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日射・間取り

狭小地でも日当たりは取れる?23坪・26坪の実例で見る設計の解き方

狭小地でも日当たりは取れる?23坪・26坪の実例で見る設計の解き方
日当たりの良い土地は買えない、という相談は少なくありません。この記事では、南隣が絶壁のように建つ23坪の敷地、南北に細長い敷地、車2台を求められた26坪の変形敷地という3つの実例で、松尾設計室が日射をどう確保したかを解説します。

この記事のポイント

  • 隣家が影を落としにくい敷地ほど有利なのは事実。ただし難しい敷地ほど設計者の差が出る。
  • 設計は敷地を読み抜くところから始める。敷地には隣家を含め、正確な方位で読む。
  • 1階に光が入らないなら2階リビング。将来に備えて幅広の階段にし、昇降機を付けられるようにする。
  • 明るさはハイサイドライトで取る。天窓は夏が暑く雨漏りしやすいため最終手段にする。
  • 日射は光の側面と熱の側面を分けて考える。冬は両方入れ、夏は光だけ入れて熱は止める。

目次

  1. 敷地条件が悪いと日射は諦めるしかないのか?
  2. 南隣が絶壁の23坪はどう解いたのか?
  3. 南北に細長い敷地はどう解いたのか?
  4. 26坪の変形敷地に車2台をどう収めたのか?
  5. 日射の「光」と「熱」はなぜ分けて考えるのか?

敷地条件が悪いと日射は諦めるしかないのか?

敷地条件と日射の関係とは、条件が良いほど日射を取りやすいのは事実である一方、条件が悪い敷地ほど設計の巧拙が結果を分けるということです。隣家が影を落としにくい敷地が有利なのは間違いありませんが、悪条件だから諦めるという結論にはなりません。

松尾設計室が設計を始める順序

松尾設計室では、設計を必ず同じ順序で進めます。外観の形から入ることはほとんどありません。

順序 やること 補足
1 敷地を読み抜く 敷地には隣家を含める。空き地なら建築基準法上で建てられる最悪の建物が建った前提で読む
2 等時間日影図を作る 込み入った敷地のみ。作っても示唆が得られないと分かる場合は作らない
3 施主に2時間かけてヒアリングする 要望は施主ごとにまったく違う
4 平面を決める 1〜3の結果として形が決まる
5 立面を整える 素直に立面化するとたいてい不細工になるため、そこから美しく整える

耐久性や構造を無視してまで美しいデザインを優先することは絶対にしません。これが松尾設計室の決まりです。

誰に頼むかで解ける範囲が変わる

難しい敷地を解けるかどうかは、依頼先の性質によっても変わります。建築家は条件の厳しい敷地を解くのがうまい一方、断熱がおろそかになっていることが多くあります。工務店は自由度が高いものの、難しい条件を解くのは苦手な人が多いのが実情です。

住宅メーカーは、設計がうまい人がいても社内規定や各種の制約が多く、やりたくてもできない場面が増えます。狭小地では1センチ単位の調整が必要になりますが、規格化された仕組みでは45センチ単位までしか動かせないこともあります。設計の自由度と断熱を高い次元で両立できる人は、ごく一握りというのが松尾の見方です。

「家は3回建てないと満足しない」への反論

3回建てないと満足しないと言われる理由は2つあると松尾は考えています。設計者の腕が足りないことと、施主側の要望の密度が低すぎることです。この2つが欠けたままなら、3回建てても満足のいく家にはなりません。松尾は施主にも社員にも、110点から120点を目指して設計し、結果として85点をもらえればよいと伝えています。


南隣が絶壁の23坪はどう解いたのか?

23坪の敷地の解き方とは、車庫で1階が埋まる敷地に対し、2階を持ち出して面積を稼ぎ、2階リビングを北側に寄せて日射を取るという手順です。南隣が2階建てで壁のように建ち、外壁どうしの距離は60〜70センチしかありませんでした。

車庫を入れると1階に何も残らない

大阪の敷地で、東側と北側が道路、南側に隣家が迫る条件でした。車庫を1台分取ると1階にはほとんど何も残りません。そこで2階を約900ミリ、ほぼ1メートル持ち出すことで面積を確保しました。3階建てにはせず、2階建てで収めています。

