1. HOME
  2. コラム
  3. 危ない外観とは?雨漏りしやすい6つの形と耐久性の確認項目

危ない外観とは?雨漏りしやすい6つの形と耐久性の確認項目

危ない外観とは?雨漏りしやすい6つの形と耐久性の確認項目
外観の「危ない」は耐震ではなく雨漏りと湿気の話です。雨漏りしやすい6つの形、シーリングと雨仕舞いの違い、軒の有無と通気金物、見積前に聞くべき6項目を解説します。

この記事のポイント

  • ここでの「危ない」は構造ではなく雨漏りと内部結露の湿気。耐震の話ではない。
  • 住宅メーカーの営業・設計担当は99%が危ない形を理解していない。知るのは現場側。
  • シーリングは持って10年。雨仕舞いとは、水が物理的に入らない納まりのこと。
  • 入念に防水すると湿気の抜け道がなくなる。軒がない家では通気金物の防水性能が要る。
  • 結露計算による内部結露の検討をしていない住宅が99%。見積前に確認できる。

「危ない外観」とは何が危ないのか?

ここでの「危ない外観」とは、構造的に危ないという意味ではなく、雨漏りしやすい形、または内部結露した後の湿気が抜けにくい形のことです。耐震性の話ではありません。そして危ない形は、頻度・被害の程度・発見しやすさという3つの軸で評価されます。

プロでもこの目で見たことがある人は少ない

「戸建て住宅 外観」で画像検索すれば、さまざまな形が並びます。かっこいいかどうかは誰でも判断できますが、どの部分が耐久性を落とすのかという目で見た経験がある人はほとんどいません。

そしてこれは一般の住まい手に限りません。プロでもこの視点を持っている人は非常に少ないと松尾は述べています。学ぶ機会がないためです。一級建築士の試験にも出ず、大学の建築学科でも習わず、会社の先輩や上司も教えてくれません。

評価は3つの軸で行う

2021年に、住宅の耐久性を実務レベルで扱った専門書が発売されました。松尾もこの本の執筆陣の一人です。執筆陣には雨仕舞いの研究者、大手住宅メーカーの研究所、水切り金物のメーカー、雨漏り調査の専門会社、大学の名誉教授、国の技術政策研究機関の担当者などが並びます。

この本では、危ない形が次の3軸で整理されています。

意味
頻度 そのタイプの問題がどれくらいの頻度で起こるか
被害の程度 実際に起こったときの被害の大きさ
発見しやすさ 被害が起こったときに気づけるかどうか

※パラペットのある勾配屋根は「頻度=低・被害=中・発見=非常に難しい」と評価されている。


どんな形が雨漏りしやすいのか?

雨漏りしやすい形とは、採用するなら細心の注意が必要になる、施工の難易度が高い形のことです。代表的なものが6つあり、なかでもパラペットのある勾配屋根は発見が非常に難しいという性質を持ちます。都会の狭小3階建てに多い形です。

6つの形とその理由

起きること
両側に壁がない横並びの窓 頻度=中、被害=中、発見=難しい
曲面の中にある窓 水切りと水切りの間の止水処理が不完全になりやすい
パラペットのある勾配屋根 頻度=低、被害=中、発見=非常に難しい。都会の狭小3階建てに多い
壁と屋根の際 防水紙を切れ目なく連続させる施工が非常に難しい
ルーフバルコニー 専門家が「できる限りやめておきなさい」と言う対象
煙突・トップライト 雨漏りのリスクが非常に高い

※形そのものが禁止という話ではなく、難易度が高い形という位置づけ。

ルーフバルコニーをやるなら3点を守る

松尾自身も、ここに挙げた形状を採用することがあります。違いは注意の払い方です。問題は、危ないという自覚がないまま、特別な注意も払わずに施工してしまう場合です。その結果、起こるべくしてトラブルが起こります。

ルーフバルコニーを採用する場合の要点は3つです。

  • 笠木の上に穴が開かないようにする
  • 手すりなどの取り付け部にもできるだけ穴を開けない
  • 窓の下端まで最低でも12センチ以上の高さを確保する

会社ごと・担当者ごとに「癖」がある

パラペットのある勾配屋根のように、会社や設計担当者によって採用の頻度が大きく違う形があります。やる人は頻繁にやり、やらない人はまったくやりません。地域差もあり、都会の狭小地では多く、田舎に行くほど少なくなります。


なぜ営業や設計担当は止めないのか?

