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太陽光は本当に儲からないのか?都道府県別データで収支を計算する

太陽光は本当に儲からないのか?都道府県別データで収支を計算する
太陽光発電は元が取れるのか。都道府県別の発電量、売電20円と自家消費28.4円の差、回収年数、パネル劣化と電気代上昇の相殺まで、施主が自分で計算する手順を解説します。

この記事のポイント

  • 太陽光1kWの年間発電量は約1,200kWhが目安。兵庫県は1,279kWh、鳥取県は1,055kWh。
  • 発電した電気は売ると20円、自宅で使うと28.4円の価値になる(いずれも2020年時点)
  • つまり買取価格が下がった今の鍵は、自家消費率を高めることの一点に絞られる
  • 自家消費分の年約4.6万円は、買取価格がどう変わっても影響を受けない
  • パネルの出力低下は年0.8%。電気代の上昇年3%とほぼ相殺される

「太陽光はもう儲からない」に計算根拠はあるのか?

太陽光をめぐる判断の問題とは、計算できることを計算せずに結論だけが流通していることです。「買取価格が下がったから儲からない」「リスクがあるからやめたほうがいい」という主張のうち、計算根拠が示されているものはほとんどありません。

計算できるところは計算する

チャンスもリスクも、計算できる部分と計算できない部分があります。計算できない部分は天に任せるしかありませんが、計算できるところを計算せずに結論を出してしまう例が非常に多いのが現状です。

自分の中でそう思うだけなら影響はありません。しかしそれを広めてしまうと、本来得られたはずの利益を逃す人が出ます。国全体で見れば、削減できたはずのCO2が削減されずに終わります。

この記事のゴールは「自分で結論を出せること」

以下では、松尾が実測してきた結果とほぼ一致する公開データをもとに、収支を組み立てていきます。目的は「載せるべき」と結論づけることではなく、読者が自分の条件で計算し直せる状態にすることです。納得できない数値があれば、その値を自分の想定に置き換えて再計算できます。これが「誰かが言っていたから」との決定的な違いです。


自分の都道府県ではどれだけ発電するのか?

太陽光の年間発電量とは、設置容量1kWあたりで表される値のことです。目安は年間約1,200kWhで、松尾が工務店を指導するときもこの数字を暗算の基準として教えています。都道府県によって差はありますが、ゼロになる地域はありません。

兵庫県と鳥取県で2〜3割の差

地域 1kWあたりの年間発電量
兵庫県 1,279kWh
鳥取県 1,055kWh
暗算用の目安 約1,200kWh

※全国の実測データを集計した公開値。パネルメーカーや方式によっても変動する。

この2県で2割から3割の差がありますが、同じシミュレーションサイトで計算すると差は11%まで縮まります。集計データのほうが差が大きめに出る傾向があるためです。

日本海側でも「発電しない」わけではない

「日本海側なので設置する意味がないのでは」という質問が多く届きます。確かに青森や秋田は兵庫県より少なくなります。しかし夏はしっかり晴れており、発電量がゼロに近づくような話ではありません。地域差は2〜3割の範囲で、判断を覆すほどの差ではないのが実測値から見えることです。


売電と自家消費、どちらが得なのか?

自家消費とは、発電した電気を売らずに自宅の冷蔵庫や給湯に使うことです。売れば20円、自宅で使えば28.4円の価値になります(いずれも2020年時点)。この逆転が起きた時点で、太陽光の運用は「いかに自家消費率を高めるか」の一点に集約されました。

発電と消費が重なった部分が自家消費になる

太陽光は朝に発電を始めて正午にピークを迎え、日の入りとともにゼロになります。一方、家庭の電力消費は朝の出発前と夕食時に山が来ます。この2つが重なった部分が自家消費、重ならない部分が余剰電力(売電)です。

搭載している家庭の平均は自家消費30%・売電70%です。搭載量を増やすほど自家消費率は下がり、蓄電池や電気自動車を導入すると上がります。

4kWを載せた場合の年間収支

項目 計算 結果
年間発電量 1,279kWh × 4kW 5,116kWh
余剰電力(売電) 5,116 の約68% 3,501kWh
自家消費 5,116 の約32% 1,615kWh
売電収入 3,501kWh × 20円 70,020円
自家消費による削減 1,615kWh × 28.4円 45,866円
年間の利益 70,020 + 45,866 約11.6万円

