エアコンの容量は何畳用が正解?無料ツールで自分の家を判定する
この記事のポイント
- エアコンの容量は、断熱性・窓の方位・地域・運転方法の4条件がなければ決められない。
- 判定できる無料ツールがある。提供元は大手電力10社のシンクタンク電力中央研究所。
- 18畳のLDKでもG2レベルの断熱なら、総合点1位は2.8kW(畳数表示で10畳用)
- 電気代だけで見れば4kWが最安。松尾が繰り返し述べている結論と一致する
- ツールはリビングの吹き抜けを考慮しない。吹き抜けがあるなら大きめを選ぶ
「18畳のLDKだから18畳用」。エアコンをこう選んでいませんか。この記事では、電力中央研究所が公開している無料の選定ツールを使い、自分の家に必要な容量を判定する手順を解説します。読み終えれば、量販店の推奨と結果が違う理由まで理解できます。
なぜ畳数だけではエアコンの容量が決まらないのか?
エアコンの容量選定とは、部屋の広さではなく熱の出入りの量から必要な能力を決めることです。松尾のもとには「私の家はどのくらいの容量を選べばいいか」という質問が山のように届きますが、そのほとんどが条件不足で答えられません。
答えるには4つの条件が必要
| 必要な条件 | なぜ必要か |
|---|---|
| 断熱性 | 逃げる熱の量が変わる。同じ広さでも必要な能力が変わる |
| 窓が西や東にどれくらいあるか | 日射の入り方で冷房負荷が大きく変わる |
| 地域 | 外気温の条件が変わる |
| 運転方法 | 24時間つけるのか、いる時だけつけるのかで結果が逆転する |
この4つが揃わなければ、能力選定はできません。「何畳ですか」だけで容量が決まるという前提そのものが成り立っていないのです。
計算が苦手でも判定はできる
本来は熱損失計算をすれば答えが出ます。ただし計算が苦手な方も多い。そこで松尾が案内しているのが、クリックしていくだけで適切な容量を判定できる無料のウェブサイトです。以下ではその使い方を追っていきます。
容量を判定できる無料ツールはあるのか?
エアコン選定ツールとは、電力中央研究所が公開している無料のシミュレーションのことです。同研究所は北海道電力から沖縄電力までの大手電力10社のシンクタンクで、博士課程を修了した研究者が集まる機関です。Googleで「ASST」と検索すると見つかります。
提供元は電力会社10社の研究機関
このツールは、日本の大手電力会社の精鋭が集まるシンクタンクで、エアコンの研究を専門にしている研究者が研究を重ねて作ったものです。適当なシミュレーションツールではありません。
松尾がこのツールを知ったのは、著書『ホントは安いエコハウス』を読んだ同研究所の研究者から「一度会って意見交換したい」と連絡があったことがきっかけでした。普段は入れない研究所に招かれ、直接意見交換をしています。ツールを作った当事者に会って話を聞いているため、内容の確かさを松尾自身が確認できている点が、他のシミュレーションと異なります。
5年前から存在していたが知られていなかった
このツールは松尾が最初に紹介した時点ですでに存在していましたが、大々的に広告されていないため世間にほとんど知られていませんでした。そして5年後の2026年1月に大幅なバージョンアップが行われました。改良点は次章で見ていきます。
なお松尾は、このツールの画面を動画で紹介する際に提供元から許諾を得てから放映していると明言しています。ツールの画面を自分のサイトやSNSで公開する場合は、同様に許諾を取る必要があります。
ツールはどこまで細かく設定できるのか?
