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高性能住宅ガイドライン

住宅会社選別チェックリスト

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住宅会社選別チェックリスト

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最低限必要な項目

耐震等級3

まともな住宅会社かどうかを見分ける最初の質問として「耐震等級3ですか?」と聞いてみる必要があります。大手メーカーだと8割がた大丈夫ですが、中小になると逆に8割以上出来ていません。耐震等級3の重要性については下記ページで詳しく解説していますので合わせてご覧ください。

 

さらに突っ込んで確認するのであれば、構造計算の方法を聞いてみてください。計算方法の種類は、簡易計算である「壁量計算」、本来の構造計算である「許容応力度計算」、そして、型式認定という3つの方法に大別されます。(※型式認定は大手ハウスメーカーが取り入れている構造検討方法です。)三階建て以上では許容応力度計算が義務づけられていますが、平屋、2階建住宅においては9割以上の住宅会社が壁量計算しかしていません。かつて芝浦工業大学にてランダムに100物件分の簡易計算の住宅図面を集めて許容応力度計算を行うという試みが行われました。その結果は「すべての物件でエラーが発生していた」という驚愕の内容でした。平屋や二階建て住宅を建てる際にはぜひ「許容応力度計算をしていますか?」と確認してください。

南海トラフ地震が30年以内に70~80%の確率で来るとされています。また、発生する時期が遅れるほど年々この確率はあがっていくように出来ています。三十代半ばで家を建てられる方にとってはほぼ間違いなく大地震の被害を受けることになります。阪神大震災、東日本大震災、熊本地震といったどの大地震を見ても最大震度は7、そして地震直後は微振動も含めると一週間で1000回程度の地震に見舞われます。熊本においては余震でも震度7という観測史上はじめての現象も観測されました。このような大地震が起こると耐震等級2以下では再居住が不可能なレベルまで壊れてしまう可能性が残ります。

大地震、巨大台風、両方に言えることですが、同じ種類の被害が同一エリアで大量に起こった場合、仮に予算があったとしても業者の人手不足が著しく補修にはなかなか来てくれません。命が守れるだけの基準が耐震等級1、2割程度の確率で住めなくなる可能性があるのが耐震等級2、震度7の地震が連続で発生してもそのまま住み続けられるのが耐震等級3です

UA値0.46以下

今の住宅会社が共通で表示することができる断熱性能の指標がこのUA値(ユーエーチと読みます)です。計算によって求める値で、良い断熱材を分厚く使えば使うほどこの値は小さくなっていきます。衣服に例えるならどんな材料で(綿かダウンかみたいな感じ)厚さ何ミリなのかの両方で決まる暖かさを示す指標です。ということで、○○工法だから暖かい。○○断熱だから高断熱みたいな話ばかりがあふれる住宅業界ですが、一切無視しても弊害はほぼありません。断熱性能に関してはこのUA値を確認すれば、断熱に力をいれている住宅会社であるか否か判断がつきます。〇〇断熱というポエムに頼ってUA値を即答できないような会社は論外です

C値1以下

まずこれは「シーチ」と読みます。衣服に例えるなら袖口やファスナーはもちろん、衣服自体の破れも含めて隙間がどの程度空いているかを表します。いくら断熱性が良くても隙間だらけだと、暖かくならないのは衣服と同じです。これは計算ではなく、バズーカ砲のような測定器を現地に設置して内部の空気をどんどん抜いて行って測定します。これを「気密測定」といいます。まともな住宅会社かどうかを見分ける2番目の質問として「気密測定を実施されていますか?」と聞いていただくのが良いと思います。一般的には1割程度しか実施されていません。その関門をクリア出来たら、「C値はいくら以下を目安にされていますか?」と聞いてみてください。最低1以下にしておかないと空気が想定通りに流れないので、計画換気ができず(臭気が残る部屋が出来てしまう)もちろん冷暖房の効率も悪化します

