第一種換気は必要か?第三種換気との費用対効果を自分で計算する方法
この記事のポイント
- 標準的な120㎡住宅の熱損失は、伝導73%・換気27%。断熱が良くなるほど換気の比率は上がる。
- 一種換気(熱交換80%)で、家全体の熱損失は三種換気の約78%まで下がる。
- 明石での試算では、一種換気の冷暖房節約は年約1.8万円。ただし換気の電気代が年5,796円増える。
- 正味メリットは年約1.2万円。工事費差額40万円の回収はカタログ値どおりでも24〜33年かかる。
- 北海道・東北・日本海側では効果が出やすく、温暖地で在室時だけ冷暖房する暮らしでは効果が出ない。
そもそも家の熱はどこから逃げるのか?
家の熱損失とは、壁・窓・床・屋根を貫通して逃げる「伝導熱」と、換気で入れ替わる空気が運ぶ「換気熱」の合計のことです。国の省エネ計算は、延床120㎡(縦10m×横6m・天井高2.5m・2層)の住宅を基準にしています。
この住宅の表面積は280㎡、容積は300立米です。建築基準法は1時間に容積の半分(0.5回)の換気を求めるため、換気量は150立米/時になります。
UA値0.5・内外温度差10度で計算します。伝導で逃げる熱は「0.5×280×10=1,400ワット」です。これはこたつ2台分、または人間14人分の発熱量に相当します。
換気で逃げる熱は、空気の定数0.35を使い「0.35×150×10=525ワット」です。合計1,925ワットのうち、伝導が73%、換気が27%を占めます。断熱が良くなるほど、この換気の割合は大きくなります。
換気が効くかどうかの前提になる気密性能は、C値と気密性能はどこまで必要かで扱っています。
一種換気にすると熱損失はどれだけ減るのか?
一種換気とは、給気と排気の間で熱を回収する熱交換換気のことです。熱交換率80%なら、換気で逃げる熱は「525×(100−80)÷100=105ワット」まで減ります。
家全体の熱損失は、伝導1,400ワットと足して1,505ワットです。三種換気の1,925ワットと比べると、約78%まで下がる計算になります。
| 換気方式 | 換気による熱損失 | 家全体の熱損失(伝導1,400W+換気) |
|---|---|---|
| 三種換気 | 525W | 1,925W |
| 一種換気(熱交換率80%) | 105W | 1,505W(三種換気の約78%) |
ここからは、発信者の事務所がある兵庫県明石市の実データで試算します。気象庁のサイトから誰でもダウンロードできる平均気温を使います。
冬(11月〜3月)の平均気温は7.9度、夏(6・8・9月)の平均は25.9度でした。室温は冬20度・夏24度に設定して計算します。室温を高く(夏は低く)設定するほど、断熱も換気も効果は大きくなります。
一種換気で実際にいくら節約できるのか?
一種換気で得する熱量は、冬で平均558ワット/時です。これを冬150日・24時間で換算し、暖房の実効効率3、電気28円/kWhで計算すると、年約1万7,071円の節約になります。
これはあくまで簡易計算です。きちんとしたシミュレーションソフトでは1万4,610円となり、誤差の範囲に収まります。
夏は熱交換で侵入熱が約4分の1に減りますが、得する熱量は63ワット/時とわずかです。夏90日で計算すると節約は762円、シミュレーションでは439円でした。
冬と夏を合わせた冷暖房の節約は、簡易計算で年約1万7,833円です。シミュレーションでも約1万5,000円と、地域が変わっても大きくは外れません。
換気の電気代を引くと正味メリットはいくらか?
正味メリットとは、冷暖房の節約額から一種換気の消費電力増を差し引いた金額のことです。ここを見落とすと判断を誤ります。
一種換気(150立米クラス)の消費電力は39ワット。一方、三種換気は50立米の機器を3台使っても消費電力は計3ワット程度です。差は36ワットになります。
この36ワットを24時間・240日で計算すると207kWh、電気代にして年5,796円です。つまり換気そのものの電気代は、三種換気のほうが安いのです。
冷暖房節約の1万7,833円から、換気電気代増の5,796円を引くと、一種換気の正味メリットは年約1万2,000円です。
| 項目 | 簡易計算 | シミュレーション |
|---|---|---|
| 冬(150日)の暖房節約 | 約17,071円 | 14,610円 |
| 夏(90日)の冷房節約 | 762円 | 439円 |
| 冷暖房の節約 合計 | 約17,833円 | 約15,000円 |
| 換気の電気代増(36W×24時間×240日=207kWh) | −5,796円 | — |
| 正味メリット | 約12,000円 | — |
工事費の差額は何年で回収できるのか?
