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広大なフェンスターバウの会場で見かけた2つのすごい窓!!

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広大なフェンスターバウの会場で見かけた2つのすごい窓!!
明日で帰国してから1週間が経ちます。
忘れないうちにフェンスターバウで見つけたすごい窓を2つ紹介したいと思います。
フェンスターバウの会場は東京ビッグサイトの全会場よりもかなり広いと思います。
それらすべてが窓で埋まります。ただ、製品としての窓だけではなく窓の製作機械や金物
まで含んではいます。
今回は0.8日くらいしかなかったので窓の製品に関するところだけをまわりました。
それだけ広い中でたった2つだけでしたが「これは!!」と思える窓がありました。
なんとそのひとつは日本のメーカーYKKAPが試験的に制作した窓でした。
幅が4mはあろうかというものすごい大きさの片引き戸でした。
内側から見ると木製サッシ、外側はアルミクラッド(アルミ製のカバー)ではなく
木自体がガラス全面で覆われることによって耐候性を確保しているというようなものでした。
外側からのデザインは例えるなら巨大なIPadのような見た目でした。

広大なフェンスターバウの会場で見かけた2つのすごい窓!!

これはデザイン的にも非常にきれいですが、アルミ部材を減らすことにもなると思うので非常に
優れたデザインだと思いました。
ただ、この外観デザイン・・・。明らかにこの窓のデザインから触発されてできたことがよくわかりました。
http://www.green-b.net/
外観デザイン以外は全く異なるので、問題はないのかと思いますが、参考まで・・・。
なお、2つのサンプルが展示されていましたが、ひとつは内側の木が日本の杉
広大なフェンスターバウの会場で見かけた2つのすごい窓!!
もうひとつはブラックウォルナットでできており、どちらも非常にきれいな木目でした。広大なフェンスターバウの会場で見かけた2つのすごい窓!!
広大なフェンスターバウの会場で見かけた2つのすごい窓!!
この2種類の木の選択にもセンスを感じました。
また、片引き戸とすること、しかも締めるときに取っ手で押さえつけるようにすることで
気密性が高まる点も素晴らしいと思いました。

デザイン、日本人が好きな引き戸、気密性、全てにおいて高いレベルであったと思います。
本当に広い会場でしたが、バランスと言う観点でいうとこのレベルの窓は他にはなかったと思います。
実際、来客数もかなり多かったと思います。私の性格的に「同じ日本だから」とか「知り合いがいるから」
ということで身びいきした評価をすることはありません。本当に良かったと思います。
このサッシ日本でもぜひ発売してほしいと思いました。しかしながら、2年前のフェンスターバウに触発
されて、2年でここまでのサッシを作る能力がある会社及び国において、今まで本当に低性能な窓ばかり
作ってきたのは一重に怠慢であったとしかいえないこともよくわかりました。もちろん今から頑張れば
それでいいのですが・・・・
それと、普通のサッシとして王道だったのはヨーロッパの樹脂窓の中でも王者的存在である
schuco社(シューコーと読みます)でした。
まずはその断面を見てください。
広大なフェンスターバウの会場で見かけた2つのすごい窓!!
これだけ見ても、一般の方にはなんのことやらわからないと思います。
これはトリプルガラス仕様の樹脂サッシと言われるものです。
日本でもつい最近YKKAPからAPW430という窓が出ましたが、その断面は次のようなものです。
広大なフェンスターバウの会場で見かけた2つのすごい窓!!
この2つを見て、窓の専門家じゃなくてもすぐにわかる違いが2つあります。
まずひとつはシューコーのサッシは樹脂の外側にアルミカバーがついているということ。
2つ目は枠の内部で区切られた部屋(チャンバーといいます)の数が圧倒的に違うということです。
アルミカバーは非常に耐候性が強い樹脂ではありますが、100年単位で住宅を持たせる意志の表れなんでしょう、
念には念を入れてさらにカバーをつけているというわけです。
チャンバーの数ですが、これはこの数が多ければ多いほど断熱性が高いということを表します。
APW430も日本の窓の中では圧倒的高性能、かつ救世主的存在ですが、現在の世界最高峰である
シューコー社のサッシと比べれば、オリンピック金メダルと日本選手権優勝くらいの違いがあることが
分かっていただけるかと思います。
ここまではわかりやすいところです。また、私も分かっていたことではあります。
しかし、ここから紹介することは、今回はじめて知って改めて驚かされたことです。
樹脂サッシの断面サンプルには一部大きな大きな虚偽表示があります!
それは「本当は入っているスチールの補強材」が抜かれて展示されているということです。
日本の窓メーカーはどこのカタログやサンプルを見てもスチールの存在が消されていますが、
EUの展示会では逆にどこのメーカーの断面にもきちんとスチールが入っています。
これが誠実さの差なのかどうかはわかりませんが、私にはそのように見えてしまいます。
なぜスチールが入っているかというと樹脂だけでは強度が足りないからです。
しかしながら、スチールを入れるとアルミほどではないですが、当然熱的性能はダウンします。
そこで、数年前からEUの樹脂サッシで取り入れられていたのがスチールの代わりに
非常に高強度な樹脂である「ポリアミド」を芯材として使ったサッシでした。
ポリアミドによって強度と断熱性は両立することができていたのですが、ポリアミドと
樹脂は別々に成形してから後で組み合わせる必要があるので、非常に高価でした。
この問題を解決したのが完全に逆転の発想をしたシューコー社でした。
なんとポリアミドの代わりに熱伝導率が最も高い「アルミ」を芯材に使ったのです。
普通なら「強度は出ても熱伝導率が悪くなる」と思うところですが、断面形状を
工夫することで、アルミの熱伝導率のデメリットをできるだけ消して、高輻射の特性を
活かして断熱性の高い枠を作りました。
アルミであれば、樹脂と一体で成形できるのでコストが非常に安く、従来からの
コストアップなしだということ。しかも、トリプルガラスまでになるとどうしても
重量が重くなるのですが、従来のサッシに比べて30%(ここは記憶があいまい)
くらい重量を軽量化することにも成功したとのこと・・・。
本当に地味な技術ではありますが、このサッシを見た時、本当に職人魂というかエンジニアの
誇りを感じずにはいられませんでした。自動車部品や、電化製品の部品の世界では日本もこういう
分野は世界で一番多い国だと思います。窓に関してだけこれほど遅れてしまったものの、近い将来
日本の窓業界においてもこのレベルの窓が普通になることを切に願うばかりでした。

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