条件 内容 採った手
敷地面積 23坪 2階を約900ミリ持ち出して面積を確保
南隣との距離 外壁間で60〜70センチほど 1階での日射取得を断念
吹抜けの可否 作っても日が入らない 2階リビングに変更
屋根の流れ 南に寄せると影になる 北側に寄せ、屋根を北に流した(日射を優先)
庭 地面に庭が取れない バルコニーを庭代わりに。6畳相当

屋根は通常、太陽光発電を載せるために南へ流すことが多くなります。この住宅では日射を優先し、北へ流しました。

明るさはハイサイドライトで取った

2階の明るさは、高い位置に設けたハイサイドライトで確保しています。バルコニーには庇が出ており、10対3の比率よりもう少し出た寸法で日射遮蔽ができています。竣工は2011年から2012年頃で、当時はまだ外付けの可動式日射遮蔽装置がなかったため、よしずを立てかけるよう助言しました。

玄関は北面ですが、あえて大きな窓を設けました。薄暗い玄関にはしたくないという判断です。熱の損得だけで毎回すべてを決めるわけではないという点は、実務では重要になります。限られた面積を使い切るため、畳の下を上げ床にして収納にもしています。

この住宅の施主は、以前の住まいでは日中もずっと照明をつけていました。完成した家に入った瞬間、明るさに驚かれたといいます。


南北に細長い敷地はどう解いたのか?

南北に細長い敷地の解き方とは、構造の工夫で南面に大開口を確保しつつ、1階を諦めて2階リビングにするという組み合わせです。都会ほどこの形の敷地は多く、南に窓を取ろうとすると構造と干渉して成立しないことがあります。

三方が建て込んでいて1階には光が入らない

この住宅は、老後を夫婦2人で暮らすための家でした。隣地に高齢の母が住む実家があり、最後まで見守りたいという事情から同じ敷地に建てています。西側には民家が大きく迫っていました。

南東・南・南西のすべてに家が建っており、1階に南の光を入れることは不可能でした。要望も大きく、民法上の50センチをぎりぎりまで使わなければ満たせない条件です。1階で日が取れる限られた場所には、ウォークインクローゼットと寝室を配置しました。

大開口と耐震等級3を両立させる

大きく梁を飛ばした大空間でありながら、この住宅は耐震等級3を確保しています。自由な空間と構造の強さは両立できます。

課題 手段 費用の目安
南面に大開口を取りたい 特殊工法を使う 100万円から200万円程度上がることがある
費用を抑えて大開口を取りたい 在来工法のまま、455ミリ幅でも取れる耐力壁の製品を使う 抑えられる
2階リビングの将来の不安 幅広の階段にして昇降機を付けられるようにする 昇降機は折りたたみ可
同上(エレベーター) ホームエレベーター 300万円から400万円

2階リビングは将来の足腰が不安視されますが、階段に昇降機を設ければ対応できます。折りたたんでも上り下りしやすいよう、あらかじめ幅広の階段にしておくのが要点です。


26坪の変形敷地に車2台をどう収めたのか?

26坪の変形敷地の解き方とは、斜線制限で低くなる部分を収納に割り当て、窓を置ける場所を1つずつ拾っていくという進め方です。神戸市内で設計は2009年末に始まり、竣工は2011年でした。両側から道路斜線がかかる、条件の厳しい敷地です。

四角い26坪より変形した26坪のほうが難しい

同じ26坪でも、変形している敷地のほうが扱いにくくなります。この敷地は南側に道路があり、さらにその上にもう1本道路が通っているため、両側から道路斜線がかかる条件でした。施主は車を好み、インナーガレージを1台分と、もう1台の小さな車を置くスペースを求めていました。

制約 内容 採った手
隣に3階建て その側に窓を設けても明るくならない ガレージの上に細長い窓を取って明るさを確保した
玄関が薄暗くなりやすい 開口を取れる面が限られる 玄関脇にも窓を設けた(建築家がよく使う手法)
2階リビングの窓 大きく取ると隣家と目線が合う 大きなバルコニーを設け、その前にすりガラスを立てた
両側からの道路斜線 3階の一部で天井高が非常に低くなる その部分を子供部屋のクロークに割り当てた
敷地が斜め 立面が不細工になった バルコニーも斜めにし、梁を上下とも持ち出した。耐震等級3をクリア

すりガラスを使うことで、光は取り込みながら視線は遮っています。小さな窓にも小庇を付け、日射遮蔽を細かく効かせました。車庫については日射遮蔽を割り切っています。


日射の「光」と「熱」はなぜ分けて考えるのか?

