高断熱化するとオーバーヒートするという嘘
もうすぐ明石市内のデイサービスの改装工事が終わります。(鉄骨オフィスビル)
もともとついていた天カセのエアコンの冷房の効きがかなり悪く、新品に交換
しようとされていましたが、それは行わずに、みっちりと断熱改修を行いました。
その結果なにが起こったか!?
お施主様が現場に来た際、「冷房が効きすぎて寒い!」
とおっしゃったのです。
今までは冷房してもしても、壁や窓から大量の熱が侵入してきたので
エアコンが効かなかっただけで、きちんと断熱改修を行った結果、必要
以上にエアコンが効くようになったのです。
では、なぜこんな単純な事実があるのに、この住宅、建築業界には
「次世代省エネ基準より大幅に高断熱化すると夏オーバーヒートする」
といった都市伝説がはびこっているのでしょう?
冷静に計算を元に考えてみました。
そもそも熱というのは物理現象なので必ず高いところから低いところへ
移動します。
次に、夏の室温を決める要素としては外気温、断熱性、気密性、
日射取得量、内部発熱量、エアコンの冷房能力などが大きく関わってきます。
「高断熱化するとオーバーヒートする」という説の
前提は「室温の方が外気温よりも必ず高い」もしくは
「天井、内壁の表面温度が屋根、外壁の表面温度より必ず高い」
ということにあります。
これらの場合、室内側の方が温度が高いという状態なので
熱は内から外へ移動しようとします。こういう状態の場合、
断熱性が悪いほうが当然熱は外に移動しやすくなる(逃げやすくなる)
ので「断熱性が低いとオーバーヒートしにくい」という論が
出てくるのでしょう。
しかし、実際はかなり異なります。
まず屋根の表面温度ですが、昼間は50℃はおろか60℃を超える
ことすらあります。どのように考えても熱は外から内へ移動しようとします。
外壁においても、日向になっている時間帯はその外壁の表面温度は40℃くらいには
平気で達します。要するに、外気温よりも外壁の平均温度よりも確実に高いわけです。
この場合も屋根と同じく熱の移動は外から内への移動となり、いずれの場合も
断熱性が高いほど快適であるということが明らかなわけです。
また、日影の外壁面はだいたい、外気温と同じくらいになります。ということは
室温とそれほど大きな温度差にはならないのでそもそも熱の移動自体が少ない状況に
なります。
人体や家電製品による内部発熱は確かにありますが、それはさほど大きな熱量ではありません。
高断熱の建物でも日射遮蔽がきちんとできていれば、室温がどんどんあがっていくようなことには
決してなりません。
さらにいうと、当社のお客様がよくやっているように、小屋裏のエアコンを1台だけでも運転している
ような状態の場合、家全体が確実に外気より低い温度となります。この場合、いかように考えても
内部から外部に向かって熱が移動することはありません。ということは、「断熱性は高ければ高いほど
外の熱は入ってきにくくなる」ということがはっきりと言えるわけです。
この都市伝説が比較的あてはまるとすれば、それは日射遮蔽がほとんどできていない次世代省エネ
以上の建物だと思います。