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基礎断熱と床断熱はどちらが正解?シロアリ・結露・気密で比較

基礎断熱と床断熱はどちらが正解?シロアリ・結露・気密で比較
基礎断熱はシロアリに弱いのか、床断熱は結露しにくいのか。防蟻薬剤メーカーで5年間アドバイザーを務めた松尾が、3つの断熱工法を防蟻・結露・気密・工事費の4軸で整理します。

この記事のポイント

  • 床断熱が結露に強いのは1年目のみ。2年目以降は生涯にわたって基礎断熱の方が結露リスクが低い
  • 床断熱で気密が出ないのは、柱・給排水管・床下点検口という3つの貫通部があるため
  • 基礎外断熱は熱性能では3工法中もっとも有利だが、防蟻の研究者は一瞬でダメと判断する
  • 松尾設計室は基礎内断熱で200棟以上を施工。10年点検で見つかった不具合は漏水1件のみ
  • 基礎断熱の初年度はコンクリートから1トンの水分が出るため、その年だけ加湿が要らない

「太陽光はもう儲からない」に計算根拠はあるのか?

太陽光をめぐる判断の問題とは、計算できることを計算せずに結論だけが流通していることです。「買取価格が下がったから儲からない」「リスクがあるからやめたほうがいい」という主張のうち、計算根拠が示されているものはほとんどありません

計算できるところは計算する

チャンスもリスクも、計算できる部分と計算できない部分があります。計算できない部分は天に任せるしかありませんが、計算できるところを計算せずに結論を出してしまう例が非常に多いのが現状です。

自分の中でそう思うだけなら影響はありません。しかしそれを広めてしまうと、本来得られたはずの利益を逃す人が出ます。国全体で見れば、削減できたはずのCO2が削減されずに終わります。

この記事のゴールは「自分で結論を出せること」

以下では、松尾が実測してきた結果とほぼ一致する公開データをもとに、収支を組み立てていきます。目的は「載せるべき」と結論づけることではなく、読者が自分の条件で計算し直せる状態にすることです。納得できない数値があれば、その値を自分の想定に置き換えて再計算できます。これが「誰かが言っていたから」との決定的な違いです。


自分の都道府県ではどれだけ発電するのか?

太陽光の年間発電量とは、設置容量1kWあたりで表される値のことです。目安は年間約1,200kWhで、松尾が工務店を指導するときもこの数字を暗算の基準として教えています。都道府県によって差はありますが、ゼロになる地域はありません。

兵庫県と鳥取県で2〜3割の差

地域 1kWあたりの年間発電量
兵庫県 1,279kWh
鳥取県 1,055kWh
暗算用の目安 約1,200kWh

※全国の実測データを集計した公開値。パネルメーカーや方式によっても変動する。

この2県で2割から3割の差がありますが、同じシミュレーションサイトで計算すると差は11%まで縮まります。集計データのほうが差が大きめに出る傾向があるためです。

日本海側でも「発電しない」わけではない

「日本海側なので設置する意味がないのでは」という質問が多く届きます。確かに青森や秋田は兵庫県より少なくなります。しかし夏はしっかり晴れており、発電量がゼロに近づくような話ではありません。地域差は2〜3割の範囲で、判断を覆すほどの差ではないのが実測値から見えることです。


売電と自家消費、どちらが得なのか?

自家消費とは、発電した電気を売らずに自宅の冷蔵庫や給湯に使うことです。売れば20円、自宅で使えば28.4円の価値になります(いずれも2020年時点)。この逆転が起きた時点で、太陽光の運用は「いかに自家消費率を高めるか」の一点に集約されました。

発電と消費が重なった部分が自家消費になる

太陽光は朝に発電を始めて正午にピークを迎え、日の入りとともにゼロになります。一方、家庭の電力消費は朝の出発前と夕食時に山が来ます。この2つが重なった部分が自家消費、重ならない部分が余剰電力(売電)です。

搭載している家庭の平均は自家消費30%・売電70%です。搭載量を増やすほど自家消費率は下がり、蓄電池や電気自動車を導入すると上がります。

4kWを載せた場合の年間収支

項目 計算 結果
年間発電量 1,279kWh × 4kW 5,116kWh
余剰電力(売電) 5,116 の約68% 3,501kWh
自家消費 5,116 の約32% 1,615kWh
売電収入 3,501kWh × 20円 70,020円
自家消費による削減 1,615kWh × 28.4円 45,866円
年間の利益 70,020 + 45,866 約11.6万円