20℃50%で下枠が結露しない窓

冬加湿しない状況で20℃くらいになってくると寝ているときにのどの渇きを感じます。またしっかり加湿していないとの誰かがインフルエンザ等ウイルス感染するとすぐに家族に感染しやすくもなります。このように健康面から考えると20℃のときには50%程度の湿度が欲しいところです。これは1日10リットル加湿してちょうどよいくらいの加湿量になります。これだけ加湿を行うと人間にとっては非常に健康で快適なのですが、窓にとっては厳しい状況となります。大半の住宅で使われている樹脂アルミ枠のサッシでは下枠が結露してしまいます。こうならないためには最低でも樹脂のみで枠が構成されている樹脂サッシ、もしくは非常に高価ではありますが、木製サッシのどちらかが使われている必要があります。結露の観点を抜きにしたとしても窓は最大の熱損失箇所です。窓を高断熱化していない会社は断熱に興味と技術力の両方がない会社ととらえて差し支えありません。

推奨項目

家全体が暖房計画されているか

車の場合、「エアコン設置はオートバックスで頼んでください」と言われることはないですね。ところが住宅業界ではほぼこれとおなじこと、つまり「エアコン設置は家電量販店で頼んでください」と言われるほうが圧倒的に多いのです。いくら断熱性、気密性が良くても暖房計画が適切に行われていなければ家全体が暖かくなることはありません。また、このように外注してしまうと、断熱設計した本人が適切な容量選定した場合に比べてはるかに大きな能力選定が行われます。皆さんが常識だと思われている「6畳間には6畳用エアコン」という設置方法は実は現代の新築住宅においては高断熱住宅でなくともかなり過剰になってしまっています。このことを家電量販店の営業マンも住宅業者も知らないことが大半です。6畳用エアコンの最大能力は中上位機種になると6300W=こたつ10台分もの熱量を発生します。しかし高断熱住宅であれば、最も寒い瞬間でも600W程度(こたつ1台分)もあれば十分に暖房することができます。だから、松尾設計室の住宅ではエアコン1台で家中暖房が可能になるわけです。

家全体が冷房計画されているか

暖房計画と同様ですが、暖房よりもはるかにハードルが高くなります。一部の工務店において床下エアコンはかなり普及してきました。これは当社が建築知識という業界専門誌の2012年4月号にて床下エアコンの設計法を公開したところから、模倣する業者が全国で爆発的に増えたという現実があります。ある程度以上の、断熱性、気密性がある住宅で床下エアコン方式を採用していれば、家全体暖かくすることは簡単です。ただし、それを一般の方が納得する電気代で抑えられるかどうかは住宅会社の腕次第です。通常2階面積は一階よりも小さいので1階がすべて温まればその温かさは2階にも伝わります。だから家全体を1台で温めるのは簡単なのです。

それに対して冷房は違います。2階は1階とは異なり個室が区分けされています。各部屋に上手に冷気を配る方法を確立しなければ1台のエアコンで家全体を冷房することは絶対にできません。これが簡単なようで非常に難しいので今全国の工務店さんが当社の冷房方式を勉強しに来られています。当社では1台のエアコン冷房で家全体をできる限りムラなくしかも最低限のエネルギーで冷房するシステムに取り組んでいます。この方式はエアコンの台数も抑えられるのはもちろんのこと、冷房費用も8月家全体を24時間冷房して、冷房費用が4000円から5000円でおさまるくらいになります。信じがたいかもしれませんが、日射遮蔽と冷房計画を突き詰めればこのような結果が得られます。再び自動車でのたとえになりますが、仮にエアコンをメーカーが標準でやってくれるとしても「左の後部座席だけは効きませんから」といった話は軽自動車でもありえません。住宅は自動車の10倍の値段、1日の利用時間も2時間と10時間で5倍以上、使用年数も10年と40年以上で4倍以上使うのです。それなのに自動車では標準装備かつムラなく効くのに住宅ではほとんどの会社が対応していないことがおかしいということに気づいてください。