営業や設計担当が止めない理由とは、どんな形が危ないかを99%が理解していないことです。理解しているのは現場の監督・大工・アフターメンテナンスの担当者ですが、この人たちは裏方でお客様の前に出てきません。止めようとしても取り合われないこともあります。

知っている人が説明の場にいない

打ち合わせで応対するのは、メーカーでも工務店でも設計事務所でも、営業か設計の担当者です。この立場の人は現場にあまり行きません。

一方で、「この形をやったら雨が漏った」という経験を何度もしているのは、現場の監督・大工・アフターメンテナンスの部署です。こうした人は少なくないのですが、裏方の仕事のため住まい手の前にはほぼ出てきません。

さらに、現場側が設計担当に「この形はやめてほしい」と伝えても、「お客さんが望んでいるから」「今この形が流行っているから」で取り合われないことが結構あるといいます。知識が組織の中で移動しない構造です。

大手と工務店で非対称になる

大手住宅メーカーでは、過去の事故のフィードバックが社内で共有されています。「この形でこの事故が起きた」という蓄積があるため、危ない形は禁止になっていることが多くなります。

結果として、担当者が理由を理解していなくても、その形は選べません。住まい手から見れば「工務店ならできたのに大手はできない、自由度が低い」と映りますが、裏を返せば安全が担保されているという見方もできます。

一方で工務店側は自由度が高く、「何でもできますよ」と言えます。その形が雨漏りや内部結露のリスクを抱えていても、事故が起きてから直すという順序になりがちです。

ただし優劣は一方向ではありません。工事中の雨養生では、優良な工務店の方が手を尽くしているケースがあります(後述)。


シーリングを打てば大丈夫なのか?

シーリングでは足りない理由とは、シーリングは持って10年であり、そもそも雨仕舞いではないことです。雨仕舞いとは、重ね合わせによって水が物理的に入らないよう仕組まれた納まりのことです。物理的に無理のある形は、年数が経てば漏れる可能性が高くなります。

シーリングと雨仕舞いは別のもの

手段 性質
シーリング 接着剤のような材料で塞ぐ。寿命は10年程度。材料が劣化すれば防水性を失う
雨仕舞い 重ね合わせで水が入らないよう物理的に仕組まれた納まり。そのものがなくならない限り防水性が途切れない

※「シーリングを打つから大丈夫」という説明は、雨仕舞いの説明にはなっていない。

つまりシーリングは雨仕舞いとは言いません。上から流れてきた水が構造上入らないように重ねを取る、というのが雨仕舞いです。物理的に無理がある納め方は、年数が経つほど漏れる確率が上がります。

建てる側に「雨漏りのプロ」はいない

ここに構造的な問題があります。設計者は設計のプロ、監督は現場管理のプロ、インテリアコーディネーターはインテリアのプロ、営業は営業のプロです。しかし雨漏りのプロは、この中に誰もいません。

雨漏りのプロと言えるのは、雨漏り調査を専門にしている会社の人か、雨仕舞いの研究を何十年も続けてきた研究者だけです。だから多くの場合、漏れてから初めて「どこが悪かったのか」を調べるという順序になります。

だから雨仕舞いは、建てる側の誰の専門でもないまま進むことになります。


入念な防水がなぜ湿気を閉じ込めるのか?

入念な防水が湿気を閉じ込める理由とは、雨水を止める工夫がそのまま湿気の出口をふさぐからです。屋根の防水紙をかぶせれば水は入りませんが、湿気の抜きどころがなくなります。解決には通気性能と防水性能の両方を備えた通気金物が必要になります。

防水と通気は同時に追えない

屋根の防水紙(ルーフィング)は、理想的にはかぶせるのがよい施工です。かぶせれば上から流れてきた水は中に入らず流れていきます。

ところがかぶせることで、雨水は入りにくくなる代わりに、湿気の抜きどころがなくなります。水を止めるほど湿気が閉じ込められるという矛盾です。

解消手段は1つです。通気性能がしっかりしていて、かつ防水性能もしっかりしている通気金物を使うこと。防水性能の低い通気金物では、通気は取れても台風のときに雨が入ります。

軒があるかどうかで結果が変わる

条件 台風時の挙動
軒がしっかり出ている 普通の通気金物でも水が入ることはほとんどない。軒が家自体を守る
軒ゼロ 通気性だけを考えた金物では水が入ってくる

※軒の出がない場合は、金物の選定に相応の注意が必要になる。

ここまで意識している設計者は、100社に5社あればいい方だと松尾は述べています。当初「100社に1社」と言いかけて、言い過ぎかと考えて緩めた数字です。いずれにしても、軒ゼロの意匠を選ぶこと自体が、金物の選定という別の判断を呼び込むという関係になります。


見積前に確認すべき項目は何か?

