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日射・間取り

日射取得とは?冬至・夏至の太陽の動きで住宅の暖かさが変わる理由

日射取得とは?冬至・夏至の太陽の動きで住宅の暖かさが変わる理由
同じ断熱性能・同じ窓の大きさでも、建物を敷地のどちら側に寄せるかだけで住宅の暖かさは変わります。この記事では、松尾設計室が1,000人を超える実務者に出してきた配置の問題と、冬至から夏至までの太陽の動きをもとに、日射取得を最大化する考え方を解説します。

この記事のポイント

  • 性能が同じでも配置が違えば暖かさは変わる。実務者1,000人超への出題で約6割が誤答した。
  • 判断の材料が等時間日影図。ただし住宅の設計者はこの図面をほぼ書いた経験がない。
  • 冬至は南東から昇り南西へ沈む。夏至は北東から昇り北西へ沈むため北面にも西日が当たる。
  • 太陽の角度と気温は約2ヶ月ずれる。夏至は6月23日頃だが、暑さの底はその約2ヶ月後になる。
  • 内側に付ける日射遮蔽は4割カットが限界。よしずやアウターシェードのように外側で切る。

目次

  1. なぜ同じ性能の家で暖かさが変わるのか?
  2. 等時間日影図とは何か?
  3. 冬至と夏至で太陽の動きはどう変わるのか?
  4. なぜ北面にも遮熱Low-Eが必要なのか?
  5. 太陽の角度と暑さ寒さはなぜズレるのか?
  6. 日射遮蔽はなぜ外側でなければ効かないのか?

なぜ同じ性能の家で暖かさが変わるのか?

配置による暖かさの差とは、断熱性能や窓の大きさが同じでも、建物を敷地のどちら側に寄せるかで冬に取り込める日射量が変わることです。UA値・C値・南の窓の量をすべて同じにしても、配置だけで暖かい家と寒い家に分かれます。

北側道路の敷地でよく起きること

ニュータウンや新興住宅地に行くと、北側に道路がある敷地は普通に見かけます。一般的には好まれない敷地の形です。

ここで多くの住宅会社は、何も考えずに建物を敷地の片側へ寄せ、駐車場を素直に2台分取ります。その結果、南側に庭も取れず、光もほとんど入らない配置になってしまいます。土地の使い方としてはうまくありません。

車がなければ、敷地に対して建物を寄せて南側に庭を取るのが最も良い配置です。しかし松尾がこれまで手がけてきたなかで、車の配置を考えなくてよいプランは一度もありませんでした。最も多いのは2台で、3台や4台を置きたいという要望もあります。

1,000人超の実務者に出してきた問題

そこで松尾は、同じ敷地で「建物を敷地の西側に寄せる案」と「東側に寄せる案」の2つを並べ、どちらが暖かいかを実務者に問い続けてきました。1台はよく使うが1台は週末しか使わないため縦列駐車でよい、という条件です。

項目 西側に寄せる配置 東側に寄せる配置
断熱・気密性能 同じ 同じ
南の窓の量 同じ 同じ
答えを知らない実務者の回答 約6割がこちらを選ぶ —
実際に暖かいのは — こちら

答えを知らない場合、約6割の実務者が「西側に寄せた方が暖かい」と誤答します。正解は東側に寄せる配置です。


太陽に素直な設計という考え方は、よくある質問の「太陽に素直な設計(パッシブデザイン)」とはどういう意味ですか?で説明しています。

等時間日影図とは何か?

等時間日影図とは、敷地のどの部分が1日のうち何時間日陰になるかを、色の濃さで塗り分けた図面のことです。色が濃いほど日陰になる時間が長く、薄いほど日が当たる時間が長いことを表し、配置の良し悪しを目で確かめられます。

2〜3分見れば9割の実務者が正解にたどり着く

松尾が実務者に配置の問題を出すとき、この図をじっくり見てもらうと答えが分かるようになっています。

見せ方 結果
図を見せずに直感で答える 約6割が誤答(西側に寄せた案を選ぶ)
等時間日影図を2〜3分見てもらう 約9割が自力で正解にたどり着く
2〜3分見ても判断できない 約1割

図を見れば9割が自力でたどり着くのに、見なければ6割が誤答する。知識ではなく、図面を見る習慣があるかどうかの差です。

なぜ住宅の設計者はこの図を書かないのか

等時間日影図は、本来はビルの設計者が書くものです。しかも用途が違い、自分の建物が近隣の建物にどう日影を落とすかを検討するための図面です。住宅ではほぼ使う必要がないため、書いたことがない設計者がほとんどになります。書いた経験がなければ、日陰がどう落ちるかは専門家でも分かりません。

誤答する人が見ている場所

間違える理由もはっきりしています。多くの実務者は、東側の建物がせり出している部分に目を奪われます。しかし実際には南側がどれだけ空いているかの影響力のほうがはるかに大きいのです。松尾であれば東側に寄せたうえでリビングを日当たりの良い位置に置き、さらに吹抜けを設けます。窓も、端を壁にせず明るい側へ寄せて配置します。


冬至と夏至で太陽の動きはどう変わるのか?