もうひとつ注意事項。最近住宅業界では30を超える全館空調システムが工務店向けに提供されています。しかし、その大半が原価で130万を超えます。お客様出しですとおそらくオプション対応で150万以上の追加になると思います。ひと昔前はこの手のシステムが250万以上していたので、そこから考えるとかなり安くはなりましたが、それでも資金に余裕がある人しか導入できない贅沢なオプションと言えます。当社では家全体が暖かく、涼しくなるということは富裕層だけの特権ではないと考えています。だからお金がかかる全館空調システムではなく、当社独自の方法で設計と冷暖房計画をしています。いずれかのシステムを利用している住宅会社に出会ったら、すべての住宅に提供できているかどうか?そこもチェックしてみることをおすすめします。また、エアコンの寿命である10年ごとの交換費用がどの程度かかるのかも重要なチェックポイントになります。

冬の日射取得ができているか

住宅の暖かさは断熱と気密だけで決まると思われている方が多いかもしれません。確かに断熱と気密は熱損失を抑えるための重要な要素です。しかし、暖かい住宅の正確な定義は「暖房に必要な熱量(暖房負荷)」が小さな住宅を指します。暖房に必要な熱量とは、熱損失から日射取得と内部発熱を引いた値です。熱の損失と取得の関係

暖房に必要な熱量(暖房負荷)=熱損失―(日射取得+内部発熱)

つまり、暖かい家にするためには熱損失だけでなく熱の取得も非常に重要な要素なのです。どこの住宅にもある幅165m、高さ2mの引き違い窓一か所に直射日光がきちんとあたると、こたつ1台分に相当する熱量(600W)が入ってきます。内部発熱は、人の数や家電製品で決まるため住宅業者にはコントロールできません。

 

よって暖かい住宅を作るためには断熱、気密によって決まる熱損失を減らすことも重要ですが、同時に日射取得を増やすことはそれ以上に重要であるということになります。日射取得のほうが重要な理由は工事費が上がらないからです。断熱性能を上げるにはどうしても費用がかかります。費用が上がらない日射取得はやれるだけやったほうが確実に得になります。

完璧な夏の日射遮蔽が出来ているか

断熱性、気密性をあげていけば確実に家は暖かくなっていきます。そういう意味で冬対策は単純かつ簡単です。そこで終わってしまっている住宅会社が後を絶ちません。「冬の日射取得」のところで説明しましたが、日射のエネルギーは非常に強いです。冬は助っ人になりますが、夏は強敵になります。夏の日射遮蔽が「完璧に」出来ていなければ、冬は暖かいけれど、夏暑くてたまらない住宅になってしまいます。

これは結構単純に法則化できています。南面(真南から振れ角が20度以内の場合)は窓の高さ10に対して3程度以上の庇がついているか、もしくはアウターシェードと呼ばれる外付けの日射遮蔽措置がついているかどうか?(外付けというところがポイントです。日射は外だと8割カットできますが、どんな遮光カーテン等を使っても内部では4割しかカットできません)

東西北面の窓は極力小さく(できれば一部屋一か所0.5㎡以内)かつ遮熱Low-Eとなっているか。もしこの2条件が満たせない場合は、外付けの日射遮蔽措置がなされている必要があります。ここで注意していただきたい嘘の営業トークがあります。東西北面の窓がかなり大きい、もしくは南に庇等がない状態で「遮熱Low-Eガラスを使っているから大丈夫です!!」という大嘘です。いくら遮熱Low-Eを使っていても面積が大きければ大量の日射が入ってきます。日射遮蔽が出来ていないと入ってきた熱量を除去する分だけ冷房を余分に動かす必要が出てきます。これは「窓がストーブと同じ熱量を発して暑いのでその分冷房を強くかけている」という快適性、健康面、冷房費のすべてにおいて最悪の状況となります。

