今の日本では電気自動車の省エネ性能はハイブリッドカーと変わらない
今の日本では電気自動車はハイブリッドカーと変わらない・・・
松尾和也·2016年11月4日(金)
何度も書いてきましたが、もうすぐトヨタからプリウスのプラグインハイブリッドが発売されます。一昨日は日産からエンジンを発電機としてしか使わないタイプの電気自動車(ハイブリッドカー)も発売されました。ハイブリッドカーが主力だった時代からもう一段先に進もうとしている、まさに途中経過の段階と言えるでしょう。
ここで車雑誌はネットでもほとんど書かれることがない重要な事実を書いておきたいと思います。殆どの方は「電気自動車はCO2を排出しない」と思っているかもしれませんが、決してそんなことはありません。充電器の元をたどれば、地元の電力会社にいくわけで、結局そこでは石炭、ガス、石油が燃やされて発電が行われています。自動車本体でガソリンを燃やすか、発電所まで遡ってもやすかというただ、それだけの違いです。
では電気自動車には全く意味がないのでしょうか?
ということで、最近の講演でたまに話している内容をまとめてみます。
まず日本の一般家庭の標準的な車の利用は13km/Lの車で年間1万kmという状況だそうです。
この状況での一次エネルギー使用量が約27GJ。この話はおそらく講演で100回以上話してきました。
今現在最新型のプリウスに父が乗っているのですが、その実燃費はおよそ26km/L程度
ということは年間の一次エネルギー使用量は約13.5GJ
ここで電気自動車の代表である日産リーフを計算してみました。計算にあたりカタログ燃費で計算しても意味が無いので、ネット上でリーフオーナーが実燃費を公開しているサイトから平均を取りました。
その結果出てきた年間の一次エネルギー使用量はなんと13.5GJ!!
自分で計算してみて自分で驚きましたが、プリウスとリーフの燃費面での環境負荷は全く同じだったのです。あとはバッテリーの製造時のエネルギー等を考えるともしかしたらプリウスの方がエコと言える可能性すらあるのです。
しかしながら、同じ比較においてもこの2台をヨーロッパに持っていって比較すると事情が全く変わります。
例えばドイツですと発電所の燃料の約3割が風力や太陽光発電といった再生可能エネルギーになっています。この場合、プリウスは日本同様、車本体にてガソリンを燃やすことで走っているのですがリーフの場合、必要エネルギーの3割が再生可能エネルギーで賄われたことになります。当然その分CO2排出量も少ないわけです。
ということでヨーロッパではプラグインハイブリッド、電気自動車が日本以上の勢いでどんどん増えていっています。
日本では電気自動車と燃料電池自動車がしのぎを削っていることばかりがクローズアップされます。しかしいまのところ燃料電池自動車も結局はガスからの分離によって水素を作ることを前提としています。いずれにしてもこの2つの方式の環境メリットを引き出すにはもっと再生可能エネルギーを増やす必要があるといえそうです。
ただ、そうでなかったとしても副次的なメリットはあるといえます。電気自動車はフル充電しておけば一般家庭3日分くらいの蓄電はできます。災害時のバックアップ電源としては十分すぎるくらいの量です。また、将来、CO2の回収技術が発展した場合には一箇所でCO2を回収しやすいというメリットもあるでしょう。
とはいえ、こういった大局の検討がなされないまま業界が突き進んでいくのが日本の特徴だといつも思ってしまいます。