※売電単価20円・自家消費単価28.4円はいずれも2020年時点。4kWは四人家族で使用量と発電量がほぼ釣り合う容量。

買取単価はかつて48円だった時期があり、2020年時点で20円まで下がりました。この1つの数字だけを見て「もう儲からない」と判断されることが多いのですが、自家消費分を計算に入れなければ収支は過小評価されます。

電気自動車は自家消費率を上げる最も強い手段

太陽光1kWが年間に発電する約1,200kWhを電気自動車に充てると、どうなるか。日産リーフの実測電費は1kWhで約8kmなので、ほぼ年1万km分になります。

年1万km走行に必要な費用 金額
ガソリン代(リッター15kmの車) 約10万円
太陽光の余剰電力で走った場合の電気代 約2万円
差額 約8万円の節約

余剰電力3,501kWhをすべて自家消費に回せれば、その価値は3,501 × 28.4円 = 99,428円になります。この金額は買取価格がどう変わっても影響を受けません。なお2020年時点で蓄電池のみで元が取れるのは電気自動車を兼ねる場合に限られる、というのが松尾の見方でした。


何年で元が取れるのか?

回収年数とは、設置費用を年間の利益で割った年数のことです。1kWあたり25万円で設置できれば約8.6年、一般的な相場である30万円なら10.3年程度になります。固定価格買取制度に基づくため、この範囲までは制度上ほぼ確実に回収できます。

単価によって回収年数が2年変わる

1kWあたりの単価 4kWの設置費用 回収年数
25万円(松尾設計室の提供水準) 100万円 約8.6年
30万円(一般的な相場) 120万円 約10.3年
35万円 140万円 10年で回収しきれない

※すべて2020年時点の単価。工務店や受託会社では30〜35万円、ところによっては40万円の例もある。

松尾設計室が25万円で提供しているのは、太陽光はできるだけ載せてほしいという方針から利益を抑えているためです。

10年目以降は「自家消費分」が効いてくる

35万円/kWで購入した場合、10年目時点で約24万円が未回収として残ります。ここで効いてくるのが自家消費分です。

自家消費による削減額年45,866円は、買取価格がどう変わっても発生します。24万円 ÷ 45,866円 = 約5.2年。つまり10年+5.2年=約15.2年で、事故や災害がなければ確実に元が取れます。

11年目以降の買取価格は誰にも分かりません。ただし固定価格買取制度を終えた人の買取額は、2019年11月時点で上限10.5円でした。この単価で余剰電力も売れると仮定すると、3,501kWh × 10.5円 = 36,760円が加わり、年間約8.3万円になります。

まとめると、11年目以降の年間利益は「最低で約4.6万円、余剰も売れれば約8.3万円、電気自動車と組み合わせれば約14.5万円」という範囲に収まります。松尾はこれを「年4万5,000円から10万円くらいの間」と表現しています。


パネルの劣化で発電量は落ちないのか?

パネルの出力低下とは、経年で発電量がわずかに減っていく現象のことです。単結晶シリコンで年0.8%程度とされ、一方で電気代は年3%上昇すると予測されています。この2つはほぼ相殺されます。

出力低下を最悪目に見ても、電気代の上昇でほぼ帳消しになる

出力低下率は国の研究機関のデータで年0.8%程度ですが、ここでは最悪目に年1%として計算します。電気代の上昇は経済産業省の予測で年3%です。

項目 今年 翌年
発電量 100% 99%(年1%低下)
売電分(70%) 70.0% 69.3%
自家消費分(30%) 30.0% 30.6%(99% × 103%)
合計 100.0% 99.9%

※出力低下を実測値の0.8%より悪い年1%として計算しているため、実際には帳消し以上になる。

出力低下を悪い側に見積もってもほぼ100%に戻ります。しかも松尾が2012年から2019年の実質値を計算したところ、電気代は年5.9%上昇していました。経産省の予測の倍近い水準です。つまり実際には、発電量の低下より電気代の上昇によるメリットのほうが大きくなります。

撤去費用は「必ずかかる」わけではない

30年経ったときに必ず外さなければならないかというと、そうではありません。屋根材が劣化する原因のほとんどは紫外線です。パネルの真下は紫外線劣化がほとんど起きません。ゴミが溜まることはあっても、外さなければならない理由は多くありません。外す場合でも15万円から25万円程度が目安です。


火災や災害のリスクはどれくらいあるのか?