※売電単価20円・自家消費単価28.4円はいずれも2020年時点。4kWは四人家族で使用量と発電量がほぼ釣り合う容量。

買取単価はかつて48円だった時期があり、2020年時点で20円まで下がりました。この1つの数字だけを見て「もう儲からない」と判断されることが多いのですが、自家消費分を計算に入れなければ収支は過小評価されます。

電気自動車は自家消費率を上げる最も強い手段

太陽光1kWが年間に発電する約1,200kWhを電気自動車に充てると、どうなるか。日産リーフの実測電費は1kWhで約8kmなので、ほぼ年1万km分になります。

年1万km走行に必要な費用 金額
ガソリン代(リッター15kmの車) 約10万円
太陽光の余剰電力で走った場合の電気代 約2万円
差額 約8万円の節約

余剰電力3,501kWhをすべて自家消費に回せれば、その価値は3,501 × 28.4円 = 99,428円になります。この金額は買取価格がどう変わっても影響を受けません。なお2020年時点で蓄電池のみで元が取れるのは電気自動車を兼ねる場合に限られる、というのが松尾の見方でした。


何年で元が取れるのか?

回収年数とは、設置費用を年間の利益で割った年数のことです。1kWあたり25万円で設置できれば約8.6年、一般的な相場である30万円なら10.3年程度になります。固定価格買取制度に基づくため、この範囲までは制度上ほぼ確実に回収できます

単価によって回収年数が2年変わる

1kWあたりの単価 4kWの設置費用 回収年数
25万円(松尾設計室の提供水準) 100万円 約8.6年
30万円(一般的な相場) 120万円 約10.3年
35万円 140万円 10年で回収しきれない

※すべて2020年時点の単価。工務店や受託会社では30〜35万円、ところによっては40万円の例もある。

松尾設計室が25万円で提供しているのは、太陽光はできるだけ載せてほしいという方針から利益を抑えているためです。

10年目以降は「自家消費分」が効いてくる

35万円/kWで購入した場合、10年目時点で約24万円が未回収として残ります。ここで効いてくるのが自家消費分です。

自家消費による削減額年45,866円は、買取価格がどう変わっても発生します。24万円 ÷ 45,866円 = 約5.2年。つまり10年+5.2年=約15.2年で、事故や災害がなければ確実に元が取れます

11年目以降の買取価格は誰にも分かりません。ただし固定価格買取制度を終えた人の買取額は、2019年11月時点で上限10.5円でした。この単価で余剰電力も売れると仮定すると、3,501kWh × 10.5円 = 36,760円が加わり、年間約8.3万円になります。

まとめると、11年目以降の年間利益は「最低で約4.6万円、余剰も売れれば約8.3万円、電気自動車と組み合わせれば約14.5万円」という範囲に収まります。松尾はこれを「年4万5,000円から10万円くらいの間」と表現しています。


パネルの劣化で発電量は落ちないのか?

パネルの出力低下とは、経年で発電量がわずかに減っていく現象のことです。単結晶シリコンで年0.8%程度とされ、一方で電気代は年3%上昇すると予測されています。この2つはほぼ相殺されます。

出力低下を最悪目に見ても、電気代の上昇でほぼ帳消しになる

出力低下率は国の研究機関のデータで年0.8%程度ですが、ここでは最悪目に年1%として計算します。電気代の上昇は経済産業省の予測で年3%です。

項目 今年 翌年
発電量 100% 99%(年1%低下)
売電分(70%) 70.0% 69.3%
自家消費分(30%) 30.0% 30.6%(99% × 103%)
合計 100.0% 99.9%

※出力低下を実測値の0.8%より悪い年1%として計算しているため、実際には帳消し以上になる。

出力低下を悪い側に見積もってもほぼ100%に戻ります。しかも松尾が2012年から2019年の実質値を計算したところ、電気代は年5.9%上昇していました。経産省の予測の倍近い水準です。つまり実際には、発電量の低下より電気代の上昇によるメリットのほうが大きくなります。

撤去費用は「必ずかかる」わけではない

30年経ったときに必ず外さなければならないかというと、そうではありません。屋根材が劣化する原因のほとんどは紫外線です。パネルの真下は紫外線劣化がほとんど起きません。ゴミが溜まることはあっても、外さなければならない理由は多くありません。外す場合でも15万円から25万円程度が目安です。


火災や災害のリスクはどれくらいあるのか?