改良後のツールの設定範囲とは、47都道府県すべてと、HEAT20のG2レベルまでの断熱性能を選べるようになった状態のことです。改良前は地域が5つ、断熱は現在の新築住宅の最低基準までしか選べませんでした。
2026年1月の改良で2つの制約が外れた
| 項目 | 改良前 | 改良後 |
|---|---|---|
| 地域の選択 | 5地点のみ(盛岡・仙台・東京・大阪・福岡) | 47都道府県すべて |
| 断熱性能の上限 | 次世代省エネ基準(現在の新築住宅の最低基準) | HEAT20 G2レベル(次世代の2つ上) |
改良前は、松尾自身が「気候区分は少なくとも8つ、G1・G2のボタンも作ってほしい」と提供元に要望を出していました。その2点がどちらも実現した形です。
ここで注意が必要なのが、選択肢にある次世代省エネ基準の水準です。これは平成25年基準・平成28年基準とも呼ばれ、UA値0.87・Q値2.7というレベルです。現在の新築住宅の最低基準にあたる水準であり、高断熱住宅の目標値ではありません。改良後はこれより2段階上のG2まで選べるようになりました。
運転パターンは「いる時だけ」も設定できる
設定温度は、暖房20度・冷房24度がツールの初期値です。ここで松尾が推奨している設定温度は次のとおりです。
| 項目 | 国の省エネ計算の基準 | 松尾の推奨 |
|---|---|---|
| 冷房の設定温度 | 27度 | 26度(27度では暑いという方が多い) |
| 暖房の設定温度 | 20度 | 23度(20度では寒いという方が多い) |
運転時間は、平日と休日を分けて時間帯ごとに設定できます。朝6時から9時と、夕方18時以降だけつけるという「いる時だけ」の使い方も、24時間の連続運転も選べます。一般の方がもっとも多く採用しているのは「いる時だけ」の運転です。
なお松尾は冷房の24時間運転を推奨していますが、これには条件があります。屋根の断熱と日射遮蔽ができている住宅に限るという点です。日射遮蔽ができていない住宅で24時間運転をすると電気代が大きくなります。
判定結果はどう読めばいいのか?
判定結果の読み方とは、総合点だけでなく「省コスト」「立ち上がり」「省CO2」の3指標を切り替えて見ることです。指標ごとに1位の機種が変わるため、総合点だけを見ると自分の使い方に合わない答えを選ぶことになります。
18畳のLDKに2.8kWという結果が出る
兵庫県・1階・南東の角・18畳のLDK・G2レベルの断熱・「いる時だけ」の冷房という条件で判定すると、中上位機種では次の結果になります。
| 見る指標 | 推奨される容量 | 備考 |
|---|---|---|
| 総合点(省コスト重視) | 2.8kW | 畳数表示では10畳用にあたる |
| 立ち上がり | より大きい容量 | 大きい機種のほうが早く効く |
| 省CO2(電気代重視) | 4kW | 松尾が繰り返し「4kWが一番安い」と述べている結論と一致 |
18畳のLDKに10畳用で足りるという結果です。量販店では18畳用を推奨されるのが通例なので、結果が大きく異なります。G2レベルの断熱性能があれば、つけっぱなしにしなくても小さなエアコンで十分に効くということです。
「コスト」の定義を誤解しない
このツールの「コスト」は、機器の購入費と10年間の冷暖房費を合計した金額です。2.8kWを選んだ場合は42万円と表示されます。
一方の「省CO2」は機器の値段を含まず、ランニングコストだけを見る指標です。だから「コストを下げたい」を選んだのに省CO2の側に振れないことがあります。初期費用を含めるか含めないかの違いです。
高機能機と普及機は性格が逆
| 区分 | 初期費用 | 電気代 | CO2排出量の例 |
|---|---|---|---|
| 高機能機(中上位機種) | 高い | 安い | 4kWで3,195kg |
| 普及機(低価格機種) | 安い | 高い | 約4,000kgに増える |
普及機に切り替えるとコストの表示は42万円より下がります。機器の値段が下がるためです。その代わりCO2は3,200kg程度から約4,000kgに増えます。それだけ電気を多く使っているということです。普及機は最大能力もかなり落ちます。
4kW以上のエアコンを買っても意味がないのは本当か?
「4kW以上は同じ」とは、暖房時の最大能力が4kWを超えたあたりで頭打ちになるという事実のことです。松尾はこれを繰り返し述べてきましたが、このツールで電気代だけを見ると4kWが最安と出ることが、その裏付けになります。
立ち上がり時間の実数が証拠になる
同じ5.6kWでも、普及機と高機能機では立ち上がり時間に約1割の差が出ます。容量が同じでも機種のグレードで速さが変わるため、容量の数字だけで判断すると実際の使用感とずれます。
同じ性能グループの中では最大能力がほぼ同じになるため、4kWから6.3kWまでは立ち上がり時間の差が誤差の範囲に収まります。4kWと7kWのように容量が1.8倍違う場合でも、立ち上がり時間にはほとんど差が出ません。暖房において4kW以上の容量を買っても意味がないというのは、この実数から導かれる結論です。
ただし逆方向の注意もある
一方で、オンオフを繰り返す使い方なら小さい機種は立ち上がりに時間がかかります。指標を「立ち上がり」に切り替えると、量販店やカタログが勧めるとおりの畳数通りの機種が推奨されるのは、この使い方を想定した場合です。
連続運転をする高断熱高気密住宅と、オンオフを繰り返す住宅では、推奨機種が変わります。どちらが正しいという話ではなく、自分の使い方に合わせて指標を選ぶ必要があります。
量販店で損しない買い方はあるのか?