光と熱を分ける理由とは、季節によって欲しいものが変わるからです。冬は光も熱も両方取り込みたい一方、夏は光だけを暗くない程度に入れて熱は入れたくないという、相反する条件を同時に満たす必要があります。

光だけを見た設計は夏に破綻する

建築家は光の扱いが非常にうまい一方で、熱の側面を見ない人が多いと松尾は指摘します。光を上手に扱うことだけに力を注いだ結果、夏に暑くて耐えられない住宅が生まれます。松尾のもとには、どれだけ大きなエアコンを最強で回しても暑くてたまらないので助けてほしいという相談が、そうした物件から何度も寄せられています。

天窓は最終手段、明るさはハイサイドライトで取る

手段 明るさ 夏の熱 雨漏りリスク 松尾設計室の扱い
ハイサイドライト 十分に取れる 庇や壁で制御できる 通常の窓と同等 標準的な手段
天窓 簡単に明るくなる 非常に暑くなる 他の窓よりかなり高い確率で漏る 日射が確保できないときの最終手段。使うなら北側の中央部2箇所だけ

天窓を使えば簡単に明るくなりますが、夏の暑さは大きくなります。松尾は実家が天窓のある家だったため、その性質をよく知っています。過去には天窓の雨漏りで施主に迷惑をかけた経験もあり、北側の中央部に2箇所までという決まりを設けています。

高い位置に窓を設けるハイサイドライトなら、壁や庇で日射を制御しながら明るさを確保できます。23坪の実例でも、この方法で2階の明るさを確保しました。


図面で確認する具体的な項目は、間取りの良し悪しを日射で見分ける方法にまとめています。

延床が小さい家の快適さについては、よくある質問のコンパクトな家でも快適に暮らせますか?で説明しています。

まとめ:悪条件ほど設計者の差が出る

条件の悪い敷地で日射を確保する手順は次の4点です。

  1. 敷地を隣家ごと読み抜く —— 空き地なら最悪の建物が建った前提で検討する
  2. 1階に光が入らないなら2階へ上げる —— 吹抜けで足りるかを先に判断する
  3. 明るさはハイサイドライトで取る —— 天窓は夏の熱と雨漏りの代償が大きい
  4. 光と熱を分けて考える —— 冬は両方入れ、夏は光だけ入れて熱は止める

土地を探している段階なら、候補地の写真を持って設計者に相談してみてください。難しい敷地を見たときに解き方が出てくるかどうかが、実力を測る材料になります。

▶ 動画を見る


よくある質問

Q 狭小地や日当たりの悪い土地では明るい家は諦めるしかないですか?
A
諦める必要はありません。条件が良い敷地のほうが有利なのは事実ですが、悪条件ほど設計で差がつきます。南隣が壁のように建つ23坪の敷地でも、2階を持ち出して面積を確保し、2階リビングを北側に寄せることで明るさを確保した実例があります。
Q 2階リビングにすると将来困りませんか?
A
階段に昇降機を設ければ対応できます。昇降機は折りたたみができるため、あらかじめ幅広の階段にしておけば、設置後も上り下りしやすくなります。ホームエレベーターは300万円から400万円かかるため、階段の幅で備えておく方法が現実的です。
Q 南北に細長い敷地で南に大きな窓は取れますか?
A
構造の工夫が必要です。特殊工法を使うと100万円から200万円程度上がることがあります。在来工法のまま、455ミリ幅でも取れる耐力壁の製品を使えば費用を抑えられます。大きく梁を飛ばした空間でも耐震等級3は確保できます。
Q 天窓をつければ明るくなりますか?
A
明るくはなりますが、夏の暑さが大きくなり、他の窓よりかなり高い確率で雨漏りします。松尾設計室では、日射がどうしても確保できないときの最終手段とし、使う場合も北側の中央部2箇所までと決めています。まずはハイサイドライトで検討します。
Q 隣家と目線が合う場合はどうすればいいですか?
A
大きなバルコニーを設け、その前にすりガラスを立てる方法があります。26坪の変形敷地の実例ではこの方法を採り、光を取り込みながら視線を遮りました。別の実例である23坪の住宅では、壁の高さを上げることで隣家の窓との視線を切っています。
Q 設計者に最初に何を確認すればいいですか?
A
敷地を読み抜くところから始めているかを確認してください。敷地には隣家を含みます。空き地が隣接する場合は、建築基準法上で建てられる最悪の建物が建った前提で検討しているかが分かれ目です。松尾が数百人の設計者を指導してきたなかでも、ここから始める人はごくわずかです。