吹抜けは本当に寒いのか?断熱・気密・床から暖める3条件で判断する
この記事のポイント
- 吹抜けを作ってよいのは断熱・気密・床から暖めるの3条件が揃う家。1つでも欠けたら避ける。
- 3条件のうち1つ以上が欠ける住宅は95%を超える。だから「寒い」という評判が広まった。
- 3条件が揃うと下の方が暖かい。1階20度に対し2階19度で、上下差は1度。
- シーリングファンは冬は不要。気流で寒く感じる。夏の静かな扇風機としては有効。
- 2階建てで略式計算のみだと、吹抜けが水平面剛性を抜き、構造が露骨に弱くなる。
「吹抜けは寒いからやめた方がいい」と聞いたことはないでしょうか。一方で「うちは大丈夫です」と言う住宅会社もあります。この記事では、吹抜けが寒くなる家とならない家の分かれ目を3つの条件で整理します。読み終えれば、自分の計画で作ってよいかを判断できます。
吹抜けは本当に寒いのか?
吹抜けが寒くなるかどうかとは、断熱・気密・床から暖める方式の3条件が揃っているかで決まります。この3つのうち1つでも欠ける住宅は95%を超えます。だから「吹抜けは寒い」という評判が広まりました。逆に3条件が揃えば寒くなりません。
3条件のうち1つでも欠けたら作らない
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 断熱 | 一般的なレベル以上の高断熱であること |
| 気密 | 隙間から冷気が入らないこと |
| 床から暖める | 床暖房または床下エアコンが入っていること |
※3つ揃わない場合は、光が入りにくい敷地条件でも作らない方が無難。
松尾は、この動画のタイトルを「普通の家に吹抜けは作るな」にしようかと考えたと述べています。刺激が強すぎるのでやめたものの、実態としてはそれくらいの割合だという判断です。
そして例外を作りません。吹抜けがないと光が入らないような敷地条件であっても、3条件が揃わないのであれば作らない方が無難という立場をとっています。
評判が広まった理由は「作られ方」にある
問題は吹抜けそのものではなく、判断の順序にあります。多くの住宅会社や設計者が、断熱・気密・床から暖める方式を検討する前に、「空間が気持ちいいから」「広く感じるから」「明るいから」という理由で吹抜けを決めています。
その結果、不満を抱えた住まい手が全国に広がりました。「吹抜けなんか作ったら寒い」という話が口伝で広まったのは、この積み重ねが原因だと松尾は見ています。つまり広まった評判は、吹抜けという形の評価ではなく、条件を確認しないまま作った結果の評価です。
なぜ吹抜けの下は寒くなるのか?
吹抜けの下が寒くなる理由とは、暖気が上から順に暖めるため、上の空間が広いほど下まで届くのに時間がかかることです。高気密住宅でも同じです。さらにエアコン暖房では、上がった暖気の代わりに下りてくる空気が階段を通るため、その付近で冷気を感じます。
上から暖まる順序は変えられない
エアコンから出た暖気の動きを時間経過で見ると、最初に上の方が暖まり、時間が経ってから下まで暖まってきます。この順序は気密性能に関係なく起こります。
吹抜けがあると上の空間がずっと広いため、下まで届くのに相応の時間がかかります。高気密住宅であっても、下が暖まるまで待つことになります。
例外は「超」がつく高断熱住宅です。この水準なら壁掛けエアコンでも床が暖かくなります。ただし一般的なレベルの高断熱住宅では、床から暖める方式が必要になります。
リビング階段の冷気は「空気の循環」で起きている
「リビング階段から冷気が下りてくる」という相談は、次の仕組みで起こります。
吹抜けは南側に配置されることが多く、その空間でエアコン暖房をすると暖気が上へ上がります。暖気が上がるということは、代わりに下りてくる空気がなければ成立しません。その下りてくる空気が、反対側にある階段を通って降りてきます。結果として階段の付近で寒さを感じます。
対策は2つに分かれます。第一は床から暖める方式にすることです。それができない場合は、空気が立体的に循環しないよう、上部で空気が切れる壁などを設けることが必要になります。
なお床下エアコンで暖房している住宅では、この冷気は感じません。壁掛けエアコンで暖房した場合に起こる現象です。
シーリングファンは必要なのか?
