1. HOME
  2. コラム
  3. 間取りの良し悪しを日射で見分ける方法|図面で確認する10項目
日射・間取り

間取りの良し悪しを日射で見分ける方法|図面で確認する10項目

間取りの良し悪しを日射で見分ける方法|図面で確認する10項目
住宅会社から受け取った図面を、間取りの好みではなく日射の観点で採点する方法があります。この記事では、松尾設計室が設計指導で使っている10項目のチェックリストを、図面のどこを見れば判断できるかという順に解説します。読み終えれば、手元の図面を自分で確かめられます。

この記事のポイント

  • 太陽に素直な設計を外すと、暑く・寒く・冷暖房費が高い家になる。好みより先に見るべき点。
  • 図面に正確な方位と隣家があるかをまず見る。日影図まで検討している工務店は1〜2%程度。
  • 南からの振れは20度程度以内が理想。南から45度も東へ振れたら、それは東の窓と考える。
  • 東西面の窓は1面0.5平米以下が目安。大きくする例外は1箇所、多くても2箇所まで。
  • 日射遮蔽は外付けで約8割、室内側は約4割。南側に遮熱Low-Eを使うと冬の暖房費が上がる。

目次

  1. なぜ間取りは日射で判断すべきなのか?
  2. 図面で確認する10項目とは?
  3. 敷地と配置はどこを見ればいいのか?
  4. 建物の形と窓はどう決めればいいのか?
  5. 居室はなぜ南に配置すべきなのか?

なぜ間取りは日射で判断すべきなのか?

日射で間取りを判断する理由とは、太陽に素直な設計を外すと、断熱性能をいくら上げても暑く寒く、冷暖房費が高い家になるからです。家事動線やリビングの広さは好みで判断できますが、日射だけは図面の見方を知らないと判断できません。

好みで判断できることと、できないこと

図面を受け取ったとき、家事動線が短いほうがよい、リビングは広いほうがよい、吹抜けがあったほうがよい、という見方は誰でもできます。自分の好みに照らせば済むからです。

しかし日射は違います。太陽に素直な設計を失敗すると、確実に暑く、寒く、冷暖房費が高くなります。しかもその差は建てた後では取り返せません。住宅は最低でも30年から40年は使うものであり、今の状態だけに最適化するのは危険です。

図面の良し悪しは比べれば分かる

1社の図面だけを見ていても、その良し悪しは判断しにくいものです。絶対評価は難しくても、何社かの図面を見比べれば差はすぐに分かります。

松尾はこれまで数百人以上の設計者を指導してきました。指導の場では、まず車の置き方を9パターン考えてもらうところから始めます。そこまで解きほぐさないと、身についた間取りの作り方の癖は抜けないからです。

また、日本エコハウス大賞の審査員も5年間務めています。


設計の考え方そのものは、よくある質問の「太陽に素直な設計(パッシブデザイン)」とはどういう意味ですか?で説明しています。

図面で確認する10項目とは?

図面で確認する10項目とは、敷地と配置・建物の形と窓・居室の位置という3つの層に分けたチェックリストのことです。上の層ほど効き目が大きく、下にいくほど設計者の腕の差が出ます。順番に上から確認していきます。

# 確認する項目 どこを見るか
1 南側の隣家との離隔距離が可能な限り大きく取れているか 配置図。見ただけで分かる
2 等時間日影図または3次元ソフトで日影を検討しているか 検討資料の有無
3 平面図に正確な方位と隣家が書かれているか 平面図・配置図
4 リビングの前に庭が取れているか、車庫になっていないか 配置図
5 南からの振れ角度が20度程度以内に収まっているか 方位記号と建物の向き
6 南が更地の場合、最悪の建物が建っても日射が取れるか 検討資料の有無
7 外周形状が少し東西に細長い長方形になっているか 平面図の外形
8 東西面の窓が1面0.5平米以下に収まっているか 窓の寸法表
9 同じ面積なら大きな窓を少ない数にしているか 立面図
10 居室が可能な限り南に配置されているか 平面図の部屋割り

項目1と3は資料を見るだけで判断できます。大半の住宅会社は項目1ができていません。項目2まで行っている会社は、技術力がある可能性が高いと考えてよいところです。


敷地と配置はどこを見ればいいのか?