量販店での買い方の要点とは、部屋の畳数を伝えず、品番を指定して購入することです。畳数を伝えた瞬間に、それより小さな機種は紹介されなくなります。ツールで判定した容量を品番に変換してから店に行くのが、もっとも確実な手順になります。
畳数を言わず品番で買う
事前にツールで判定し、購入したい品番を調べてから「この品番をください」と指定する。これがもっとも確実な方法です。配送業者や設置業者が「この部屋には小さすぎる」と言って帰ることはありません。何畳で使うのか聞かれても、答えずに品番で通せば問題ありません。
ツールの限界を理解しておく
このツールは有用ですが、限界もあります。松尾がもっとも注意すべきとして挙げているのは、リビングの吹き抜けが考慮されていない点です。
- 吹き抜けがある場合は、判定結果より大きめの機種を選ぶほうが無難
- 日射取得の条件は、自分の家とまったく同じには設計されていない
- したがって結果は概算として扱う
それでも、これだけ簡単に、これだけ適正な結果を出してくれるツールは他にありません。自分の条件でいくつかのパターンを試し、指標を切り替えて比べてみることが、量販店の推奨に流されない一番の準備になります。
まとめ:容量は「4条件」と「3指標」で決まる
エアコンの容量選定は、次の5点を押さえれば自分で判定できます。
- 4条件を揃える —— 断熱性・窓の方位・地域・運転方法。これがなければ答えは出ない
- 電力中央研究所のツールで判定する —— 47都道府県・G2レベルまで対応済み
- 3指標を切り替えて見る —— 省コスト・立ち上がり・省CO2で1位の機種が変わる
- 4kW以上は暖房の最大能力が頭打ち —— 電気代だけで見れば4kWが最安
- 吹き抜けがあるなら大きめを選ぶ —— ツールは吹き抜けを考慮していない
判定結果は概算です。しかし量販店で「18畳だから18畳用」と言われたときに、その根拠を自分で確かめられる状態になります。まずは自分の地域と断熱等級を入れて、指標を切り替えながら結果を比べてみてください。
よくある質問
- エアコンの容量は畳数だけで決められないのですか?
-
決められません。断熱性、窓が西や東にどれくらいあるか、地域、運転方法の4条件が揃わないと必要な能力は計算できません。同じ18畳でも、断熱性能と運転方法が違えば推奨される容量は変わります。「何畳ですか」だけで決まるという前提が成り立っていません。
- 容量を判定できる無料ツールはありますか?
-
あります。大手電力10社のシンクタンクである電力中央研究所が公開しているエアコン選定ツールで、Googleで「ASST」と検索すると見つかります。2026年1月に大幅な改良が行われ、47都道府県すべてとHEAT20のG2レベルまで選べるようになりました。
- 18畳のLDKに10畳用で足りるのですか?
-
条件次第で足ります。兵庫県・1階南東・18畳・G2レベルの断熱・いる時だけの冷房という条件では、総合点1位は2.8kW(畳数表示で10畳用)でした。断熱性能がG2レベルあれば、つけっぱなしにしなくても小さな容量で十分に効くという結果です。
- 4kW以上のエアコンを買う意味はないのですか?
-
暖房においては意味が薄くなります。同じ性能グループでは最大能力が頭打ちになるため、4kWから6.3kWまでは立ち上がり時間の差が誤差の範囲に収まります。ツールで電気代だけを見ると4kWが最安と出るのも、この事実の裏付けになります。
- 吹き抜けがある家でも同じ判定でよいのですか?
-
そのままでは不十分です。このツールはリビングの吹き抜けを考慮していないため、吹き抜けがある場合は判定結果より大きめの機種を選ぶほうが無難です。日射取得も自分の家と同じ条件では設計されていないため、結果は概算として扱う必要があります。
- 量販店で損しない買い方はありますか?
-
部屋の畳数を伝えず、品番を指定して購入することです。畳数を伝えると、それより小さな機種は紹介されなくなります。事前にツールで判定して品番を調べ、「この品番をください」と指定してください。設置業者が容量を理由に断ることはありません。