冬至と夏至の違いとは、太陽が昇る方位と沈む方位、そして日照時間が正反対になることです。冬至は南東から昇って南西へ沈み、夏至は北東から昇って北西へ沈みます。春分と秋分はその中間で、真東から昇り真西へ沈みます。

4つの日は3ヶ月ずつずれている

項目 冬至(12月23日頃) 春分・秋分(3月23日・9月23日頃) 夏至(6月23日頃)
日の出の方位 南東 真東 北東
日の入りの方位 南西 真西 北西
日が差し始める 朝7時過ぎ — 5時前
日が落ちる 5時前 — 7時過ぎ
日照時間 1年で最短 12時間 1年で最長
影の長さ 1年で最長 影の位置が一直線になる 1年で最短

冬至・春分・夏至・秋分はそれぞれ3ヶ月ずつずれているため、1つ覚えれば残りも整理できます。春分と秋分は太陽の角度も日照時間もまったく同じですが、3月23日頃はまだ十分に寒く、9月23日頃は残暑が厳しい。角度が同じでも気候はまったく違います。

南の窓は「日が当たるなら」大きくする

松尾は国が省エネ計算の基準にしている120.08平米のモデルプランを使い、太陽の動きを立体で検証しています。隣家との離隔距離が5メートルほどのケースでは、南側に大きな窓を取った理想的なプランでも、配置が良くないために窓へ日が当たらない時間が長くなりました。

日が当たらない南の窓を作るくらいなら、東西北面と同じように小さくしたほうがよいというのが松尾の判断です。南の窓を大きくすべきなのは、あくまでその窓に日当たりが取れる場合に限られます。この前提が抜け落ちている設計は少なくありません。


なぜ北面にも遮熱Low-Eが必要なのか?

北面に遮熱Low-Eが要る理由とは、夏至の太陽が北東から昇って北西へ沈むため、夕方に北面へも西日が直接当たるからです。松尾が東西北面すべてを遮熱仕様にするよう伝えると、必ず理由を問われる部分です。

午後3時から7時まで北面に西日が当たる

夏至の日の入りは7時過ぎです。太陽は午後3時頃にはすでに西寄りへ回り込み、そこから日没までのあいだ、北面にも西日が当たり続けます。北は西日が当たらないという前提そのものが、夏至には成り立ちません。

これは断熱に詳しいとされる人でも間違えている部分です。方位と季節の組み合わせを立体で確認していないと、平面の感覚のまま判断してしまいます。

夏の太陽は真上から照るので影ができない

夏に街を歩いていて、日陰を探しても見つからないという経験は多くの人にあります。これが夏の太陽の照り方です。冬至と比べると影は極端に短くなり、建物の周囲に逃げ場になる日陰がほとんどできません。だからこそ夏は、窓から入る日射をどう止めるかが冷房負荷を左右します。


太陽の角度と暑さ寒さはなぜズレるのか?

太陽の角度と気温のズレとは、日射量がピークになる日と、気温がピークになる日が一致しない現象のことです。年単位では約2ヶ月、1日単位では2時間から4時間のズレが生じます。建物や空気が暖まるまでに時間差があるためです。

夏至は梅雨のど真ん中にある

基準 太陽の角度・日照のピーク 実際の気温のピーク ズレ
夏(1年) 夏至(6月23日頃) 夏至の約2ヶ月後 約2ヶ月
冬(1年) 冬至(12月23日頃) 1月末から2月上旬 約1〜2ヶ月
1日 南中の12時 午後2時から4時 2〜4時間

夏至が最も暑いと勘違いしている人は実務者にもいます。しかし6月23日頃は6月10日から7月20日頃までの約40日間の梅雨のど真ん中です。太陽は非常に高い位置にあり長時間照っているのに、雲に覆われているため実感しにくいのです。

実際に最も暑くなるのは夏至から約2ヶ月後で、甲子園の決勝がある日の午後2時頃が冷房需要のピークだと昔から言われてきました。冬も同じで、太陽の角度だけで決まるなら冬至が最も寒いはずですが、実際に底が来るのは1月末から2月上旬です。

1日の中でも同じことが起きます。太陽の角度だけを見れば12時が最も高いのですが、実際に暖かいのは午後2時から4時のあいだです。


日射遮蔽はなぜ外側でなければ効かないのか?