敷地と配置の確認とは、方位・隣家・日影という3つの情報が図面に載っているかを見ることです。この3つが揃っていない図面では、太陽に素直な設計ができているかどうかを誰も判断できません。判断材料そのものが存在しないからです。

方位が書かれていない図面が非常に多い

平面図に部屋名と窓の位置だけが書かれ、そこで終わっている図面は少なくありません。配置図でも構わないのですが、敷地に対して建物がどう配置されているか、そして正確な方位が必要です。方位が書かれていても45度単位という図面もあります。

隣地境界線も道路も隣家も方位もない平面図を持ってきて、日射を考えた設計になっているかを見てほしいと言われても、判断のしようがありません。田んぼの真ん中に建てるなら建物単体で判断できますが、そうした敷地はごくわずかです。

建築士の4〜5割は「どこが明るいか」を答えられない

等時間日影図はフリーソフトで作成できるため、小さな工務店でも費用をかけずに検討できます。それでも実際に検討している会社はごくわずかです。

確認項目 実施している割合
南側隣家との離隔距離を確保している 大半の住宅会社ができていない
等時間日影図・3次元ソフトで日影を検討している 工務店の1〜2%程度
図面を見て「どこが明るいか」を答えられない建築士 約4〜5割

方位の見方にも注意が必要です。南に向いているように見えても、南から45度も東へ振れていればそれは東と考えたほうが正確です。振れ角度は20度程度以内が理想で、少なければ少ないほど有利になります。

南が更地なら「最悪の建物」を建てて検討する

新しい分譲地では、周囲がまだ1軒も建っていない状態で設計することがあります。ここで南側に庭を取らず北側に庭を配置すると、南に家が建った瞬間に暗くなります。

松尾設計室では、建築基準法上で建てられる最悪の建物が周囲に建ったと仮定して入力し、その状態で日影を検討します。更地でなくても同じです。南隣が平屋であっても、将来2階建てや3階建てになる可能性を織り込んでおきます。


太陽の動きそのものは、日射取得とは?冬至・夏至の太陽の動きで扱っています。

建物の形と窓はどう決めればいいのか?

建物の形と窓の原則とは、外周をできるだけ小さくまとめ、東西面の窓を絞り、南面に日射を集めることです。同じ面積・同じ断熱性能でも、形と窓の取り方だけで冷暖房費は変わります。順序としては外形を先に決め、そのうえで窓の大きさを決めます。

少し東西に細長い長方形が有利

平面で見たとき、外周が最も短くて済むのは正方形です。そこから少し東西に細長くすると、熱損失が少ないまま南面の窓を多く取れます。立面では、1階の面積が2階より大きくなるほど工事費も暖房費も高くつき、総2階に近づくほど熱損失が減ります。

形状 工事費 熱損失 南の窓
少し東西に細長い長方形+総2階に近い形 最も有利 少ない 多く取れる
正方形 有利 外周が最短 標準
凹凸が多い形 高い 多い 自分の影が落ちる

凹凸は工事費と熱損失を増やすだけでなく、雨漏りのリスクも高めます。南側の凹凸は日射取得量を減らし、北側の凹凸は室内の温度ムラを大きくします。数値シミュレーションでは、UA値とC値がまったく同じでも、凹凸の付け方だけで冬の暖房負荷が約7%変わりました。

南面に袖壁を出して屋根を掛けるデザインも増えていますが、袖壁の近くに窓を置くと午前中は自分の建物が影を作ります。窓は袖壁から離した位置に寄せるほうが有利です。

東西面の窓は1面0.5平米以下が目安

位置 目安 対処
東西面 1面あたり0.5平米以下 超えるなら庇か外付けの遮蔽をつける
東西面を大きくする例外 1箇所、多くても2箇所 アウターシェード・外付けブラインドが必須
室内側の遮蔽(カーテン等) 日射熱の約4割しか切れない 外付けなら約8割
南面のガラス 断熱Low-E 遮熱Low-Eにすると冬の暖房費が上がる

0.5平米は、幅400ミリ・高さ1100ミリの縦すべり窓が1つ入る程度です。5月と10月の通風に必要な最低限という考え方で、この基準を守れている住宅はほとんどありません。この大きさなら、西日が当たったときの日射取得による熱量は50ワット程度に収まります。

遮熱Low-Eを使っているから大丈夫という説明には注意が必要です。日射取得量は日射取得率と面積の掛け算で決まるため、面積が大きくなれば遮熱の効果は帳消し以上になります。逆に南面に遮熱Low-Eを使うと、冬に取り込めるはずの熱まで切ってしまいます。

同じ面積なら大きな窓を少ない数にする

窓は枠とガラスに分かれます。枠はガラスより断熱性能が低く、しかも日射を取り込めません。同じ面積を小さな窓に分けると枠の総量が増え、熱損失が増えます。外壁と窓の取り合いも増えるため、雨漏りのリスクも上がります。大きな窓のほうが単価も下がるため、工事費・冷暖房費・雨漏りのすべてで有利になります。


居室はなぜ南に配置すべきなのか?