見積前に確認すべき項目とは、軒の出、屋根の形、ルーフバルコニーの床下換気、通気経路、結露計算、工事中の雨養生の6点です。とくに結露計算による内部結露の検討をしていない住宅は99%にのぼるため、聞くだけで会社の姿勢が分かります。

6つの確認項目

項目 現状の問題点
軒・けらばの出 出がない場合、金物の選定に注意が必要
屋根の形 寄棟・方形は通気できる部分が点しかなく、空気が抜けにくい
ルーフバルコニーの床下換気 換気させている工務店は100社に1社あればいい方
通気経路 通気層はあっても経路が確保されていない住宅がある
内部結露 結露計算による検討をしていない住宅が99%
工事中の雨養生 濡らしたまま施工を進めると躯体が腐る

※みんなの住宅研究所が公開している推奨仕様リストでは、10項目それぞれに問題点・推奨レベル・理想レベルの3段階が示されている。

方形屋根は上から見て正方形で、頂部が点になります(ピラミッドのような形)。寄棟も4方向から寄せる形です。どちらも通気できる部分が点しかないため、異常に空気が抜けにくくなります。

通気層については、2000年代初頭より前はほとんどありませんでした。表面が劣化してヒビが入れば水が入る状態です。それ以降はほとんどの住宅が通気工法になりましたが、通気層を設けても経路が確保されていない例があります。

目に見えない差が10年後20年後に出る

ルーフバルコニーの床下換気は、松尾がほぼ見たことがないという項目です。一方で大手住宅メーカーがルーフバルコニーを採用する場合はきちんと処理しているのではないかと述べています。こうした目には見えないが10年後20年後に差がつく部分では、大手住宅メーカーと工務店にまだ大きな差があるという評価です。

工事中の雨養生は逆の関係になる

ここは大手が有利とは限りません。工事中に雨でびしょびしょに濡らしたまま、とくに屋根の施工を進めると、躯体が腐ってくることが非常に多いとされています。松尾たちも実験で確認しています。

優良な工務店は施工中に雨に濡れないようブルーシートで覆います。一方で大手メーカーの方が「濡れても大丈夫」として平気で濡らしているところが多く、これはリスクが高いという指摘です。この項目に限れば、会社の規模から対応を判断することはできません。

まとめ:外観は好みの前に雨仕舞いで確認する

確認の順序は次の3点です。

  1. 「危ない」の意味を取り違えない —— 耐震ではなく雨漏りと湿気。評価軸は頻度・被害・発見しやすさ
  2. 難易度の高い形を選ぶなら注意の払い方を聞く —— 形の禁止ではなく、自覚があるかどうかが分かれ目
  3. 6項目を見積前に聞く —— 軒の出・屋根の形・ルーフバルコニーの床下換気・通気経路・結露計算・雨養生

まず「結露計算で内部結露を検討していますか」と聞いてみてください。99%の住宅で行われていない項目なので、この一問で会社の姿勢が見えます。そのうえで、選びたい外観に難易度の高い形が含まれるかを確認してください。

▶ 動画を見る

よくある質問

Q 「危ない外観」とは耐震性が低いということですか?
A
違います。ここでの「危ない」は雨漏りしやすい形、または内部結露した後の湿気が抜けにくい形という意味で、耐久性の話です。構造や耐震性の評価とは別の軸です。同じ外観でも、雨仕舞いの納まりと通気の確保で結果が変わります。
Q どんな形が雨漏りしやすいのですか?
A
代表的なものが6つあります。両側に壁がない横並びの窓、曲面の中の窓、パラペットのある勾配屋根、壁と屋根の際、ルーフバルコニー、煙突とトップライトです。いずれも採用するなら細心の注意が必要になる、施工の難易度が高い形です。
Q シーリングを打てば雨漏りは防げますか?
A
防ぎきれません。シーリングの寿命は10年程度で、そもそも雨仕舞いとは別のものです。雨仕舞いとは重ね合わせによって水が物理的に入らないよう仕組まれた納まりで、材料が劣化しても防水性が途切れません。物理的に無理のある形は年数が経つほど漏れます。
Q 軒がない家はやめた方がいいですか?
A
軒の出がない場合は、通気金物の選定に注意が必要になります。軒が出ている住宅は普通の通気金物でも台風時に水が入ることはほとんどありませんが、軒ゼロで通気性だけを考えた金物を使うと水が入ります。意匠と金物選定はセットの判断です。
Q 大手ハウスメーカーの方が耐久性は安心ですか?
A
項目によります。危ない形は過去の事故の蓄積から禁止されていることが多く、ルーフバルコニーの床下換気もきちんと処理されているのではないかと松尾は見ています。一方で工事中の雨養生については、優良な工務店の方が手を尽くしているケースがあります。
Q 見積前に何を聞けばいいですか?
A
軒の出、屋根の形、ルーフバルコニーの床下換気、通気経路、結露計算、工事中の雨養生の6点です。とくに結露計算による内部結露の検討は99%の住宅で行われていないため、この質問だけでも会社の姿勢が分かります。