シーリングファンの必要性とは、3条件が揃った住宅では不要になるということです。床から暖めていれば下の方が暖かくなり、1階20度に対して2階は19度にとどまります。上下差が1度しかないため、空気を下ろす必要がありません。
3条件が揃うと上下が逆転する
「暖かい空気は上に上がるから下ろさなければいけない」という理解は広く共有されています。しかし3条件が揃った住宅では、むしろ下の方が暖かくなります。
床下エアコンで暖房している住宅の実測値が次のとおりです。
| 空気の温度 | 吹抜けなし | 吹抜けあり |
|---|---|---|
| 1階 | 20度 | 20度 |
| 2階 | 18度 | 19度 |
※床下エアコン暖房時の測定値。吹抜けがある方が上下差が小さくなる。
注目すべきは、吹抜けがある方が2階が1度高いという点です。そして1階20度に対して2階19度なので、上下差は1度しかありません。空気を撹拌する理由がなくなります。
冬は逆効果になり、夏は有効
シーリングファンを冬に回すと、気流を感じて寒く感じてしまいます。
一方で夏は有効です。広範囲に効く静かな扇風機として機能します。不要なのは冬の暖房補助としての役割です。
ダウンライトとの併用は失敗しやすい
設計に慣れていない段階でよくある失敗があります。シーリングファンの真上にダウンライトのような照明を配置することです。
照明の下でファンの羽根が回転するため、光が絶えずちらつきます。引っ越して夜に点灯してから気づくことになります。松尾はこれを、工務店でもやりがちな失敗として挙げています。
設計士の説明が食い違うのはなぜか?
設計士の説明が食い違う理由とは、担当者の正直さと自社の性能という2つの軸で答えが分かれることです。「作らない方がいい」は性能が出ていない会社の正直な回答です。問題は「作っても大丈夫」の中に、性能が伴っていないのに大丈夫と言う型が混ざることです。
同じ質問に3つの答えがある
| 説明 | 背景 | 施主にとって |
|---|---|---|
| 「吹抜けは作らない方がいい」 | 暖かい家をつくっていない+正直な担当者 | 判断材料として信頼できる |
| 「作っても問題ない」(型A) | 暖かい家をつくっていて、かつ正直 | 最も理想的 |
| 「作っても問題ない」(型B) | 性能が伴っていないのに大丈夫と言う | 後で苦しむ |
※型Bに悪意はない。知識がない場合と、担当者自身が非常に暑がりで寒さを感じない場合がある。
「作らない方がいい」と言う担当者は、性能が出せていない会社としては正直です。自社でできないことを勧めていない分、判断材料になります。
危ないのは型Bです。悪意はありません。知識がないために言っている場合と、担当者自身が非常に暑がりで「自分は寒く感じないから」という実感で言っている場合があります。それでも住み始めてから困るのは施主です。
吹抜けは間取りを広く感じさせるのか?
吹抜けと広さの関係とは、温熱環境が伴わなければ広い空間を使えないという事実です。松尾が昔勤めた事務所のボスは、夏の光熱費が20万円かかる大きな家に住みながら、冬はこたつのある6畳の和室で過ごしていました。広さは性能とセットです。
広い家に住みながら、6畳で過ごすことになる
この事例が示しているのは、面積と体感の関係です。お城のような大きな家で、夏の光熱費は20万円。それでも冬はリビングが寒すぎるため、結局こたつのある6畳の和室で過ごしていたといいます。
大きな家を建てても、温熱環境が伴わなければ広く使うことができません。
だから松尾の結論は逆向きになります。断熱性の伴わない豪邸よりも、断熱・気密・暖房が整った小さな住宅をオープンな間取りで広く使う方が、よほど広く感じられます。
性能が低い家では、細かく区切る方が無難
ここから設計の指針が出ます。断熱性・気密性・暖房計画が悪い建物ほど、平面的に細かく区切った間取りの方が無難です。
「寒いからドアを閉めなさい」と家族同士で言い合う家は、区切りが必要な家です。3条件が整った住宅では、全部を開けっぱなしにしても空間全体がほぼ一様な温度になります。
一体感と静けさは同時に成立しない
もう1つ、設計時に説明されにくい論点があります。家族の一体感・広がり感と、音の響きの少なさは完全に相反します。
一体感を求める家族もいれば、下の階のテレビの音が聞こえない方がよいという家族もいます。どちらが正しいという話ではなく、選択です。松尾は打ち合わせで「吹抜けは好きか嫌いか、要るか要らないか」を必ず確認するようにしています。吹抜けの有無は冷暖房計画と施主の好みで決まるものであり、高断熱高気密住宅なら吹抜けがあった方がよい、というわけではありません。
なお、吹抜けがないと光が入りにくい敷地条件では、積極的に吹抜けを設けます。それでも成立しない場合は2階リビングという選択になります。
吹抜けで見落とされやすい点は何か?