鉄骨および鉄筋コンクリートの場合外断熱かどうか

戸建住宅の場合、構造は木造が一番多く二番目が鉄骨造になります。マンションのような集合住宅では鉄筋コンクリート増が多いですが、今では超高級住宅を除けば戸建てで鉄筋コンクリート造はほとんど見なくなりました。

鉄は木の480倍熱を通しやすい材料です。ですので、元来断熱面では非常に不利な構造でした。大手住宅メーカーの中には鉄骨からはじまったメーカーがたくさんあります。そういったメーカーがここ10年ほどの間に徐々に木造比率を増やしてきたのはここに秘密がありました。省エネ基準、業界内の断熱水準の向上が激しい中、鉄骨造で勝負するには厳しい現実がありました。このような熱的には非常に不利な鉄骨造をどうしても採用するのであれば、外張り断熱によって最低でも5cm以上の断熱材でくるむ必要があります。某大手住宅メーカーでは言葉尻だけでこの問題を解消するために2cmに満たない外断熱とすることで対策済みのような営業を繰り広げていますが、その程度では480倍もの熱損失を補填することはできませんのでご注意ください。

プラン作成は二級建築士以上か

本来、建築基準法では「一級建築士、二級建築士又は木造建築士でなければ設計又は監理をしてはならない建築物」として「100㎡以上の木造建築物」が挙げられています。大半の住宅が100㎡(30.25坪)を超えるので狭小住宅以外は無資格者が設計してはならないことに法律上はなっています。しかし、住宅業界では大手住宅メーカーも含めてこの法律が形骸化してしまっています。「間取り」もしくは「プランニング」と言われる平面図や立面図を考える業務を23歳の文学部卒業の営業マンがやっている会社がいくらでも存在します。中にはそういった方の中に上手い人もごくまれにいますが、そういう確率は非常に少ないです。医師、弁護士業界においてはいくら実務経験が長いからといって無資格者がメスを持ったり、法廷に立つことができないのとは正反対です。

耐久性に関する配慮があるか

大手住宅メーカーに関してはここを心配する必要はありません。逆に中小の業者はここが弱い会社が多くなります。断熱や気密とは異なり、確認すべき項目が本来は山ほどあるのですが、それを一般の方がやり遂げるのは不可能です。そこで、簡単な見分け方を説明しておきます。

  • 軒(屋根の先が伸びて外壁が濡れにくくしたり、日射遮蔽の役割を果たす)がない住宅(シンプルモダン系の住宅に多い)は雨漏り、外壁劣化、壁内部結露の可能性が非常に高いので耐久性と両立させるためには高度な技術力が必要。しかし、一般的には軒がない住宅をやっている会社の大半がこのような技術力は備えていない。
  • 「結露計算をやっていますか」この一言で意味が分からない担当者、もしくは社内で確認してだれもやっていない会社は壁の内部結露が起こるリスクの検討が行われていないということになります。
モデルハウスにエアコンの室外機が少ないほど良い

モデルハウスでは外部を一周ぐるっとまわってエアコン室外機の数を各社数えてみてください。平均的に各社7~9台置かれていることが多いです。これだけなければ家中を暖かく、涼しくすることができないということを物語っています。モデルハウスは大きいのでこうなりますが、30から40坪の一般的な住宅においても同様の設計手法でエアコンを設置すると1階はLDKと和室で2台、2階は主寝室と子供部屋2部屋の3台で合計5台必要ということになります。1台15万としても75万になります。10年おきに買い替えるとものすごい費用です。

可能なら平面形状、屋根形状共にボコボコは少ない方が良い

これは住宅会社というよりは設計担当者の力量と癖によるところが大きい項目です。建売に近くなればなるほどお客様の要望する部屋をそのままくっつけて屋根をかけたら完成という住宅が多くなります。この手法で設計すると外観形状が凹凸の多いボコボコになります。これは壁だけでなく屋根のかけかたも複雑になります。ボコボコになるということは外壁面積が増えるということなので工事費が高くつきます。また表面積が増えるので熱損失も大きくなります。施工も面倒になり雨漏りもしやすくなります