調湿建材(珪藻土等)の夏の調湿効果について
最近知り合いの社長さんの自宅がエアコンを使わない状態で
ものすごく低い湿度を維持しているのを知りました。
その原因を考えるに、調湿建材くらいしか思い浮かびませんでした。
そこで改めて、調湿建材についていろいろと調べかえしてみました。
まずネットに出てくるのは珪藻土各社における
「うちの珪藻土が1番です!」というもの
どこも数的根拠を示してはいるのですが、その数字というのが
あまり役に立つ指標ではない上、各社同条件で試験されたものでは
ないので全く役に立ちませんでした。
私がこれまで聞いたことがあった話としては
・下地が石膏ボードで厚さが2mm前後であるなら漆喰よりも珪藻土の方が
吸放湿性が高い。
・土壁の中塗に、漆喰で仕上げると中塗のときよりも吸放湿性は落ちる
・2mm程度の珪藻土よりも6cmを超える土壁の方が吸放湿性に優れる
といったものでした。
なお、私自身が偶然隣どおしで設計を行ったクロスと珪藻土の住宅同士では
珪藻土を施工した住宅の方が約10%湿度が低かったのを覚えています。
いろいろ調べていく中で公的な試験方法及び認定制度もあるんですが認定を
受けているのは1商品だけと大半の商品の胡散臭さを助長する結果しか得られませんでした。
そんな中で事務所で見つけたのが数年前の建築技術1月号
「調湿がわからない」という特集号でした。
メインは南さんと岩前先生でしたが、ここでもやはり岩前先生の論文が
非常に参考になりました。数年前に読んだ時の折り目と、アンダーラインが
残っていましたが、改めて勉強になりました。
結論からすると調湿建材を施工すると夏の最高湿度を約10%低減する効果が
ある。しかし、潜熱によって温度は上昇する。というものでした。
いつも思いますが、岩前先生は実務者が最も知りたいと思うところを研究してくれています。
また、よく勘違いされていることに珪藻土を使えば夏場ずっと吸い続けてくれるのか?
というのがあります。調湿建材の性能実験では相対湿度90%の状態に24時間おいているうちに
吸湿させ50%の状態に変えて今度は放湿させるというようにします。
当たり前のことですが、ずっと吸い続けてもらうことなどできるはずがないわけです。
大多数の方が通風を簡単に持ち上げて話をします。しかし、通風をするということは
エアコンで12g/kg以下に抑えている環境からすると、はるかに大量の水分(ひどいときは
20g/kg以上)を入れ込むことになります。窓を閉めて0.5回の換気回数だけでも大量の
水分が入ってくるわけですが、涼しさの目安となる通風となると換気回数は10回を超えます。
(場合によっては100回とかもありえます)
そうなると、ある時間帯はエアコンもしくは除湿専用機等で水分を抜いてあげる時間を作らなければ
ならないはずです。
これに近いことを行なっているのが、今話題の次世代冷房であるデシカント空調です。
シリカゲルのような吸湿材に吸湿させてから乾かすというサイクルを何度も繰り返す方式です。
夢の技術のように言われるデシカント空調ですが、デシカント空調もこの乾かすという段階は避けて
通れないわけです。
数的根拠のない、感覚的な文章だけの広告は霊感商法のやり方と大差ありませんが、
一見科学的に見えながら、実は全く役にたたない数的根拠が網羅された広告というのは
それ以上にたちが悪いものかもしれません。(真贋が見抜けない人が増えるという意味で)