日射遮蔽を外側で行う理由とは、内側の装置では熱を室内に取り込んだ後にしか止められないからです。遮熱と書かれた製品でも、内側に付ける限り4割カットが限界になります。よしずやアウターシェードのように外で切れば、その制約から外れます。

内側と外側で止められる熱の量が違う

設置位置 代表例 日射熱のカット率 なぜそうなるか
室内側 遮光カーテン、ブラインド 4割が限界 ガラスを通った熱が装置を暖め、その熱が室内に放出される
屋外側 よしず、アウターシェード 圧倒的に効く 装置自身が暖まっても、その熱は屋外へ放出される

日射はガラスを通り越して一度室内に入ります。カーテンがそれを受け止めても、暖まったカーテン自体が室内へ熱を放出するため、そこで頭打ちになります。外で切るというのは日本人が昔から持っていた知恵です。

庇の3月問題と9月問題

庇には昔から3月問題・9月問題と呼ばれる課題があります。春分の頃はまだ寒く、日射が入ってほしい時期なのでよく日が入ります。問題は秋分です。理想的とされる庇が、9月の残暑にはほとんど効いていません。太陽の角度は春分と同じなのに、気候は正反対だからです。9月の残暑に対応したいなら、外側に付けて必要なときだけ下ろせるアウターシェードのほうが対処しやすくなります。

庇の「10対3」は測る位置を間違えやすい

庇の出は窓の高さに対して10対3が目安とされます。ここで測り方を誤る例が多くあります。窓のすぐ上に庇があるなら、その位置から測れば問題ありません。しかし実際には、2階のバルコニーや外壁の出っ張りが庇の役割を担っているパターンが多いのです。この場合に測る起点を間違えると、実質的にはるかに短い庇にしかならず、意味がなくなってしまいます。

1階の掃き出し窓は庇が最も効く場所であり、同時にリビングダイニングという最も長く過ごす場所に面しています。それにもかかわらず、庇もアウターシェードも何もない住宅は少なくありません。太陽はそこを見逃してくれません。


まとめ:配置は建てた後に変えられない

日射設計で押さえるべき順序は次の4点です。

  1. 配置を先に決める —— 断熱性能をいくら上げても、日が当たらない配置は取り返せない
  2. 南がどれだけ空いているかを見る —— 隣家のせり出しより南の空きのほうが影響が大きい
  3. 夏は北面も含めて日射を切る —— 夏至は北東から昇り北西へ沈み、北面にも西日が当たる
  4. 遮蔽は屋外側で行う —— 室内側の装置は4割カットが限界

間取りの打ち合わせに入る前に、その敷地で日当たりが最も良い場所はどこかを設計者に聞いてみてください。図面を見て即答できるかどうかが、日射を読めているかの分かれ目になります。

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よくある質問

Q 日射取得とは何ですか?
A
冬に窓から太陽の熱を取り込み、暖房の一部として使うことです。取り込める量は窓の大きさだけでなく建物の配置で決まります。断熱性能と窓の量が同じ2案でも、敷地のどちら側に寄せるかで暖かさが変わるほど影響が大きい要素です。
Q 等時間日影図は住宅の設計でも使うのですか?
A
本来はビルの設計者が、自分の建物が近隣にどう日影を落とすかを検討するための図面です。住宅ではほぼ使わないため、書いた経験のない設計者がほとんどです。ただし配置の判断には有効で、2〜3分見れば約9割の実務者が正解にたどり着きます。
Q 南の窓は大きいほどよいのですか?
A
その窓に日が当たる場合に限ります。配置が良くなければ、南に大きな窓を取っても日が当たらない時間が長くなります。日が当たらない南の窓を作るくらいなら、東西北面と同じように小さくしたほうがよいというのが松尾の判断です。
Q 北側の窓にも遮熱Low-Eガラスは必要ですか?
A
必要です。夏至の太陽は北東から昇って北西へ沈むため、午後3時頃から日没の7時過ぎまで北面にも西日が当たります。北は西日が当たらないという前提は夏至には成り立たず、断熱に詳しいとされる人でも間違えやすい部分です。
Q 一番暑いのは夏至の日ではないのですか?
A
違います。夏至は6月23日頃で、6月10日から7月20日頃までの梅雨のど真ん中にあたります。太陽は高く長時間照っていますが雲に覆われて実感しにくく、実際に最も暑くなるのは夏至から約2ヶ月後です。冬も同様に、底は1月末から2月上旬に来ます。
Q 日射遮蔽はカーテンでは足りないのですか?
A
足りません。遮熱と書かれていても、室内側に付ける装置は4割カットが限界です。ガラスを通った熱が装置を暖め、その熱が室内へ放出されるためです。よしずやアウターシェードのように屋外側で切れば、暖まった熱は外へ逃げるため効果が大きく変わります。