太陽光の火災リスクとは、住宅用の累計設置件数に対する発生率で見るべきものです。累計約300万件のうち、躯体まで燃え移った例は120数件。そのすべてが屋根一体型で、下地合板との間に不燃材が入っていませんでした。

数字で見る火災リスク

項目 数値
住宅用太陽光の累計設置件数 約300万件
躯体まで引火した火災 120数件
そのうち屋根一体型だった割合 100%
不燃材が入っていない一体型の住宅数 約11万件
該当タイプでの火災発生率 約0.1%

※不燃材を挟んだ場合の火災は1件も確認されていない。

つまり屋根一体型で不燃材を挟んでいない場合に限って約0.1%という数字です。一体型でも不燃加工がされていれば、この問題は避けられます。

保証期間の直後がもっとも大きなリスク

10年以内であれば、メーカーの出力保証と災害補償が付いた製品を選ぶことでリスクを抑えられます。残る最大のリスクは、保証期間が切れた直後に故障することです。

それでも、パネル1枚の損傷であれば数十万円以内で修理できる範囲に収まります。撤去する場合も20万円前後です。この事態が起きる確率は1%を切ると松尾は見積もっています。確率の見立てに納得できなければ、10%や20%に置き換えて再計算すればよい。それが計算根拠を示すことの意味です。

期待値で考えるとどう見えるか

宝くじは1枚300円ですが、当選確率を掛けて足し上げた期待値は約150円です。だから確率統計の考え方を持つ人は宝くじを買いません。太陽光では、これと逆の見立てが広まっているのが松尾の指摘です。高い確率で得られる利益より、低い確率のリスクが大きく語られている、という構造です。

まとめ:太陽光は「自家消費率」で判断する

太陽光の収支は、次の5点を押さえれば自分で計算できます。

  1. 1kWあたり年間約1,200kWhで見積もる —— 都道府県差は2〜3割の範囲
  2. 売電20円と自家消費28.4円の差を理解する —— 逆転した以上、自家消費率が鍵になる
  3. 自家消費分は買取価格に左右されない —— 年約4.6万円は制度が変わっても残る
  4. 出力低下は電気代の上昇と相殺される —— 年0.8%低下 対 年3%上昇
  5. リスクは確率で見る —— 火災は該当タイプで約0.1%、保証切れ直後の故障は1%未満

なお本記事の金額はすべて2020年時点の単価です。重要なのは金額そのものではなく、自家消費の価値が売電単価を上回った以降は自家消費率を高めることが鍵になるという構造です。自分の電力会社の契約単価に置き換えて計算し直してください。電気代が高い地域ほど、自家消費の価値は上がります。

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よくある質問

Q 基礎断熱と床断熱の違いは何ですか?
A
床断熱とは、1階の床の直下に断熱材を入れる工法のことです。床下空間は断熱ラインの外側になり外気が通ります。基礎断熱は基礎の立ち上がりに断熱材を貼るため、床下空間が室内側に入ります。基礎断熱はさらに基礎内断熱と基礎外断熱に分かれます。
Q 基礎断熱はシロアリに弱いのですか?
A
工法によって差が大きく、一律には言えません。基礎内断熱は、防蟻薬剤メーカーの担当者も「定期的に点検しているのであれば問題ない」と述べています。一方で基礎外断熱は専門家が例外なく否定し、10年保証付きの断熱材も実験室では食われていました。
Q 床断熱と基礎断熱では、どちらが結露しにくいのですか?
A
1年目は床断熱、2年目以降は基礎断熱です。基礎断熱は初年度にコンクリートから1トン程度の水分が出るため床下結露リスクが高くなりますが、2年目以降は床下が室内環境になるため生涯にわたって逆転します。この結論は複数の査読論文で示されています。
Q 床断熱でも気密性能は出せますか?
A
構造上かなり難しくなります。床面に柱・給排水管・床下点検口という3つの貫通部が必ずあるためです。土台の上の合板にテープを貼るなどの追加工事が必要ですが、実施している会社はほとんどありません。基礎断熱なら基礎の周囲4周の処理で完了します。
Q 基礎断熱の家では加湿器は不要ですか?
A
不要なのは初年度だけです。初年度はコンクリートから1年で1トン程度の水分が出ますが、2年目以降は水分供給がなくなるため加湿が必要になります。3種換気の場合の目安は1日10リットルです。「基礎断熱なら加湿不要」は初年度のみに当てはまります。
Q 床下エアコンは床断熱でも設置できますか?
A
できません。床断熱では床下空間が断熱ラインの外側にあり外気が通るため、床下を暖めても熱が屋外へ逃げます。床下エアコンには基礎断熱が前提になります。床が暖まることで、廊下や洗面脱衣室までダクト工事なしで温度差を小さくできる点が採用の理由です。