吹抜けで見落とされやすい点とは、上部の窓の清掃、日射遮蔽、構造の3つです。とくに2階建てで略式の計算しかしていない場合、吹抜けは水平面剛性を抜いてしまうため構造が弱くなります。松尾はいずれも注意が必要な箇所として挙げています。
見落とされる3点
| 論点 | 起きること | 確認の仕方 |
|---|---|---|
| 上部の窓 | 開閉と清掃ができない。プロを呼ばないと掃除できない | 「どう掃除するのか」を図面段階で聞く |
| 日射遮蔽 | 庇では効かず、夏に暑くなる | 各窓に庇・バルコニー・外付けの対策があるか |
| 構造 | 水平面剛性が抜けて弱くなる | 許容応力度計算で耐震等級3を取っているか |
※吹抜け上部の窓は、設計経験を重ねた設計者でも見落とすことがある。
松尾は設計指導の場で「これはどうやって窓を掃除するのか」「どうやって開けるのか」と問いかけています。その瞬間に答えられない設計者が、経験を重ねた層にも珍しくありません。実際に建っている家を見ても、お金を払ってプロを呼ばなければ清掃できない吹抜けが少なくないといいます。「プロだから考えているだろう」という前提は置かない方が安全です。
日射遮蔽は吹抜けでおろそかになりやすい
吹抜けの上部に並ぶ窓は、庇では日射遮蔽が効ききりません。
松尾が手掛けた60坪の住宅では、上部に並ぶ8枚のガラスに対して二重サッシ+中間層ブラインドを採用しています。内窓と外窓の間にブラインドを入れる方法で、外付けブラインドほどではないものの、外付けと内付けの中間くらいの日射遮蔽性能が得られます。
1階の掃き出し窓については、アウターシェードか庇のどちらかが必要です。壁面に何もない状態では、こうした特殊な方法に頼ることになります。そこまで手当てする例はほとんどないため、日射遮蔽が抜け落ちやすいのが実情です。
構造は計算方法で結論が変わる
耐震について、判断の分かれ目は計算方法です。耐震等級3を取るなら許容応力度計算が理想で、これが本式の構造計算です。3階建てでは義務付けられています。
本式の構造計算で耐震等級3を取っているなら、吹抜けがいくらあっても問題ありません。問題は2階建てです。略式の計算しかしていないことが多く、その場合、吹抜けがある部分は水平面剛性をごぼっと抜いてしまいます。結果として構造が露骨に弱くなります。
逆に言えば、高断熱高気密とトータルの冷暖房計画を最初から組めば、設計の自由度はむしろ上がります。松尾が手掛けた前述の住宅は、20畳のリビング全体が吹抜けで、6畳の和室が小さく見えるほどの空間を、床下エアコンと小屋裏エアコンの組み合わせで冷暖房し、耐震等級3も確保しています。
まとめ:吹抜けは好みで決める前に3条件を確認する
判断の順序は次の3点です。
- 3条件が揃うかを先に確認する —— 断熱・気密・床から暖める方式。1つでも欠けたら見送る
- 3つ目の条件を必ず確認する —— 床暖房か床下エアコンが入るかどうか
- 窓の清掃・日射遮蔽・構造を図面段階で確認する —— 特に許容応力度計算かどうか
吹抜けが好きか嫌いかは、その次に決める話です。3条件が揃えば、20畳のリビング全体を吹抜けにしても成立します。まず打ち合わせで、床から暖める方式が入るかを聞いてみてください。
よくある質問
- 吹抜けを作ると本当に寒くなるのですか?
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断熱・気密・床から暖める方式の3条件が揃っていれば寒くなりません。ただしこの3つのうち1つ以上が欠ける住宅は95%を超えるため、結果として寒い家が多くなります。光が入りにくい敷地条件でも、3条件が揃わないなら作らない方が無難です。
- リビング階段から冷気が下りてくるのはなぜですか?
-
エアコン暖房で暖気が上がると、代わりに下りてくる空気が必要になり、それが階段を通るためです。床下エアコンで暖房している住宅では起こりません。壁掛けエアコンで対応する場合は、上部で空気が切れる壁を設けるなどの工夫が必要です。
- シーリングファンは付けた方がいいですか?
-
3条件が揃った住宅では冬は不要です。床から暖めていれば1階20度に対して2階19度と下の方が暖かく、上下差は1度しかありません。冬に回すと気流で寒く感じます。ただし夏は広範囲に効く静かな扇風機として有効です。
- 「吹抜けでも大丈夫」と言われたら信じてよいですか?
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3条件が揃っているかを確認してください。断熱と気密の水準、そして床暖房または床下エアコンが入るかどうかです。性能が伴わないまま大丈夫と言う担当者もいます。悪意はなく、知識がない場合や、本人が暑がりで寒さを感じない場合があります。
- 吹抜けの上の窓はどう掃除するのですか?
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図面の段階で設計者に確認してください。開閉と清掃を考えずに設計されていることが多く、プロを呼ばなければ掃除できない家が実際にあります。経験を重ねた設計者でも見落とすことがあるため、質問しておく方が安全です。
- 吹抜けがあると耐震性は落ちますか?
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計算方法で変わります。許容応力度計算で耐震等級3を取っていれば、吹抜けがいくらあっても問題ありません。2階建てでは略式の計算しかしていないことが多く、その場合は吹抜けが水平面剛性を抜いてしまい、構造が露骨に弱くなります。