本当は相対湿度より絶対湿度に注意したいのだが・・・
人間が健康に暮らすには湿度の適正な管理は重要です。相対湿度が
80%以上になるとカビが生えやすくなりますし、40%を切ってくると
ウイルス等は伝染しやすくなります。ダニに関しては50%を超えると
出やすくなってはきますが、本格的に増え始めるのは60%を超えたあたり
からでしょう。
このような指標からよく室内の相対湿度は40%~60%が理想と言われてきました。
しかし、実際には快適な室温状態の中では冬は40%、夏は60%を保つのが
やっとではないかと思います。
しかし、この相対湿度というのが非常にくせものです。
つい先日のブログにも書きましたが、まず機械によって非常に誤差が大きい。
私の身の回りにあるあらゆる湿度計は同じ条件でも15%も前後するくらいです。
しかも、仮に正確な湿度計があっても上下温度差があれば、設置する高さに
よって相対湿度は大きく変わります。10%程度は平気で変化します。
しかし、実際に人間の生理現象にもっと密接に関わっているのは絶対湿度
であるように思います。これは空気1立米もしくは1kgあたりに何グラムの水
が含まれているかを示すものです。これが日本の冬であれば5gを切ることも
珍しくないですし、夏であれば20gを超えることもあります。
しかし、一般的にインフルエンザが伝染しやすくなるのは9g/kg(11g/立米)以下という医学の
世界での調査結果があります。また、喉の粘膜が乾き始めるのは9g/kg以下だという
ことが「湿度と人間」という本に書かれています。このふたつの数字が同じなのは、粘膜が
乾くと、ウイルスに対する抵抗力が弱くなることを意味しているのかもしれません。
ちなみにこの9gに基づいているのが三菱製の加湿器で9gを保つような「のど」モードが
ついているものがあります。
しかし、この9gというのもなかなかの曲者だということを私の知人でおそらく日本で一番
温熱環境に詳しい一般人であるHさんに教えてもらいました。冬場9gを保つのは実は
なかなか大変なんです。室温が20℃なら61.6%も必要となります。ちなみに18℃なら
69.7%も必要です。
こうなってくると先述のダニの生息域とだぶってきます。その矛盾をなんとかできないかと
Hさんは考えたらしく、家族や友人に対するアンケート調査から絶対湿度が何グラム以下なら
喉の渇きを覚えないかということを調査されたそうです。その結果が7gでした。
7gで再度計算してみたいと思います。
21℃ 45.1%
20℃ 48.0%
19℃ 51.1%
18℃ 54.4%
となります。
これ以下の室内温度は推奨しないので書きませんが、イギリスで定義されている健康な
温度は21℃以上となっているので、これからすると、「21℃、相対湿度45%」
というのが冬の究極の目標値といってもいいかもしれません。
別の観点からも見てみたいと思います。
カビが生え始める80%と絶対湿度7gを両立させようとすると室温は何度以上なければ
ならないのか?というものです。
計算してみると12℃以上が必要となります。
ではダニが本格的に増え始める60%にしてみると
17℃以上が必要となります。
こう考えると、「理想的な湿度環境を維持しながら
カビと共存しないためには室温は12℃以上は必要である。」
「理想的な湿度環境を維持しながらダニと共存しないためには
室温は17℃以上必要である。」
という逆説的な考え方もできます。
こう考えると、本当に理想的な湿度環境を安い光熱費と同時に実現することが
いかに重要で、かつ難しいかということがわかってもらえるかと思います。