカーの担当者も「定期的に点検しているのであれば問題ない」と述べています。一方で基礎外断熱は専門家が例外なく否定し、10年保証付きの断熱材も実験室では食われていました。
- 床断熱と基礎断熱では、どちらが結露しにくいのですか?
-
1年目は床断熱、2年目以降は基礎断熱です。基礎断熱は初年度にコンクリートから1トン程度の水分が出るため床下結露リスクが高くなりますが、2年目以降は床下が室内環境になるため生涯にわたって逆転します。この結論は複数の査読論文で示されています。
- 床断熱でも気密性能は出せますか?
-
構造上かなり難しくなります。床面に柱・給排水管・床下点検口という3つの貫通部が必ずあるためです。土台の上の合板にテープを貼るなどの追加工事が必要ですが、実施している会社はほとんどありません。基礎断熱なら基礎の周囲4周の処理で完了します。
- 基礎断熱の家では加湿器は不要ですか?
-
不要なのは初年度だけです。初年度はコンクリートから1年で1トン程度の水分が出ますが、2年目以降は水分供給がなくなるため加湿が必要になります。3種換気の場合の目安は1日10リットルです。「基礎断熱なら加湿不要」は初年度のみに当てはまります。
- 床下エアコンは床断熱でも設置できますか?
-
できません。床断熱では床下空間が断熱ラインの外側にあり外気が通るため、床下を暖めても熱が屋外へ逃げます。床下エアコンには基礎断熱が前提になります。床が暖まることで、廊下や洗面脱衣室までダクト工事なしで温度差を小さくできる点が採用の理由です。