太陽光の火災リスクとは、住宅用の累計設置件数に対する発生率で見るべきものです。累計約300万件のうち、躯体まで燃え移った例は120数件。そのすべてが屋根一体型で、下地合板との間に不燃材が入っていませんでした。

数字で見る火災リスク

項目 数値
住宅用太陽光の累計設置件数 約300万件
躯体まで引火した火災 120数件
そのうち屋根一体型だった割合 100%
不燃材が入っていない一体型の住宅数 約11万件
該当タイプでの火災発生率 約0.1%

※不燃材を挟んだ場合の火災は1件も確認されていない。

つまり屋根一体型で不燃材を挟んでいない場合に限って約0.1%という数字です。一体型でも不燃加工がされていれば、この問題は避けられます。

保証期間の直後がもっとも大きなリスク

10年以内であれば、メーカーの出力保証と災害補償が付いた製品を選ぶことでリスクを抑えられます。残る最大のリスクは、保証期間が切れた直後に故障することです。

それでも、パネル1枚の損傷であれば数十万円以内で修理できる範囲に収まります。撤去する場合も20万円前後です。この事態が起きる確率は1%を切ると松尾は見積もっています。確率の見立てに納得できなければ、10%や20%に置き換えて再計算すればよい。それが計算根拠を示すことの意味です。

期待値で考えるとどう見えるか

宝くじは1枚300円ですが、当選確率を掛けて足し上げた期待値は約150円です。だから確率統計の考え方を持つ人は宝くじを買いません。太陽光では、これと逆の見立てが広まっているのが松尾の指摘です。高い確率で得られる利益より、低い確率のリスクが大きく語られている、という構造です。

よくある質問

Q 太陽光発電は本当に元が取れるのですか?
A
固定価格買取制度に基づくため、1kWあたり25万円で設置できれば約8.6年で回収できます。35万円で設置した場合も、10年目の未回収額約24万円を自家消費分の年45,866円で埋めることで、約15.2年で回収できる計算になります(2020年時点の単価)。
Q 売電と自家消費はどちらが得なのですか?
A
自家消費です。2020年時点で、売電単価は20円ですが自家消費した電気は28.4円の価値になります。買取価格が自家消費の価値を下回った時点で、運用の鍵は自家消費率を高めることに絞られました。搭載者の平均は自家消費30%・売電70%です。
Q 日本海側や日照の少ない地域でも設置する意味はありますか?
A
あります。兵庫県が1kWあたり年1,279kWh、鳥取県が1,055kWhで、差は2〜3割です。同じシミュレーションで比較すると差は11%まで縮まります。日照が少ない地域でも夏はしっかり晴れるため、発電量がゼロに近づくことはありません。
Q パネルの劣化で発電量が落ちるのではないですか?
A
落ちますが、電気代の上昇とほぼ相殺されます。出力低下は単結晶シリコンで年0.8%程度、電気代の上昇は経済産業省の予測で年3%です。低下を最悪目に年1%として計算しても合計は99.9%に戻ります。実測では電気代は年5.9%上昇していました。
Q 太陽光パネルで火災が起きる確率はどれくらいですか?
A
住宅用の累計約300万件のうち、躯体まで燃え移った例は120数件です。そのすべてが屋根一体型で、下地合板との間に不燃材が入っていませんでした。該当タイプ約11万件に対する発生率は約0.1%で、不燃材を挟んだ場合の火災は確認されていません。
Q 電気自動車と組み合わせると何が変わりますか?
A
自家消費率が大きく上がります。太陽光1kWの年間発電量約1,200kWhを電気自動車に充てると、電費1kWhあたり約8kmで年1万km走れます。同じ距離をガソリンで走ると約10万円、太陽光の電気なら約2万円で、差額は約8万円になります。