鉄骨住宅は滅びつつある?
最近某超大手住宅メーカー(以下A社とする)の話をしていて興味深い話を聞きました。そのメーカーは鉄骨と木造の両方をバリエーションとして持っています。もともと鉄骨が強かったのですが、木造比率がどんどん増えてきて現状では過半数に達しているとのことでした。
絶対的に鉄骨メインの会社だったのでそれを聞いて非常に驚いたのですが、そうなった理由が滑稽でした。最近のゼロエネ住宅ブーム、及びゼロエネ補助金ブームの流れでA社も「出来る限りゼロエネの補助金ととっていくぞ!」と社内大号令がかかっていたようです。そこで、住宅メーカーによくある話ですが、まずは大量の太陽光発電、そしてエネファーム等の設備機器てんこ盛りで対応しようとしたそうです。そうすると確かにエネルギーは減るのですがコストが異常に上がってしまいます。結果として「補助金は確保できるようにはなるものの競合他社に金額競争で負ける」という本末転倒の事態が多発したようです。しかも、その悲痛の声はより断熱的に不利な鉄骨住宅のほうから大きくあがってきたようです。こんな理由からそこで木造比率が高くならざるを得なかったというのがまず一つ目。
「じゃあ設備ではない補助金対策で一番費用対効果が高いものはなにか?」これを考えた結果出てきたのが、これまたいつも言っていることですが窓を高性能化するということです。至極当たり前のことですが、これに気づいた現場サイドから「窓の性能をあげてくれ!」「樹脂サッシを標準化して欲しい!」といった要望が本社に向かってたくさんあがるようになり、A社では省エネ基準からくる社員のボトムアップから木造化と窓の高性能化が進みつつあるというのです。
結果としてはいいことだと思うのですが、「住まい手のために」「環境のために」ということが後回しになり自社の都合を再優先するということが日常的に行われているがゆえにこのような減少が起こります。決してうちの会社が「自社の都合を押し殺す」会社ではありませんが、少なくとも「住まい手」「環境」「自社の都合」は同格に扱っているつもりです。
そもそも、製造時に大量のエネルギーを使い、生活が始まってからも熱を強烈に通してしまう・・・。このような鉄というものを住宅の構造に使うということはどうしても鉄骨でなければできないようなビル、防火上の規制で木造ができない等で無い限り、採用する合理性は全く持って存在しないということを知っておいたほうがいいでしょう。