だいたい月に10冊くらいは本を読んでいると思うのですが、昔から読み方にちょっと
した癖があります。早く読みたいと思う本、もしくは読み終えるのが簡単そうな本があると
読み終えていなくても浮気しながら読んでしまいます。
そうすると、それに該当しない比較的難しそうで分厚い本は後まわしになりがちと
なります。その大きな理由の一つに持ち運びにくいというのがあります。特に
滋賀の往復のときなんかは薄い本なら3冊は入れて乗車するんですが、これが
激厚の本となると1冊でもそれを超える体積と重さ・・・。
しかも、電車で軽く・・・という感じからは程遠い。読むにもある程度の覚悟がいるような
感じです。そういうわけで、1年くらいほったらかしになっていた本があります。
それが
クルーグマン ミクロ経済学
と
クルーグマン マクロ経済学
です。どちらも5000円もする上A4サイズで5cmはありそうな巨大本ですが
中身はカラーでグラフや物語が多く、小難しそうな経済学がすっと腑に落ちる
ように入ってくる名著です。ちなみに著者は2008年のノーベル経済学賞受賞者です。
経済学の先生というのはたくさんいるんでしょうが、私のような門外漢の人間が
読んでも分かりやすく、かつ「面白い」と思わせてくれるのはクルーグマンさんが
教育者もしくは講演者としての力量がなせる業なんでしょう。私が学校の先生に
求めるのはまさにこういう能力です。例えば小学校の算数くらい、教員免許がなくても
たいていの大人は理解できます。しかし、子どもに興味をもたせ、理解させるとなると
誰でもできることではありません。ましてや生徒が退屈していたり、昼寝をしていたり
となると、生徒を叱るのはもちろんですが、自分の力量に疑問を持つのがプロでは
ないかとも思います。
経済学部に入ると最初にミクロ経済学を学ぶらしいのですが、この分野では
学者による意見の違いはほとんどないそうです。要するにある程度完成された
分野だということでしょう。この本を読んでいると普段新聞を読んでいて真贋が
分かりかねるような記事があったとしても、自分なりに判断ができるようになってきます。
多くのビジネスマンが経済評論家の本は山ほど読んでいても、経済学の教科書的な
本は読んでいないのではないかと思います。要するに基礎を学んでいないのではないかと
いうことです。ご多分に漏れず私もその一人ですが、少なくとも政治家になるような人
は経済学の知識なしで正確な判断はできないと思うようになりました。
また、政治家を選ぶのは一般市民です。どの政治家を選ぶのが良いかというときに
政策の良し悪しで選ぶのが本筋です。しかし、経済学の基礎知識なしで理想的な
選択をすることはかなり難しいように思います。実際今のTPPに関する議論を見ていても
皆が「私の意見こそが!」と言っている中で自分なりに真贋を見分けることは意外と
難しいと思います。
そう考えると、国が平和で豊かな国になるための教養として歴史を学ぶのと同様に
経済学があってもいいのではないか?最近そう思うようになりました。