工事費の回収年数とは、初期費用の差額を毎年の正味メリットで割った数字のことです。施主が一番気にすべきはここです。
ダクト式の一種換気は、三種換気より工事費が約40万円高くなります。年約1万2,000円のメリットで割ると、回収には約33年かかります。ダクトレス式は差額が約30万円で、回収は約24年です。
ただし、換気機器も車の燃費と同じで、カタログ値どおりには出ません。実測ではカタログの約70%が目安です。これを加味すると、回収年数はダクト式で67年、ダクトレス式で50年に伸びます。
| 方式 | 三種換気との工事費の差額 | 回収年数(カタログ値) | 回収年数(実測=カタログの約70%) |
|---|---|---|---|
| ダクト式 | 約40万円 | 約33年 | 約67年 |
| ダクトレス式 | 約30万円 | 約24年 | 約50年 |
さらに一種換気は、フィルター交換などのメンテナンス費もかかります。三種換気は自然吸気口のスポンジフィルターと、10年に一度のファン交換だけで、維持費は格段に安く済みます。
一種換気が向いている家・向いていない家とは?
新鮮な空気を確実に送り続ける性能では、一種換気が三種換気より明確に優れています。判断は費用対効果だけでなく、地域と暮らし方で変わります。
向いているのは、北海道・東北・日本海側です。日射取得がほとんど望めないエリアでは、計算上も一種換気の良さがはっきり出ます。
逆に最も効果が出ないのは、温暖地で「いる時間・いる部屋だけ冷暖房する」暮らしです。この場合、一種換気のメリットは出ません。自分の地域の平均気温と室温設定を入れて計算すれば、付けるべきかを自分で判断できます。
換気と息苦しさの関係は、よくある質問の高気密住宅は息苦しくなりませんか?で説明しています。
まとめ
一種換気の損得は、次の手順で施主自身が判断できます。
- 自分の地域の冬・夏の平均気温を気象庁サイトで調べる
- 冷暖房の節約額を計算する(明石で年約1.8万円)
- 換気の電気代増(年約5,796円)を差し引く
- 正味メリットで工事費差額を割り、回収年数を出す
温暖地で在室時だけ冷暖房するなら、無理に一種換気を選ぶ必要はありません。まずは断熱・気密を高めたうえで、自分の暮らし方に合うかを数字で確かめてください。
よくある質問
- 一種換気と三種換気の違いとは?
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一種換気とは、給気と排気の両方を機械で行い、その間で熱を回収する熱交換換気のことです。三種換気は排気のみ機械で行い、給気は自然吸気口から取り込みます。熱回収がある分、一種換気は換気熱損失を抑えられます。
- 一種換気にすると暖房費はどれだけ安くなりますか?
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明石での試算では、冷暖房の節約は年約1万7,833円です。ただし一種換気は消費電力が大きく、換気の電気代が年5,796円増えます。差し引いた正味メリットは年約1万2,000円が目安です。
- 一種換気の工事費はどれくらい高くなりますか?
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三種換気と比べ、ダクト式で約40万円、ダクトレス式で約30万円高くなります。年約1万2,000円のメリットで割ると、回収年数はカタログ値で24〜33年です。
- 一種換気が特に効果を発揮する地域はどこですか?
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北海道・東北・日本海側など、冬の日射取得が望めない寒冷地です。内外温度差が大きいほど熱交換の効果が増すため、これらの地域では計算上も投資効果が出やすくなります。
- 一種換気でも気を付けるべき点はありますか?
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ダクト内の汚れが懸念点です。新鮮な空気を確実に送る性能は一種換気が優れますが、ダクトの清掃性や、5年・10年ごとのメンテナンス費も含めて判断する必要があります。