居室を南に配置する理由とは、家の中で滞在時間が最も長い場所だからです。納戸やトイレにこもっている時間は短く、そこに南面を割り当てると1日のほとんどの時間で日射の恩恵を受けられません。それでも南側に水回りや納戸を置いた図面は多く見られます。

北に居室を並べると法規上も苦しくなる

北側に居室を並べ、熱損失を抑えるために窓を小さくすると、部屋は明らかに暗くなります。ここで建築基準法の制約が効いてきます。居室には床面積の7分の1以上の窓が必要ですが、0.5平米の窓ではこれをクリアできません。つまり、北に居室を置いた時点でセオリーを破らざるを得なくなります。

居室を置く方位 日射取得 必要な対処
南 最も多い 構造が許す限り大きな窓を取る
東・西 北より多い 西を大きくするならアウターシェードが必須
北 最も少ない 床面積の7分の1の採光を確保しにくい

北と東西のどちらを選ぶかであれば、日射取得量の点で東か西のほうが有利です。ただし西面を大きくすると夕方の負荷が跳ね上がるため、外付けの遮蔽装置とセットで考える必要があります。

南が暖かいと生活のすべてが変わる

南側の居室が暖かければ、暖房の設定温度を必要以上に上げなくて済みます。冷暖房費が下がるだけでなく、明るさが変わり、照明をつけておく時間も変わります。小さなことに見えますが、滞在時間が長い場所に効くため、積み重なると差は大きくなります。


まとめ:図面は好みの前に日射で採点する

手元の図面を確認する順序は次の4点です。

  1. 方位と隣家があるか —— なければ判断材料そのものが存在しない
  2. 南側がどれだけ空いているか —— 離隔距離は見ただけで分かり、最も効き目が大きい
  3. 形と窓が絞れているか —— 東西面は1面0.5平米以下、同じ面積なら大きな窓を少ない数に
  4. 居室が南にあるか —— 滞在時間が最も長い場所に日射を割り当てる

次の打ち合わせで、図面のどこが1日で最も明るいかを設計者に聞いてみてください。即答できるかどうかが、日射を読んで設計しているかの分かれ目になります。

▶ 動画を見る


よくある質問

Q 図面のどこを最初に見ればいいですか?
A
方位と隣家が書かれているかを最初に確認してください。方位がない図面、あっても45度単位の図面は少なくありません。隣地境界線・道路・隣家・正確な方位が揃っていなければ、日射を考えた設計になっているかを誰も判断できません。
Q 等時間日影図を作ってもらうと費用がかかりますか?
A
作成に使えるフリーソフトがあるため、小さな工務店でも費用をかけずに検討できます。それでも実際に検討している会社は1〜2%程度です。検討しているかどうかは技術力を見分ける材料のひとつになるため、打ち合わせの段階で確認してみてください。
Q 南向きの土地でなければ諦めるしかないですか?
A
南からの振れ角度が20度程度以内に収まっていれば有利に設計できます。45度も振れると南西面や南東面になるため、アウターシェードなどの日射遮蔽が必須になります。敷地に対して建物を斜めに配置する方法もあり、太陽光発電の効率も上がります。
Q 東西の窓はどのくらいの大きさまでなら許容できますか?
A
1面あたり0.5平米以下が目安です。幅400ミリ・高さ1100ミリの縦すべり窓が1つ入る程度で、5月と10月の通風に必要な最低限という考え方です。この大きさなら西日による熱量は50ワット程度に収まります。超える場合は庇や外付けの遮蔽装置で対処します。
Q 遮熱Low-Eガラスを使っていれば安心ですか?
A
安心とは言えません。日射取得量は日射取得率と面積の掛け算で決まるため、面積が大きくなれば遮熱の効果は帳消し以上になります。また南面に遮熱Low-Eを使うと、冬に取り込めるはずの熱まで切ってしまい暖房費が上がります。
Q 窓は数を分けたほうが明るくなりますか?
A
同じ面積なら、大きな窓を少ない数にするほうが有利です。枠はガラスより断熱性能が低く日射も取り込めないため、数を分けると枠が増えて熱損失が増えます。外壁との取り合いも増えるため雨漏りのリスクが上がり、単価も高くなります。